無数
世界樹の根元に立つと、幹から伸びる無数の枝が、まるで天へと伸びる巨大な腕のように空を覆っている。その圧倒的なスケールに、息を呑む。世界樹は、ただそこに存在するだけで、深い静寂と荘厳なエネルギーを放っている。 葉は、月の光を浴びて銀色に輝き、時折、そよ風が吹き抜ける度に、かすかな鈴の音のような音が響く。
しばらく佇んでいると、樹皮から、かすかな光が滲み出ていることに気づく。近づいてよく見ると、それは、まるで星屑のような、微細な光の粒だ。指で触れてみると、温かく、そして、不思議なエネルギーが感じられる。この光は、世界樹の生命力そのものなのだろう。
このエネルギーを、楽器製作に役立てられるかもしれない。そう思った瞬間、私の頭に、ある旋律が浮かんだ。それは、世界樹と共鳴する、美しく力強い旋律だ。 まるで、世界樹自身が私に教えてくれているかのようだ。
その旋律を元に、星影の鉄と、風の精霊の貝殻、そして世界樹から滲み出る光を素材として、楽器の製作に取り掛かる。星影の鉄は、海の守護者が教えてくれたように、世界のバランスを保つために不可欠な力を持っている。風の精霊の貝殻は、風魔との戦いの中で手に入れたもので、その音色は、まるで風の囁きのように繊細で美しい。
作業は、想像以上に難航する。星影の鉄は、非常に硬く、加工が難しい。しかし、世界樹のエネルギーと共鳴しながら作業を進めることで、少しずつ、楽器の形が見えてくる。数日がかりの作業の後、ついに楽器は完成した。それは、弦楽器のような形をしているが、弦は星影の鉄でできており、弓は風の精霊の貝殻で作られている。 楽器全体から、柔らかな光が放たれ、世界樹のエネルギーと共鳴しているのが分かる。
完成した楽器を手に取ると、自然と指が動き出し、先程の旋律を奏で始める。 音色は、想像をはるかに超える美しさで、世界樹全体が共鳴し始める。樹皮から放たれる光が、さらに強くなり、空には、虹色のオーロラのような光が広がっていく。
その時、世界樹の根元から、老人がゆっくりと姿を現した。その姿は、どこか見覚えがある。 近づいてよく見ると、それは、失踪していた図書館長だった。
「ミタム…か。よくここまで来たな」図書館長は、少し弱々しい声で言う。「世界樹…そして、この旋律… 全ては、繋がっていたのだな」
「先生!」私は、驚きと喜びを込めて叫ぶ。「生きていたんですね!」
図書館長は、ゆっくりと頷き、そして、静かに語り始める。「この世界樹、そしてこの旋律は… 創世の言葉の、鍵となるものなのだ…」




