モハイルの告白2
リュールはマレルがパトラのことを知って結婚したのかが気になった。
「マレル様は、パトラのことを知っていたのですか?」
「彼女には、ヨージュが妊娠していることが分かった時点で話をしました。悲しんだ顔をしましたが、それでも良いと私と結婚することにためらいはしませんでした」
「..........そうでしたか。領地にいることが多かったのはそんな負い目があったからですか?」
「はい。理由の1つになります。......ですが、領地に密着した生活をしていたおかげで幸いにも領地の状態を改善できました」
「そのようですね」
フロック公爵家の領地は潤っていて、領民も豊かに暮らしていると聞いている。
「ちなみに、パトラをメイドにしたのはなぜです?」
「それは、マレルの案です。礼儀作法や貴族社会とのつながりを考えて側に置いてあげた方がいいと言って。私は側に置くつもりはありませんでした。万が一、ジュリエルとパトラが、姉妹だと互いに知ることになれば、必ず、複雑な問題が起きると思いましたから」
「そうですね。身分の問題は大きい。ましてや、貴族と平民ではかなり生き方が変わる」
モハイルが神妙な顔でうなずく。
「身分の差というのはどうしようもない問題です。ですが、私はたとえパトラが平民であっても不自由させたくはありませんでした。マレルにはパトラに私が父だと名乗らないという約束で、バップ商会を重用してもらうよう頭を下げました。彼女はすぐに私の願いを叶えてくれて、バップ商会は誰もが知る大商会となりました。結果的にパトラにゆとりのある生活をさせられたと思います」
「話を聞く限り、マレル様と不仲ではないのですね?」
「仲は悪くはありません。彼女には感謝することがたくさんあります。私は伯爵家の次男ですからマレルと結婚しなければ、どうなっていたか........」
「あなたは学園でマレル様に見染められるほどです。どうにでもなったでしょう」
「いえいえ、そんなことは......マレルのおかげです。マレルと結婚したからこそ、バップ商会を繁栄させられました」
「今では、納得した関係を築いているのですね?」
「はい」
「では今回、マレル様が毒殺未遂事件に巻き込まれ、かなり衝撃を受けられたのではないですか?」
「そのことなのですが......」
モハイルが言い淀む。
「私は、ジュリエルから妊娠したことを知らされてた後、しばらくしてマレルからある報告を受けました」
「ほう?どんな?」
モハイルが緊張している。何か重大なことを話そうとしているらしい。リュールは自然と前のめりになった。
「マレルはジュリエルの結婚については妥協するつもりはありませんでした。ジュリエルの子どもを排するというのです。既にパトラを通じて商会に薬を依頼したと聞いて驚きました」
「あなたに相談する前に、マレル様は動かれたのですか」
「そうです。彼女は思ったらすぐに行動する人です。パトラをメイドに雇った時もそうでした」
「すぐに行動されるのは分かる気がします」
マレルはこうだと思ったら、突っ走るところがある。リュールがまだ子どもの頃、ジュリエルとおそろいの洋服を勝手に作り、着せられそうになったことがある。あまりにかわいい色で拒否したが。マレルは2人に絶対に似合う!と思って作ったらしい。彼女は勝手に物事を進めてしまう悪いクセがあるのだ。
「私はバップ商会の商会頭オビルとは娘パトラのこともあり、連絡をマメにとっていましたから、マレルの依頼内容をすぐに知らされました。私とオビルは相談し、偽薬を渡すことにしたのです」
「それで?」
「マレルは偽薬をジュリエルのお茶に混ぜて飲ませたようです。ジュリエルには演技するように伝えさせていましたので無事、気付かれずに上手く行きました」
「本当に良かった」
リュールが言うと、モハイルもうなずいた。
「マレルはジュリエルが倒れて、初めて自分のしたことの恐ろしさが分かったようでした。ジュリエルが寝込んでしまい、罪の意識に苛まれていると彼女が言った時、私は彼女に真実を打ち明けることにしました。彼女は偽薬であったことに驚いていましたが、安心して涙を流していました」
「マレル様も苦しんでおられたのですね」
「はい。ただ、今度はジュリエルがマレルを恨んでいることが分かりました。ジュリエルは子が無事だったものの、また、マレルが手を下してきたらと不安だったのです。それに、セロが追い出される心配もしていました」
「そうなりますね」
「ジュリエルもマレルに似て、突っ走るところがあります。私は、ジュリエルが何かをしでかす前に急いで屋敷に戻り、ジュリエルを諫めました。そして、それとは別にマレルにはある提案をしました」
「提案とはどんなことです?」
「君も倒れてみたらどうだ、と言いました」
「は?」
リュールの言葉に、モハイルが下を向く。
「マレル様が倒れられたのは演技ということで、無事なのですか!?」
「........そういうことになります。ただ、彼女は演技ができないというので、一時的に意識が遠のく効果がある物を使いました。命に別状はありません」
「何なのです、それは?」
「フロック公爵家には花がたくさん咲いていますね。あの花の中にそういった効果がある花が咲いているのです。知識として知ってはいましたが、万が一ということもあるので、マレルに使う前にまず、私が試しました。安全なのは証明できましたから、彼女も安心して口に含みました」
「口に含んだ?いつです?」
「ジュリエルとのお茶の前にマレルは花びらを口に含みました。遅効性ですから効果は徐々に現れたはずです」
「そんなものが..............今、マレル様は何をしてらっしゃるのです?」
「部屋を出ることはできませんから、大抵、本を読んでいますね。私が彼女に読んであげることもあります」
「はぁ.....!??何と人騒がせな!!」
「すみません.......」
モハイルは小さくなった。さすがにいつもの色気を漂わせる余裕がないモハイルだった。
「ちなみに、マレル様に倒れたフリをさせたのは、ジュリエルの復讐心を抑えるためですか?」
「ジュリエルには我に返ってもらう必要がありました。手を下す前にマレルが倒れてしまえば、用心します。マレルが倒れた後は、人の出入りを制限させましたからマレルも安全です」
「なるほど」
「後は、マレルが倒れたことで、ジュリエルがどう動くか確認したいという狙いがありました。セロとの想いを貫こうとするならば、もう許してやってもいいのではないかと彼女には言いました」
「納得されたのですか?」
「はい。なぜなら......その大変、失礼なのですが、ジュリエルは密かに出産した後、殿下と結婚しようとしていました。出産はするが、母の願いであるあなたとの結婚も叶える、そんな考えがマレルを納得させたのだと思います」
事の真相を聞いたリュールは、色々と呆れていた。
“なんでこのモハイルという男はさっさと本当のことを言わないんだ!”と、腹を立てたのだった。
やっと全てが明らかになりました٩(*´꒳`*)۶
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