翌朝
翌朝、私は図書館へと急いだ。図書館長はいつものように、古びた机に腰掛け、古文書を読み込んでいた。彼の周りには、何百年も前の埃っぽい香りが漂っている。
「図書館長、おはようございます。重要な報告があります。」
図書館長は、ゆっくりと顔を上げ、私を見た。「ミタムか。どうしたんだね?何か新しい発見があったのかい?」彼の目は、いつも通り穏やかで、しかし、その奥には鋭い洞察力が潜んでいるのが分かる。
私は深呼吸をして、昨日の発見を話し始めた。「古代魔法文明に関する禁書の中に、無限本に関する記述を見つけました。それによると…無限本は、この世の全てを書き記すまで、無限にページが増え続けるというのです。」
図書館長は、私の話を静かに聞いていた。彼の表情は、驚きや興奮といった感情を表すものではなかった。むしろ、深い思案に沈んでいるようだった。
「なるほど…そういうことか。私は、その可能性を薄々と感じていたが、まさか本当にそのような記述があったとはね。」彼は長い沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。「無限本…それは、この世界の全てを記録する、究極のアーカイブ…そして、同時に、極めて危険な存在でもある。」
「危険ですか?」私は尋ねた。
「そうだ。もし、無限本にこの世界の全ての情報が書き込まれた時、何が起こるかは誰にも分からない。世界は変わるだろう。それは、良い変化なのか、悪い変化なのか…誰にも予測できない。」図書館長は、深い皺を刻んだ顔で言った。「ミタム、君は、その重責を担う覚悟はあるかね?」
彼の言葉の重みに、私は言葉を失った。無限本の真の性質を知ったことで、私の研究は、単なる知識の追求から、この世界全体の運命を左右する可能性のある、より大きなものへと発展したのだ。
「…まだ分かりません。しかし、この研究を止めるつもりはありません。無限本の真の姿を解き明かし、その力を正しく理解することが、私の使命だと考えています。」
図書館長は、ゆっくりと頷いた。「そうか…君の決意は理解した。だが、油断はするな。無限本の力は計り知れない。常に慎重に、そして、責任を持って研究を進めるのだ。」
彼の言葉は、私の心に深く刻まれた。無限本の研究は、これから更に困難を極めるだろう。しかし、私は、この重責を担い、この世界の未来に貢献できるよう、研究を続けていく決意を新たにした。




