モハイルの告白1
「ところで、マレル様はお腹の子どもが無事であることは気付いていないのか?」
「大丈夫だと思う。私もあまり部屋の外に出なかったし」
「では、マレル様は事実を知らないまま倒れたことになるのだな?」
「ええ」
「どうしてマレル様が倒れたのかはまだ分からないが、ジュリエルはマレル様が倒れて色々と思うところがあったようだな?」
「ええ......先ほども言ったけど、恐ろしいことをしようとしていたんだと、我に返ったわ。お母様がしたことは未だ許せないけど、生きていてもらいたいという気持ちはある。だって、セロが言うように誰かを犠牲にして生まれる命は悲しいから......」
「そうだな.....」
現在、マレルには会えない状況が続いている。屋敷の者であっても限られた者が世話をしているだけだという。
「マレル様には会いに行っていないのか?同じ屋敷にいるだろ」
「まだ、そこまで気持ちの整理はつかないわ。私自身の体調も微妙だし」
「そうか。では、モハイル殿はどうしている?」
「お父様はお母様の様子を小まめに見ているみたい。お母様の部屋にいることが多いと、侍女から聞いたわ」
「そうなのか」
もし、マレルが意識が無いならば、いつでも殺害するチャンスはあるということだ。だが、マレルの部屋に頻繁にいるならば、何か起きたら真っ先にモハイルが疑われることになる。愚かな行動はしないだろう。
「今までにないくらい、一緒にいるのではないかしら。今まではお父様は実家の爵位が下だったのもあって、お母様に遠慮していたみたいだけど」
爵位の差.......そういった格差でモハイルがマレルを疎ましく思っている場合もあり得るのではないかと思ってしまう。
「いずれにしても、モハイルからもう一度話を聞く必要がありそうだな」
「リュール!何度も言うけど、お父様は犯人じゃないわ。私達のことを守ろうと助けてくれる優しい人だもの」
「でも、話は聞かねばならない」
「お願い、リュール!」
ジュリエルは子どものことがあるから必死だ。モハイルが万が一捕えられれば、出産の不安があるから心配なのだろう。だが、モハイルがジュリエルの妊娠を隠そうとした時点で既に罪なのだ。今のジュリエルはそこまで考えが及んでいないらしい。
「とりあえず、ジュリエルは部屋でゆっくり休め。セロ、連れて行け」
「はい」
2人が去ると、モハイルを呼ぶように命じた。急いでやってきたらしいモハイルは、少し髪が乱れている。いつも余裕そうだったモハイルが何やら落ち着かない様子だ。
「殿下、先ほど、ジュリエルとセロと話をしたそうですね」
「ああ、しましたよ。色々と話を聞いたがまだ、分からないところがあります。あなたには正直に話してもらいたいと思っています」
「……ジュリエルの選んだ人生を私は応援してやりたいと思っています」
「言っておきますが、僕はジュリエルとは幼馴染で同志だと思っています。僕ではないほかの男の子どもを身ごもってたとしても、罰するようなことはしない。罪を犯していなければですが」
「あの子は、自分と子どもとセロを守ることでいっぱいいっぱいです。間違った方に進みそうになるのを止めなくてはと、私も必死でした」
「具体的に話してください」
モハイルは大きく息を吸うと静かに息を吐いた。
「ある日、ジュリエルから手紙が届きました。手紙にはセロとの子ができたと.......。驚きましたが、不思議と反対する気持ちになれませんでした。だから、2人の決意が固いならば、領地で出産するといいと提案しました」
「王家を何だと思っています?」
リュールの言葉にモハイルは深刻な顔をする。
「..........分かっています。私が間違っていることをしているのは.........。ですが、あの2人を見ていると、私の若い頃を思い出してしまうのです」
「それは、マレル様と出会う前の話でしょうか?」
「ご存じなのですね。では、パトラのことも.......」
「パトラはあなたとヨージュさんの子なのですよね?」
「......そうです。彼女が身ごもっていると分かったのは、ヨージュと別れ、既にマレルと婚約した後でした」
「ヨージュさんと別れたのはなぜです?」
「私の実家には借金がありました。マレルは私をとても気に入り、借金も全て肩代わりすると。当然、実家は飛びつきました」
「バップ商会も大きな商会です。裕福なヨージュさんと結婚しても良かったのではありませんか?」
「身分です。両親は商家出身のヨージュよりも公爵家のマレルとの結婚を望んだのです。既に、いくつかの事業提携もしており、私は逆らえませんでした」
「ヨージュさんはどうなったのです?」
「私はバップ商会の現頭であるオビルに、生まれた子をオビル夫妻の子として育てて欲しいと頼みました。彼は私の親友です。私を理解してくれました」
「そのかわり、あなたはバップ商会にお金が落ちるようにしていたわけですか」
「そうです。私は多くの人にバップ商会の扱うアクセサリーやドレスをプレゼントすることで、商会の評判を高めたのです。時として浮気しているように見えたかもしれませんが誤解です」
モハイルのまわりにいた女性は、バップ商会の宣伝に使われていたようだ。だが、彼女達も優先的にバップ商会の扱う品を手に入れられていたのだからウィンウィンな関係であったようだ。
モハイルにはなかなか商才があるのだなと、リュールは思ったのだった。
ヨージュはパトラを出産した後、バップ商会で働く有望な男性と結婚しました。夫となった男性はモハイルとの事情も知っており、ヨージュを精神的に支えています。ちなみに、モハイルとヨージュは個人的に会うことはありません。お互いケジメをつけています。
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