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毒殺容疑で牢に入れられたメイド、唯一の味方は王子様──戦乱の果てに妃として迎えられました  作者: 大井町 鶴
◆第三章 異民族の脅威

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コーザヌからの申し入れ

戦場となっている近くの町にスタルが兵と共に残り、ハンガルが帰還してきた。


「スタルがやったようだな」

「はい。スタルの案を聞いた時、無謀だと却下しましたが、ヤツは自軍を率いて迷わず進んで行きました」

「一歩間違えれば命は無かったな」

「ヤツは無謀です。私の命令を無視するとは」


成功したからいいものの、失敗すれば軍法で裁かねばならない。まだスタルはそのあたりが若かった。


「殿下の言われた通り、1千の兵を預け戻って参りましたが…」


ハンガルは不服そうだった。ハンガルはインデル王国でも長く活躍してきた大将軍である。若い者が暴走して調子に乗っていると感じているのだろう。


「スタルはすぐに兵の訓練を始めたようだな」

「戦いは勢いだけではありません」

「だが、経験は必要だ」


リュールは、先人の戦いについて調べてきた。いつも歴史を変えたのは思わないことをする人物だ。だから、スタルの突っ走る部分は危険ではあるが、特に咎める気も無かった。


リュールはエバにスタルの活躍を知らせてやろうと思い、エバの元を訪れた。


「殿下」


ニコリと今日も微笑むエバは可愛らしいと、リュールは思う。


「スタルがやったぞ。コーザヌを退けた。まだ、国境近くの町に駐屯しているが落ち着き次第、呼び戻すつもりだ」

「それは良かったです」


この前も思ったが、兄の活躍に意外とエバは冷静だ。


「控えめだな?もっと喜んでいいのだぞ?」

「私達は殿下のために生きるのです。役に立つのは当たり前のことですわ」

「気持ちは嬉しいが、僕は役に立つと言われるよりも、エバには共に生きて喜びも悲しみも分かち合いたい」


リュールの言葉にエバはバラのように微笑んだ。リュールの心臓がギュッと掴まれる。


「君は僕の大切な人だ」


リュールは我慢できなくなり、エバを引き寄せてキスした。キスは数えるほどしかまだしていない。これで3回目だろうか……。


「コホンっ!」


咳払いが聞こえて、側にメントがいたのを思い出した。


「こんなに殿下が愛されているのですから、早く皆もエバ様を祝福したらいいのに…」


このところ、戦いで忘れかけていたが、エバは未だリュールの婚約者としてふさわしくないなどと、言われていた。


「今回の戦いで、スタルは皆に認められる実績を作った。エバを受け入れるだろう」


リュールは言ったが、スタルの活躍をハンガルのようによく思わない者も一定数いる。大抵は、権力を持つ貴族達だった。


発言力のあるフロック公爵家がエバを支えていたが、逆にフロック公爵家の勢いをそごうとする者も多く現れている。


あれから、フロック公爵家ではジュリエルが領地に行き、出産まで静かに過ごすことになっていた。子どもの父になるセロはジュリエルを支えるべく、領地経営などをモハイルから学んでいるらしい。


パトラは実家に戻ってから、ヨージュに勧められた商会で有望株の男性と結婚することになっていた。モハイルは父とは名乗れなくても愛娘のためにさっそく、相手の男性について色々と調べているらしい。


リュールは、パトラは自分の父がバップ商会頭のオビルの子どもではなく、モハイルが本当の父だと知っていたのではないかと思っている。


だが、パトラと話す機会が無くなったことで、真実は分からない。


(どんな立場の者にとってもインデル王国は住みやすいと感じる良い国にしていかねばな.....)


国民を率いて行く未来の王として、リュールは心新たに頑張らねばと思っていた。


ところで、インデル国の血統重視主義はコーザヌが関係するところもあった。彼らは直感的に動く性質があり、インデル国から物と共に女性もさらって行く。さらわれた女性は花嫁にされるのだ。


かつては、コーザヌの長にインデル国から友好の証として姫を嫁がせたことがあるらしいが、彼らの性格と異形の見た目からコーザヌに対する偏見はなかなかなくならなかった。


(ほとんど、王都周辺に人が集まっているものの、国境沿いの被害は減っていない。人々が安心して暮らせる国にするにはまだほど遠い)


リュールの理想を体現するにはやるべきことはまだまだあった。


............コーザヌの撤退から1ヶ月が経とうとしていた頃、コーザヌから思わぬ接触があった。


「何だと!?もう一度言え」


リュールは国境に駐屯している兵からの知らせを受けて、問いただす。


「コーザヌの長であるリゴルから提案があったのです」

「それはさっき聞いたぞ!その先だ!」


リュールは怒っていた。


「リゴルの妻であるチアという者と殿下の婚約者を競わせたい、と」

「だから、それはどういうことなんだ!!」


リゴルの妻のチアはインデル王国からさらって行った女性との間に生まれた娘だというのは分かっている。チアはコーザヌの血を受け継いでいる。普通の人間とは違って肉体も強靭だろう。それを、エバと競わせるとはどういうつもりだろうか。


「コーザヌでは、戦いで勝負がつかぬ時に自分の妻同士で競わせるという古い習わしがあるようです。近頃はリゴルが異民族を1つの民族として束ねていているので、競い合い自体が無かったようですが」

「到底、受け入れられるわけないだろ!」


リュールの怒鳴り声が響いたのだった。

大事なエバを心配するあまり叫んでしまうリュールです。


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※投稿は毎日朝9時過ぎです。引き続きご高覧頂けるとウレシイです٩(*´꒳`*)۶

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