魔力の奔流
オークの牙の研究はひとまず中断し、再び古代魔法文明に関する禁書を開いた。図書館長から借り受けたこの本は、魔力の奔流を感じさせる、不思議なエネルギーを帯びている。 何度も読み返したはずなのに、まるで初めて見るかのような新鮮さでページをめくる。古代語の記述は難解だが、長年の研究で培ってきた知識と、蓬莱人の血筋が持つ直感的な理解力が、徐々に意味を解き明かしていく。 そして、ある一節に目が留まった。それは、これまで見過ごしていた、小さな脚注のような記述だった。 そこには、不思議な本の記述があった。無限に書き込める、私の所有するあの本と同じ性質を持つ本について記されている。 記述によれば、その本は「無限本」と呼ばれ、この世の全てを書き記すまで、無限にページが増え続けるというのだ。 この世の全て…その言葉の重みに、私は息を呑んだ。これまで、無限本は単にページが減らない不思議な本だとばかり思っていた。しかし、その真の性質は、遥かに壮大で、想像を超えるものだったのだ。 禁書には、無限本の起源や使用方法、そして、その潜在能力について、断片的な情報が記されていた。 無限本は、単なる記録媒体ではない。それは、この世界のあらゆる知識、歴史、そして未来さえも記録し、保存する、究極のアーカイブと言える存在なのかもしれない。 記述には、無限本が完成したとき、この世界にどのような変化が起こるのか、その予言めいた記述もあった。 しかし、その内容は曖昧で、理解するには更なる研究が必要だ。 この発見は、私の研究に新たな方向性を与えてくれるだろう。無限本の真の力を解明し、その潜在能力を最大限に引き出すことが、新たな目標となった。 しかし同時に、無限本が完成した時の世界への影響、そして、その責任の重さも痛感する。 これは、単なる知識の追求を超えた、この世界全体の運命を左右する可能性を秘めた研究なのだ。 無限本を再び手に取り、そのページに、新たな発見を書き留める。そのページは、果てしなく広がり続ける…まるで、この世界の可能性のように。




