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毒殺容疑で牢に入れられたメイド、唯一の味方は王子様──戦乱の果てに妃として迎えられました  作者: 大井町 鶴
◆第四章 コーザヌとの和平

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お披露目と愛しい婚約者との再会

イゴル達が再びインデルにやってきた。


「よう!リュール!」


イゴルはリュールに会うなり抱きしめてくる。


「相変わらずお前は距離が近いな」

「いいだろ。オレはお前に会えて嬉しいんだ」


再び、イゴルはリュールに抱きつくと、女性から悲鳴のような歓声が上がった。


「だから!あんまりひっつくと、男が好きだと勘違いされると言っているだろ」

「何でそんな心配をする?」

「インデルでは男同士でベタベタなどしない」

「男と女ならいいのか?」

「........もういいから、とにかく離れろよ」


いちいち丁寧に説明するのも馬鹿らしくなって言うのをやめた。ただイゴルはからかっているだけなのだ。


今、2人は王城のバルコニーにいた。目前には多くのインデルの国民が集っている。イゴル達がやって来るのは大々的に知らされていたから、多くの国民が集まっていた。


イゴルのワイルドなイケメンぶりに、女性達はいつの間にかファンクラブなるものをつくっており、キャーキャーと騒いでいる。


後ろに立つリゴルとチアを国民に紹介しようと、リュールが振り返った。リゴルには初めて会ったが、彼は純粋なコーザヌであるから少し不安がよぎった。


リゴルは、額に角のようなでっぱりがあって屈強そうな肉体を持つ、いかにもなコーザヌの姿である。国民達が見たら恐れをなして逃げだす可能性もあるのではと、心配なのだ。しかも、彼は黙っていると凄んでいるような、そんな表情になる。


(大丈夫だろうか.........)


心配ではあるが、国民の前で彼を紹介すると、意外なほど受け入れられていた。事前にインデル内でコーザヌを知る集会を積極的に開いていたのが良かったらしい。


「コーザヌはインデルと争っていたが、それも終わりだ。これからは未来のために共に手を取り合って進んでいきたい」


リゴルが大きな声で国民に語りかける。見た目の厳めしさと異なり平和を願っていることが分かると、国民から歓声が上がった。皆、平和を望んでいるのだ。


リゴルは妻のチアも抱き寄せた。歓声が上がる。


(僕は戦うことばかり考えていたが、これからは平和に向けた国つくりをしていかねばならないな)


今でも戦術を考えたり、兵の調練について考えたりするのは好きだ。だけど、皆が幸せに感じられる国つくりを考えていかねばと、リュールは思うようになっていた。


(そのために、僕を支えてくれる人が必要なんだ)


リュールはエバに側に来るように言うと、エバの肩を抱いた。また歓声が上がる。


.......バルコニーでの国民へのお披露目が終わると、改めて、国王と王妃同士で面会の場が設けられた。


「本当は先に、面会の場を設けるのが先であったが、国民の注目がとても高くてな、お疲れのところ、無理をさせたのではないだろうか」


リュールの父チャートが言うと、リゴルは口を開いた。


「いや、我らは体力もあるし気になさらなくても大丈夫だ。息子が世話になったしな。舞踏会まで開催してくれたと聞いた。コーザヌに帰って来てから、耳にタコができるほど聞かされた」

「そうであったか」

「妃にしたい娘もここで見つけたと聞いて、非常に楽しみにしてやってきたのだ」

「オレもリートに会いたい!」


チャート王がリートとエバを連れて来るように命じると、すぐに2人はやってきた。イゴルはリートを見るなり、席を立って彼女を抱きしめた。


「リート!会いたかった!!」

「私もです」


リゴルとチアはそんな2人の様子を見て、目を細めている。


「リゴル、かつてのあなたを見ているようです」

「ハハハ、そう言われると照れる。コーザヌらしい愛情表現ではないか」


イゴルがリートを両親に紹介し終わると、チアがエバに微笑みかけていることにリゴルが気付いた。


「イゴル、そちらの女性はかつてお前を助けてくれた人ではないか?」

「はい!こちらはリュールの婚約者、エバです」

「こら、イゴル!人様の婚約者です。“様”をきちんとつけなさい」


すかさずチアから指導が入った。


「はーい」


イゴルは素直に返事をする。いつもこんな様子なのであろうなと、リュールは微笑ましく思った。アットホームなのは良いことだ。


「エバと申します」

「そなたには、ずっと礼を言いたいと思っていた。息子を助けてくれてありがとう」


リゴルに礼を言われてエバは恐縮する。


「いえ、想像以上に立派になられていたので、再会した時は驚きました」

「コーザヌは子供の時と大人になった時の見た目のギャップがある。さぞ立派になっていて驚いたであろう。ワシはてっきり、エバ殿を嫁に選ぶと思っていたがな」

「あなた! 空気を読んだ発言をしなさい!」


チアがリゴルを叱る。叱られたリゴルはシュンとした。夫人は強かった。


「父上! エバ殿はリュールの妃になる人です!オレはリート一筋です!!」


イゴルはリートをギュッと抱きしめながら言った。


「分かっている。バカでかい声を出すな。私も失言してしまったのは悪かった」


コーザヌは思ったことをそのまま言うので、誤解が起きるような事態が起きやすい。チャート王も一瞬、ヒヤリとしたがこれがコーザヌの普通であるのだと受け入れた。


「インデルでイゴル殿とリート嬢の結婚式を挙げることについて、我が国は盛大に祝いたいと考えている。リュールの挙式も行うため連日の挙式になるが、順序の希望はあるだろうか?」


まずは自国の王子であるリュール達の挙式を先に行われるべきだとの声があり、結婚式の順序について大臣達とモメていたのだ。リュールとエバ自身は順序にはあまりこだわりがなかった。


「オレはリュールの幸せを見届けてから、リートと挙式したい!」


(イゴルが僕達に気を使ったのか?)


てっきり、イゴルは1日でも早く自分達の挙式をしたい!と言うと思っていた。


「いいのか?」

「いいに決まってる。お前はオレの友だからな」

「そうか。じゃあ、僕らの挙式の後は思いきりお前達を祝おう」

「当たり前だ!」


ハハハ!と豪快に笑うイゴルの側には嬉しそうに微笑むリートがいた。


めでたいことは良いものだと、しみじみ思うリュールであった。

平和はいいな。


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※投稿は毎日朝9時過ぎです。引き続きご高覧頂けるとウレシイです٩(*´꒳`*)۶

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― 新着の感想 ―
返信ありがとうございました!(´▽`) 第四章のエピソード42です。ご確認してみてください…
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