お披露目と愛しい婚約者との再会
イゴル達が再びインデルにやってきた。
「よう!リュール!」
イゴルはリュールに会うなり抱きしめてくる。
「相変わらずお前は距離が近いな」
「いいだろ。オレはお前に会えて嬉しいんだ」
再び、イゴルはリュールに抱きつくと、女性から悲鳴のような歓声が上がった。
「だから!あんまりひっつくと、男が好きだと勘違いされると言っているだろ」
「何でそんな心配をする?」
「インデルでは男同士でベタベタなどしない」
「男と女ならいいのか?」
「........もういいから、とにかく離れろよ」
いちいち丁寧に説明するのも馬鹿らしくなって言うのをやめた。ただイゴルはからかっているだけなのだ。
今、2人は王城のバルコニーにいた。目前には多くのインデルの国民が集っている。イゴル達がやって来るのは大々的に知らされていたから、多くの国民が集まっていた。
イゴルのワイルドなイケメンぶりに、女性達はいつの間にかファンクラブなるものをつくっており、キャーキャーと騒いでいる。
後ろに立つリゴルとチアを国民に紹介しようと、リュールが振り返った。リゴルには初めて会ったが、彼は純粋なコーザヌであるから少し不安がよぎった。
リゴルは、額に角のようなでっぱりがあって屈強そうな肉体を持つ、いかにもなコーザヌの姿である。国民達が見たら恐れをなして逃げだす可能性もあるのではと、心配なのだ。しかも、彼は黙っていると凄んでいるような、そんな表情になる。
(大丈夫だろうか.........)
心配ではあるが、国民の前で彼を紹介すると、意外なほど受け入れられていた。事前にインデル内でコーザヌを知る集会を積極的に開いていたのが良かったらしい。
「コーザヌはインデルと争っていたが、それも終わりだ。これからは未来のために共に手を取り合って進んでいきたい」
リゴルが大きな声で国民に語りかける。見た目の厳めしさと異なり平和を願っていることが分かると、国民から歓声が上がった。皆、平和を望んでいるのだ。
リゴルは妻のチアも抱き寄せた。歓声が上がる。
(僕は戦うことばかり考えていたが、これからは平和に向けた国つくりをしていかねばならないな)
今でも戦術を考えたり、兵の調練について考えたりするのは好きだ。だけど、皆が幸せに感じられる国つくりを考えていかねばと、リュールは思うようになっていた。
(そのために、僕を支えてくれる人が必要なんだ)
リュールはエバに側に来るように言うと、エバの肩を抱いた。また歓声が上がる。
.......バルコニーでの国民へのお披露目が終わると、改めて、国王と王妃同士で面会の場が設けられた。
「本当は先に、面会の場を設けるのが先であったが、国民の注目がとても高くてな、お疲れのところ、無理をさせたのではないだろうか」
リュールの父チャートが言うと、リゴルは口を開いた。
「いや、我らは体力もあるし気になさらなくても大丈夫だ。息子が世話になったしな。舞踏会まで開催してくれたと聞いた。コーザヌに帰って来てから、耳にタコができるほど聞かされた」
「そうであったか」
「妃にしたい娘もここで見つけたと聞いて、非常に楽しみにしてやってきたのだ」
「オレもリートに会いたい!」
チャート王がリートとエバを連れて来るように命じると、すぐに2人はやってきた。イゴルはリートを見るなり、席を立って彼女を抱きしめた。
「リート!会いたかった!!」
「私もです」
リゴルとチアはそんな2人の様子を見て、目を細めている。
「リゴル、かつてのあなたを見ているようです」
「ハハハ、そう言われると照れる。コーザヌらしい愛情表現ではないか」
イゴルがリートを両親に紹介し終わると、チアがエバに微笑みかけていることにリゴルが気付いた。
「イゴル、そちらの女性はかつてお前を助けてくれた人ではないか?」
「はい!こちらはリュールの婚約者、エバです」
「こら、イゴル!人様の婚約者です。“様”をきちんとつけなさい」
すかさずチアから指導が入った。
「はーい」
イゴルは素直に返事をする。いつもこんな様子なのであろうなと、リュールは微笑ましく思った。アットホームなのは良いことだ。
「エバと申します」
「そなたには、ずっと礼を言いたいと思っていた。息子を助けてくれてありがとう」
リゴルに礼を言われてエバは恐縮する。
「いえ、想像以上に立派になられていたので、再会した時は驚きました」
「コーザヌは子供の時と大人になった時の見た目のギャップがある。さぞ立派になっていて驚いたであろう。ワシはてっきり、エバ殿を嫁に選ぶと思っていたがな」
「あなた! 空気を読んだ発言をしなさい!」
チアがリゴルを叱る。叱られたリゴルはシュンとした。夫人は強かった。
「父上! エバ殿はリュールの妃になる人です!オレはリート一筋です!!」
イゴルはリートをギュッと抱きしめながら言った。
「分かっている。バカでかい声を出すな。私も失言してしまったのは悪かった」
コーザヌは思ったことをそのまま言うので、誤解が起きるような事態が起きやすい。チャート王も一瞬、ヒヤリとしたがこれがコーザヌの普通であるのだと受け入れた。
「インデルでイゴル殿とリート嬢の結婚式を挙げることについて、我が国は盛大に祝いたいと考えている。リュールの挙式も行うため連日の挙式になるが、順序の希望はあるだろうか?」
まずは自国の王子であるリュール達の挙式を先に行われるべきだとの声があり、結婚式の順序について大臣達とモメていたのだ。リュールとエバ自身は順序にはあまりこだわりがなかった。
「オレはリュールの幸せを見届けてから、リートと挙式したい!」
(イゴルが僕達に気を使ったのか?)
てっきり、イゴルは1日でも早く自分達の挙式をしたい!と言うと思っていた。
「いいのか?」
「いいに決まってる。お前はオレの友だからな」
「そうか。じゃあ、僕らの挙式の後は思いきりお前達を祝おう」
「当たり前だ!」
ハハハ!と豪快に笑うイゴルの側には嬉しそうに微笑むリートがいた。
めでたいことは良いものだと、しみじみ思うリュールであった。
平和はいいな。
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