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調査開始

リュールはエバが入れられている牢を訪れた。


リュールがわざわざ牢まで足を運ぶと聞いてまわりの者は止めようとしたが、調査を自ら指揮するとハッキリとリュールが宣言すると、ようやくまわりは黙った。


“殿下自ら調査なさるとは素晴らしい!”などと急に態度を変えて言う者にリュールは不快になる。


(大して調査もせずに弱者を犯人にしようという魂胆が気に入らん)


リュールはいい加減なことをする者がキライだった。


エバが入れられている牢に近づくと、エバが顔を上げた。顔を上げたエバは、牢のほこりで顔が少し薄汚れている。もっと早く来て救い出したかったとリュールは後悔した。


「ジュリエルの母が毒殺されそうになった事件で、僕が直接、調査を行うことにした。少し、話を聞かせてくれ。給仕をした君が疑われているが、僕は本当のことを知りたい」

「……本当のこと、ですか?」

「君はおそらくやっていないだろうと僕は思っている」

「……!」


エバが驚いたようにリュールを見つめた。目にみるみる涙が浮かぶ。


「なぜ、そう思って頂けるのでしょうか?」

「君とは少し話をしただけだが、兄の活躍を心から願っているように感じた。だから、兄の足を引っ張るようなことをワザワザするとは思えない」


リュールはフロック公爵家に調査に向かう前に、事前にエバの実家であるブーツ子爵家について探らせていた。ブーツ子爵家に金が流れた気配は無い。


もし、エバが実家に金を援助してやると言われて毒殺未遂事件に協力したとすれば、金の流れがわずかでもあるはずだ。だが、見当たらないとなれば彼女を犯人だと断定するには至らない。


「君はここ最近、屋敷の者以外と接触することがあったか?」

「お使いで街に出ることはありましたが、買い物をするだけです」

「使いには1人で出ることが多いのか?」

「いえ、もう1人のメイドと一緒に行くことが多いです」

「そうか。ではさらに君を犯人と断定するのはおかしいな。さあ、ここから出るんだ。 すぐにエバ嬢を出せ」


リュールは近くにいた兵士に命じた。エバは牢から出るとリュールに礼を述べる。


「殿下、私を信じて下さってありがとうございます。何とお礼を申し上げたら.......」

「礼など……調査らしい調査もせずに牢に入れる愚かさに腹が立っていただけだ」


ウルウルした目で言われて、動揺を隠すようについぶっきらぼうに答えた。


事件の調査はスタルに頼まれたという()()ではあるが、エバと接点を持ちたいという下心がリュールには無いとは言えない。いや、むしろある。だから、私情を見せないようにせねばと考えていた。


ちなみに、リュールは自分に婚約者がいる立場であったので、エバをどうこうしようとは考えていない。権力で自分の思いのままに振る舞うのは単なる横暴だと思っている。


「……兄が殿下を敬愛する気持ちが私にも分かりました」

「敬愛?僕はスタルをいずれ自身の麾下に加えたいと考えている。スタルの身内に問題があると困る。だから、協力することにしたにすぎない」


(本当はもっと優しい言葉をかけてやりたいのだけどな……)


エバを気に入っているとまわりに悟られれば面倒なことになる。調査の公平性にも関係してくるからぶっきらぼうになるのは仕方がないと、割り切ることにした。


「私が兄の足を引っ張るわけにはいきません。私のような者がお願いする立場ではないのは重々、承知しておりますが、どうか兄ために私の無実を証明して頂けませんでしょうか?」


エバが深く頭を下げながら言う。自分の心配よりも兄の心配を第一に考えるエバに心打たれた。


(エバは見た目だけでなく、心も美しいのだな)


心の中でそんなことを考えていると、エバはリュールが答えないので心配そうに見上げてきた。ハッとする。急いで口を開いた。


「善処する」

「ありがとうございます」


ニッコリと微笑んで言うエバは美しい。屋敷に戻る道を共に歩くだけなのに胸が弾んだ。


(美しい令嬢は見慣れてはいるが、この令嬢の美しさは別格だ.........)


リュールは常に誰かに惑わされることのないように教育されて育っている。だが、コントロールできない初めての感情に自分自身も混乱していた。


エバと屋敷に戻ると、ジュリエルが険しい表情を浮かべた。


「リュール、なぜ、その子を牢から出すの?お母様を毒殺しようとしたかもしれないのよ?」

「かもしれない、だろ。疑わしいだけであんなところに放り込むのはおかしい」

「リュール、あなたが直接この事件を調査するなんてどういうつもり?お母様のために協力してくれるのは嬉しいけど、その子以外に犯人がいると思っているの?」

「それはこれから明らかになる。だが、今のところ、彼女が毒殺に関わって得るメリットが見当たらない」

「エバの実家はお金に困っているのでしょ?お金が手に入るとなれば、犯行に手を貸すかもしれないじゃないの」


ジュリエルの厳しい物言いに、エバがうつむく。


「すでにブーツ子爵家の調査を始めている。今のところ、疑わしい金の流れは認められない」

「認められない?確かなの?」


ジュリエルが意外だと言う風に言葉を漏らした。どうもジュリエルは金に困っている実家を持つエバが犯人だと強く思い込んでいるらしい。


「給仕をしたのはエバよ?……もう少しよく調査して!見落としていることがあるかもしれないわ」


それだけ言うと、ジュリエルは体調が優れないと言って自室に引き上げてしまった。どうも最近のジュリエルは感情の起伏が激しい。


「ジュリエルはどうも君のせいだと決めつけているようだな」

「……はい」


(エバがこのままここにいるのはよくないな。このまま、彼女を城に連れて帰りたい……イヤ、マズイだろうか?)


リュールは迷ったが、やましいことをするのではない!と、思い切ってエバを城に連れ帰ることにした。


「エバを城に調査のために連れて行く」


短く言うと、まわりの者は驚いたが、リュールはさっさとエバを馬車に乗せると城に連れ帰ったのだった。

調査は私情によるものではない!と心の中で唱えながら行動するリュールです。


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※投稿は毎日朝9時過ぎです。引き続きご高覧頂けるとウレシイです٩(*´꒳`*)۶

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