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毒殺容疑で牢に入れられたメイド、唯一の味方は王子様──戦乱の果てに妃として迎えられました  作者: 大井町 鶴
◆第三章 異民族の脅威

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エバの提案

「殿下……?」


リュールの怒鳴り声にエバが顔を覗かせた。報告を受けていたのは執務室の隣の部屋の応接間だ。応接間の続きにはエバの妃教育に使う部屋があった。リュールがすぐにエバに会えるように、部屋を隣にしたのだ。


「エバ…!隣の部屋にいたのだったな。すまない、邪魔したな」

「いえ。どうなさったのですか?」

「何でもない。もう戻っていなさい」


リュールが言うと、エバは隣の部屋に戻っていった。コーザヌのバカバカしい提案をエバに聞かせるつもりはなかった。


「そもそも、我が国に打ち破られたばかりで何の提案だというのだ。何故、応えてやらねばならん?」

「そうではありますが、コーザヌなりの親睦の意があるのかもしれません。現在のコーザヌ国はそうやって1つにまとまっていったのですから」

「コーザヌはいつも奪う民族だ。見せかけの親睦に過ぎないだろう」

「どうでしょうか。ヤツらはかつて我が国の姫を花嫁に迎えた際に、それはそれは大事にしたそうです。亡くなるまでは侵略は一切ありませんでした」

「書き換えられた歴史なのではないか?」

「我が国の歴史書に記されているのですよ。ウソではないでしょう。それに、この申し入れをスタルは受けいれるべきだと考えているようです」

「何だとっ!?」

「自分の妹だからといって気軽に考えるのは許さんぞ。エバは僕の妻になる人物だ!」

「お怒りにならないで下さい。また、エバ様が心配なさって来られますよ」

「まったく、スタルは何を考えている!」


リュールはイスのひじかけを指で荒々しく叩く。


メントがリュールに一息ついてもらうために茶の用意を命じた。リュールも怒鳴ったのでノドが乾いていた。


しばらくして扉をノックする音がして扉が開くと、茶のカートをなぜかエバが押してきた。


「なぜ、エバが?」

「殿下の様子がただならないご様子でしたので、替わってもらいました。私もご一緒して良いでしょうか?」

「妃教育の方は良いのか?」

「大丈夫です。順調に進んでいるおかげで先生からも許可が出ましたので」

「そうか…」


メントが気を使って席を立とうとすると、エバが止めた。


「メント様もぜひ」

「いやあ、2人のジャマをしたくないですから」

「良いのです。むしろ、メント様にはいてもらわねばなりません」

「どういうことでしょう?」


リュールもエバの言葉に茶の入ったカップを取ろうとした手を止めた。


「リュール様、先ほど話されていたお話、私にも聞こえてしまいました。ぜひ、その申し出をお受け下さいませ」

「何だって!?」


リュールは思わず席を立った。弾みでティーカップに注がれた茶がこぼれる。


「落ち着いて下さいませ。私は武芸の心得があります。殿下が心配することは起きません」

「何故、そんなことが言える?武芸の心得があると言っても、今は何も訓練をしていないだろう?ヤツらは平気で略奪を行う非道な民族だ。軽く考えてはいけない」

「私が競い合いに赴こうと思うのには理由があります。……理由の1つに、私が子爵家にいた頃にコーザヌの子を助けた経験が関係しています」

「何だと?あの狂暴なコーザヌを保護したことがあるのか?」

「コーザヌは決して狂暴な面ばかりではありません。草原で倒れていたコーザヌの子を兄と共に秘密裡に保護したのですが、その子は警戒こそすれど暴れることもなく素直でした。体調が回復すると、帰りたいようでしたので、草原に連れて行きましたがそこには来るのが分かっていたのか大人のコーザヌがいました。彼は子どもの元気な姿を見ると、私達に頭を下げて去って行ったのです。その姿は何ら人間と変わりありませんでした」

「コーザヌが頭を下げるなんて聞いたことがない」

「彼らは私達が思うほど、凶暴ではないと思います」

「たまたまではないのか? 運が良かったに過ぎないだろう」


リュールが言うと、エバは必死に言う。


「コーザヌの長の妻との競い合いなのですよね?彼らにとっては平和的な提案なのではないでしょうか?」

「エバ、どうしてそこまで言う?僕は君に何かあったらと思うと到底、受け入れるつもりにならない」

「私が競い合いに赴く理由のもう1つは、私がリュール様の婚約者として完全に受け入れられていないからです。無理に私をこのまま妃にしようとすれば、王家に反発する人も出て来るでしょう。私はそれを阻止したいのです」

「気持ちは分かる。ありがたく思うが、危険なことはダメだ」

「殿下…!どうか私にやらせてください!」

「ダメだ!」


それまで黙っていたメントは、リュールとエバのやりとりを見て、口をおそるおそる開いた。


「私は、エバ様の言う言葉はアリだと思います……」

「何だと!?」

「だから、怒らないで下さい……」

「怒らずにいられるか!」

「ですが、今後、平和が保たれたら、殿下は異民族の侵略に頭を悩ませる必要がなくなります。もっと国内の強化も図れます。将来、生まれるお子様のために平和な世を切り開いてはいかがでしょうか」

「キレイ事に過ぎない!」

「殿下、ちなみに、競い合いの中身はどんなことをするか教えて頂けませんか?」

「弓、剣技、馬術だ。圧倒的にヤツらの得意範囲だ」

「私も父に兄と共にしごかれましたから少しは自信があります。カンを取り戻したらそこそこできるのではないかと思います。一度、私に練習をする機会を頂けないでしょうか?」

「そこまで言うならば、やってみるがいい」


リュールはエバの気持ちが済めばそれでよいと思い、練習することを許したのだった。

エバはリュールのためにも、自分のためにも、競い合いに行かねばならないと思っています。


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※投稿は毎日朝9時過ぎです。引き続きご高覧頂けるとウレシイです٩(*´꒳`*)۶

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