リュールの溺愛
エバ達が戻ってくる姿を認めたリュールは、自分を押さえていた兵を振りほどく。エバが奪われるのを見て、追いかけようとして止められていたのだ。
「放せ!」
エバが無事にスタルと共に戻ってくると、すぐにエバを馬上から降ろして抱きしめた。
「エバが奪われて気が気じゃなかった」
「私も驚きましたが、かつて助けたコーザヌの子がお礼を言いたかっただけのようです」
「礼を言うのに攫うとは野蛮だな」
「紛らわしいことをするなと、リゴル様とチア様にかなり本気で殴られていました」
「当然だ」
エバがフォローするように言ったがリュールはまだ怒っていた。
「そうお怒りにならないで下さい。競い合いの会で得た有益なお話も色々とありますので」
「ああ、聞かせてくれ。だけど、まずはエバが無事であることを確かめたい」
そう言うと、再びエバを抱きしめる。
スタルは、リュールの溺愛ぶりに驚いた。話には妹がリュールから寵愛を受けているとは聞いていたが、人前でもはばからず抱きしめるほどとは........と、見ていて気恥ずかしくなった。
「殿下、兄の前ですし、皆、見ていますし恥ずかしいです」
「エバは大役を果たした。誰が見てもエバは妃にふさわしい。もう誰にも何も言わさん!」
リュールはしばらくエバを抱きしめ続けたのだった。
...........落ち着いたリュールとエバ、スタル、ハンガルは会で交わされた会話の内容について話し合っていた。
「コーザヌは変わろうとしているようだな。 だが、まだまだ教育が行き届いていないようだ。長の息子であるイゴルがいい例だ」
リュールは怒りをにじませながら話す。ハンガルも深くうなずいた。
「彼には悪気は全くないようでした。単純に礼を言いたかったのだと思います」
和平を実現させたいエバは必死に言った。
「それが問題だ。衝動的に欲しいと思った物や人を奪われては今までと変わらないからな」
「チア様と学校を共同で設立する話が出たのですが、どうでしょうか?」
「ふむ。あちらは我が国の主に物、我が国はあちらの国の資源を得たいと思っている。学校ができれば通いたい者は多いだろう」
リュールが前向きに国の交流を計ることに賛成してくれたので、エバはホッとした。
リュールは和平を結ぶ内容を手紙にしたためると、コーザヌのリゴルの元へと届けさせた。すると、すぐにリゴルからも同様の内容の手紙が返ってきた。いずれ互いに訪問することを約束して帰途につくことにしたのだった。
馬車にエバと2人きりになったリュールは、ずっとエバの手を握っていた。
「エバ、もう誰にもエバが妃になることに文句を言わせない。ずっとずっと僕の側にいてくれ」
「はい」
リュールはエバに口づけた。
「殿下が私を大切になさるように、コーザヌでもチア様は大変、大切にされています。攫われた女性達も溺愛されているらしいですよ」
「そうは言われても複雑だな。我が国から攫っていったのは事実だからな」
「一途に想い、大切にされているのはうらやましいと思いました」
「ん? その言い方だと、エバは僕が一途じゃないみたいに言っているようだ。まさか、僕が側妃を持つのではないかと考えているのか?」
「そういうわけではありませんが…」
「僕はエバがいればいい。側妃など持たない」
「……嬉しいです」
エバがリュールの手をそっと握る。リュールはエバの手を優しく握り返した。
..........国境からようやく城に戻ると、リュールは父王と母に起きたことを詳しく報告した。リュールの考えに賛同してくれた。
「父上、さっそくですが、エバは婚約者として皆に認められる成果を上げましたし、エバをさっそく妃として迎えたいのですが」
「焦る必要はない。エバにウェディングドレスを作ってやる時間も必要だろう。エバはよくやった」
「私もエバが偉業を成し遂げたこと、とても嬉しく思うわ」
もはやエバが不適当だという者は1人もいなかった。いたとしてもリュールの怒りに触れるだけであったので、誰も言う者などいなかったが。
リュールは、エバが帰ってきて心底ホッとしていた。
(エバがいない人生なんて考えられない)
競い合いは、リュールにとっても大きな刺激となった。今までは、エバに触れるのは殆ど2人きりの時だけにしていたが、エバがいなくなるかもしれないと思った時に、そんなのは関係なくなった。今では人前だろうが、エバに触れるのをためらわない。
だが、エバは人目を気にせず抱きしめてくるリュールに困惑していた。
「殿下、ちょっと恥ずかしいです」
恥かしさからリュールのスキンシップから逃れようとする。リュールはエバのそんな行動が気に入らず、より抱きしめようとする。ちょっとした攻防が起きていた。
「何でだ。もうエバはどこかに行ってしまったらと思うとイヤなんだ」
「私はどこへも行きません。 殿下、出会った時と比べて随分とお気持ちに素直になられましたね」
「そうだな。今までもったいないことをしていた。僕は女性と話すことが苦手だったからエバに好意を抱いていても、すぐに気持ちを伝えられなかった。でも、分かったんだ。本当に好きな相手ならば、甘い言葉だって普通に言えると」
「殿下……」
「愛してる」
甘い言葉とキスでエバは腰が抜けそうになる。リュールはしっかりとエバを抱きしめた。
リュールとエバはお互いへの思いを確かめるように2人の時間をしばし過ごしたのだった。
リュールの溺愛が止まりません。
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