木箱
研究室の机の上には、ギルドマスターから預かった木箱。その中には、オークの牙、ゴブリンの爪、そしてウィルムの鱗が丁寧に納められている。 まずは、オークの牙から研究を開始しよう。顕微鏡を準備し、古代魔法文明で解明した魔法の原理に基づいた分析を始めるとする。
オークの牙は、予想以上に複雑な構造をしていた。肉眼では見えない微細な魔法の回路が、牙の内部に張り巡らされているようだ。 拡大鏡を更に細かく調整し、無限本を開き、丁寧にスケッチを始める。普段は古代語で書き留めているが、今回は図解と簡単な説明で済ませることにした。 魔法の回路の複雑さ、そしてその精妙さには驚くばかりだ。まるで、高度な機械仕掛けのような精密さである。
「ふむ…これは…。」
呟きながら、ペンを走らせる。無限本は、いくら書いてもページが減ることはない。この不思議な性質のおかげで、私は気が済むまで研究記録を書き続けることができる。オークの牙の微細構造を丹念に描き込み、その隣には、古代魔法文明の文献から得た知識を元に、推測される魔法の力の流れを図示していく。
研究は夜遅くまで続いた。 次第に、疲労が蓄積していく。しかし、オークの牙に秘められた魔法の謎を解き明かしたいという思いが、私を突き動かす。
ふと、机の上に置かれたウィルムの鱗が目に入る。虹色の輝きは、まるで生きているかのような生命力を感じさせる。オークの牙とはまた異なる、全く別の魔法の力が宿っているに違いない。
「…明日は、ウィルムの鱗を調べよう。」
無限本を閉じ、ペンを置く。 オークの牙の研究は、まだ序章に過ぎない。この世界に存在する魔法の多様性、その奥深さに、私は改めて驚嘆する。 そして、その謎を解き明かす旅は、これからも続いていくのだ、と確信する。 無限本のページには、既に多くの情報が書き込まれているが、まだまだ空白のページは広大で、それは未知の魔法の力に満ちているように思えた。




