新たな問題
第三章から新たな展開を迎えます⸜( ´ ꒳ ` )⸝
エバに告白とプロポーズをし、エバがOKしてくれたことでリュールは幸せの絶頂にいた。
だが、根回しを全くしていなかったせいで、血統を重んじる大臣や貴族達が異を唱えてきた。貧乏子爵令嬢をフロック公爵家の養女にしてまで、王子の婚約者にねじ込むことを反対したのである。
「はぁ、あいつらは伝統だの、うるさい奴らだな」
リュールは不機嫌になっていた。
「伝統を重んじるのが我が国の特徴でもありますからねぇ」
「お前は気楽だな、メント」
「私は幼馴染が同格の令嬢ですからね。障害などありませんし、殿下の気苦労は分かりませんね」
「お前、随分とナメた口をきくな」
「わぁー、殿下が怒るとコワイな」
メントはいい度胸をしていた。だが、“かしこまるな”とメントに命じたのはほかでもないリュールだ。リュールが普通に話せる相手を望んだのだ。
「殿下、エバ嬢を皆に血統以外で認めさせるためには、それ相応の実力や実績が必要になりますね」
「ああ、そうだな」
メントの言うように、この国では血統を重んじるのと同時に、価値のある実力や実績があれば特例として王族の結婚相手として認められる風潮があった。
「スタルの妹というだけで、良いではないか」
「そういうわけにはいきません。スタル殿はこれから軍で中心的な人物にはなるでしょう。でも、まだ先の話です」
「分かっている」
リュールは、執務の合間にエバのいる部屋へと顔を出した。今、エバは婚約者として急ピッチで王太子妃教育を進められている最中だった。
「どうだ、調子は?」
「殿下!」
こちらを見たエバがニコリとする。すかさず横から教師役であるユウリ伯爵夫人が注意をする。
「エバ様、もう少しお上品に微笑まれなければなりません!」
「ユウリ夫人、僕は機械のような妻はいらないぞ。僕の望む妃教育をしてくれ」
「は、はい」
ユウリ夫人は何か言いたげだったが、黙った。
「エバ、休憩にしてランチを一緒にとろう」
「はい!」
また、エバが元気よく答えたので、ユウリ夫人が眉をしかめた。それを見て、ワザとリュールは言う。
「僕の未来の妻は明るく返事をしてくれていいな。僕も元気になる」
ユウリ夫人は、チクリと文句を言われたのだと分かったらしく、目を伏せた。これで、自分の意に沿うマシな妃教育が行われやすくなるだろう。
……エバを連れてランチの用意をされた部屋に入り会話をしながら食事を楽しんでいると、メントが急ぎ部屋に入って来た。
「殿下!大変です!」
「ランチの時間に飛び込んでくるほどのことか」
「そうです!異民族がインデル王国に侵略してきました!」
「ついに来たか」
インデル王国の北に位置する土地には異民族のコーザヌがいる。彼らはかつて存在していた魔族の血を受け継ぐ民族で、見た目も普通の人間とは異なった。
額の両側に角のようにでっぱりがあるので、見ればすぐに異民族だと分かる。魔族の血を受け継ぐことから肉体が人間よりも強靭だった。かつては妖術も使えたようだが、長い年月の間に血が薄れ、筋力の強さだけが引き継がれている。
この異民族“コーザヌ”にしばしば侵入され物や人を奪われていた。だから、インデル王国は軍を強化し、いつかコーザヌを滅したいと考えていたのである。
「ハンガルに軍を出させろ。スタルの兵も連れて行け」
指示してから、リュールはエバに微笑んだ。
「大丈夫だ。我が国の軍は精強だ。心配いらない」
「心配はしておりません」
「そうか?スタルは大尉に昇進させてから初めての出陣となる。不安ではないか?」
「兄は大丈夫です、きっと」
「僕も期待している」
ここ数年、コーザヌの侵略は止んでいたが、今年は気温も下がり北でも作物が不作らしい。食料を求めて侵略してきたのだろう。
ランチが終わると、リュールは父王とコーザヌとの戦の会議に入った。王城もいつもより守りを固めて、物々しい雰囲気になる。母とエバも共に緊張感に包まれているはずだ。
王都から戦場までは馬で10日の距離があった。父王とリュールとは新しい情報がもたらされるたびに、作戦を立て直す。
侵攻してきているコーザヌには食料の蓄えが少ないことを見込んで、ムダに突っ込んでいくなとは伝えている。魔族の血を受け継ぐ彼らも食料が無ければ戦えない。相手は短期決戦をしかけてくるはずだった。
騎馬兵が到着するまでに最小限に被害を抑えたいと考えていたところ、思わぬ知らせが届いた。
「コーザヌの兵が引き上げていきます!」
「何が起きた!?」
軍が出発してからまだ8日しか経っていない。大軍がつく前に撤退するなど考えられなかった。しかも、コーザヌは猪突猛進型だ。欲しい物を奪うまでは撤退などなかなかしない。それが今回は少しの被害をもたらしたけで引き上げているという。
「スタル大尉が騎馬で先行し、コーザヌを蹴散らしたようです。コーザヌは思いのほか、こちらの軍の到着が早かったので、油断していたようです」
「スタルが?10日の距離を8日で駆けつけたのか?」
スタルは繰り返し馬も人も走らせる訓練をしていた。それが今回の活躍につながったということか。
「スタル大尉は500の兵をほとんど失うことなくコーザヌを退けました。相手も驚いたようです」
リュールは自分の目に狂いはなかったとこぶしに力をグッと入れたのだった。
スタルはリュールからエバを妃にすると言われ、腰を抜かすほど驚きました。妹のためにもより活躍しなければ!と、気合いが入っています。
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