異空間
異空間の薄暗い空気を吸い込みながら、私は思考を巡らせる。図書館長と歴史家は、まだ恐怖に震えている。彼らの言葉から、この空間が時間軸の歪みによって生じ、アトランティス文明の影とでも言うべき者たちが、時間軸の修正のために「創世の言葉」と私たちの知識を必要としていることがわかった。 脱出方法を考える前に、まずは彼らに落ち着いてもらわなければならない。
「もう少し詳しく教えてください。アトランティス文明の影…とは、一体どのような存在なのでしょうか?」と、私は穏やかな声で尋ねる。
歴史家は、ゆっくりと頭を上げ、私の顔を見つめる。彼の目は、まだ恐怖で曇っているものの、少しずつ落ち着きを取り戻しつつあるようだ。「彼らは…我々の想像をはるかに超えた存在です…時間…空間…概念すらも超越した…まるで…神のような…」
彼の言葉は、途切れる。恐怖で言葉を選ぶことができないのかもしれない。図書館長が、彼の言葉を補うように口を開く。「彼らは、アトランティス文明の…残滓…といったところでしょうか。アトランティス文明は、高度な科学技術と魔法を併せ持った、偉大な文明でした。しかし、その繁栄は長くは続かず、滅びの道を辿った。その際に、生き残った者たちが、この…影…となったのです。」
「高度な科学技術と魔法…ですか?」私は、興味深く尋ねる。アトランティス文明については、これまで断片的な情報しか得ていなかった。彼らの言葉から、アトランティス文明の技術は、私の想像をはるかに超えるものだったということがわかる。そして、その技術が、時間軸の歪みと何らかの関係を持っているのだろう。
「彼らは、時間軸を歪ませることで、過去の出来事を改変しようとしているのかもしれません。あるいは…未来を変えるために…あるいは…別の時間軸から力を奪おうとしているのかもしれません…」歴史家の言葉は、まるで遠い過去の出来事を語るように、かすかで震えている。
彼らの説明は、私の知識をさらに広げる重要な情報源となる。しかし、この異空間から脱出する方法を考えなければ、これらの情報は無駄になってしまう。 私は、時間転移装置の設計図のことを思い出す。もしかしたら、この装置を使って脱出できるかもしれない。しかし、この装置の起動には、「賢者の血」が必要だったはずだ。 既に手に入れているとはいえ、この異空間で、その装置が機能するとは限らない。 そして、アトランティス文明の影が、この装置を監視している可能性もある。 脱出は、容易ではないだろう。
静寂が再びこの異空間を満たす。図書館長と歴史家の息遣い、そして、私の心臓の鼓動だけが聞こえる。この薄暗い空間の中で、私は次の行動をゆっくりと、慎重に考え始める。




