マスの部屋
ギルドマスターのオフィスは、予想以上に広かった。重厚な木製の机には、様々な魔物の剥製や、奇妙な形をした鉱石が飾られている。ギルドマスター、ベテラン冒険者らしい風格の持ち主は、厚い羊皮紙の書類の山に囲まれながら、何かを書き込んでいる。
「ミタムさん、久しぶりですね。あの、不死の…研究者さんでしたね」
彼は書類の書き込みを終えると、私の方へゆっくりと顔を向け、温厚な笑みを浮かべた。 彼の言葉には、私の名声と、少しの畏敬の念が混じっているように感じた。
「今回はこちらからの依頼です。魔物の生態研究…とのことですが、研究に役立つものをいくつか用意しました」
ギルドマスターは、机の引き出しから、小さな木箱を取り出した。中には、丁寧に梱包された、いくつかの魔物の部位が入っていた。
「これは、先日討伐されたオークの牙、ゴブリンの爪、そして…これは少々珍しいですが、ウィルムの鱗です。いずれも、魔力が高いとされている部位です。研究に役立つことを願っています」
ウィルムの鱗は、想像以上に美しく、虹色の光を放っていた。その鱗に触れると、僅かに温かさを感じた。まるで、生きた生物のエネルギーが宿っているかのようだ。
「ありがとうございます。大変助かります」
私は丁寧に礼を述べ、木箱を預かった。ギルドマスターからの贈り物には、単なる魔物の部位以上の、冒険者ギルド全体の協力と期待が込められていると感じた。
彼の言葉には、研究への期待と、同時に、魔物という危険な存在への懸念も含まれていた。私は、この貴重な資料を元に、新たな研究を進めていく決意を新たにした。 研究室に戻り、まずはオークの牙から調査を開始しよう。 顕微鏡を用意し、古代魔法文明で得られた知識を総動員して、魔力の痕跡を探っていく。 この世界に息づく魔法の根源、その謎を解き明かしていく旅は、まだまだ続く。
(ギル)マスの部屋




