白熱した剣技
「ねえ、エバ、どうしてコーザヌは人や物を奪うか分かる?」
いきなりチアが聞いてきた。
「魅力的だからでしょうか?」
「そうなの。コーザヌは思ったまま得ようとするから“奪う”ということになる」
「はい……」
「コーザヌは人族の考え方よりも直感的で人の物を奪ってはいけないという感覚が欠如しているの。どちらかというと、取られるからいけない、と考えているわね」
チアがコーザヌについて説明しようとしている。エバは静かに耳を傾けていた。
「でもね、攫われた女性達が不幸になっているかと言えば、必ずしもそうではない事実もあるのよ。私の母は攫われた当初は、泣き暮らしていたそうだけど、父がとても献身的に尽くして母は自ら父の妻になったの」
「そうだったのですか」
「コーザヌはね、人族のように言葉を紡ぐのが得意じゃない。言葉にする術がないから攫ってしまうの。コーザヌが攫う時はその人を運命の人だと思っているわ。理解しがたいかもしれないけど...........愛情深くて恩義には必ず報いねばならないというマジメさもあるということを、インデルの人には知ってもらいたいの」
「価値観の違いは大きいと思いますが……お互いに歩み寄らねばなりませんね」
「ええ。私は争いで亡くなる者がいなくなればと思っているのよ」
「その点は私も同感です」
チアは懸命にコーザヌを理解してもらおうと話していた。
「.....では、そろそろ次の剣技披露を始めましょうか」
チアが声を掛けると、木剣が2つ用意された。
「木剣なのですね」
「鋼の剣だと思った?そんなもの使ったら、大変なことになってしまうわ」
エバは、使用する剣は木剣ではないと思っていたから、かなり緊張していたのだ。避ける自信はあったが、万が一ということがある。
(これで、リュール様の元に醜い姿で帰る心配は減る)
「ホッとした?」
顔に安心する気持ちが出ていたらしい。
「はい。私にも大切な人がいますから。傷が残るのは困ると思っていました」
「大丈夫よ。競い合いはあくまで平和的なものなの。コーザヌ同士の競い合いだったとしても傷なんてこさえて帰って来たら、すぐに戦いになるわ」
ふふふとチアが笑う。また、コーザヌの知らない一面を知った気がした。
「私、あまり剣は得意ではないのよね。お手柔らかにね、エバ」
チアとエバは木剣を握るとお互いに構えた。エバはじりりと土を踏みしめる。チアは剣術が苦手だと言っていたが、構えて向き合うとそんなことはないとすぐに分かった。
間合いをとりながら隙を探す。しばし、2人の睨み合いが続いた。
チアが地を蹴ると剣をものすごい勢いで突き出してきた。エバは身を引いて避けながらチアの剣を払う。チアの力は強く、払うのに力がいる。剣を払ってもすぐに体制を整えて攻撃してくるので気が抜けない。エバも必死だ。思う以上にチアの動きが速かった。
エバは思い切ってチアの懐に飛び込んでいった。剣の束でチアを突き飛ばすと、チアは地面に尻もちをつく。だが、すぐに長い脚を使ってエバの足元をすくってエバを転ばす。互いに剣を相手に突きつけながら睨み合うカタチで膠着状態となった。
「……ここまでにしましょうか」
「はい」
チアが木剣を地に突き立てながら起き上がると、エバに手を貸して起き上がらせる。
「エバ、やるわね」
「いえいえ、チア様の動きがとても早くて焦りました」
「私はコーザヌの血が入っているもの。当然よ」
また、しばしのお茶タイムが設けられた。一番、大変だと思っていた剣技が終わり、エバも少し気が抜ける。
「ねえ、エバは普段、何をしているの?リュール王子の婚約者なのでしょう?」
「妃になるための勉強です。私はもともと上級貴族ではありませんから不足する知識がたくさんあるんです」
「ふうん。どんな教育をしているのか気になるわね。コーザヌでも直感ばかりで動かないように教育を進めているけど、まだまだなのよね。コーザヌは魔族の流れを汲むからどうしても力の強い者に従う風潮があって。でも、私のように人族の血が混ざる者が増えてきたおかげで、色々と変わりつつあるのも現状」
剣技が終わって、チアもだいぶリラックスしたようだ。話し方も随分と砕けて親し気になっていた。
「お互いのことを学べる学校のようなものをつくったら良さそうですね」
「ああ、それはいいわね。帰ったら夫に相談してみるわ」
「長はどんな方なのですか?」
「リゴルは生粋のコーザヌよ。とても優しくて私や息子のイゴルにも愛情を注いでくれる人。きっと私が進言すればリゴルは聞いてくれるわ」
「まあ、チア様の力は絶大なのですね」
「ふふ。コーザヌは意外と女性の権限が強いのよ?」
「それは驚きです」
「インデル王国では女性はどう扱われているの?」
「どちらかというと、男性社会なので女性は守られるべき存在だと思われています」
「そうなのね。母がそちらにいた頃と変わらないみたいね。あなたのように弓や剣を扱える人は少ないとは母には聞いたことがあるわ」
「そうですね。私の場合は、実家が軍人の家系でしたから剣や弓を扱う機会はありましたが」
「軍人の家系.......」
エバは、“しまった”と思った。軍人ということならば、コーザヌを殺している可能性もある。
「...........お互いの国は、色々あったわね。私達はそれを変えて行くのよ」
チアはエバの考えを読んだのか、そんな言葉を述べたのだった。
コーザヌの男性は、女性に尽くし大事にするのが当たり前なのです。
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