ジュリエルの告白
リュールはジュリエルに話を聞きに行くために準備していた。
城に呼んでも良かったが、身重でつわりに苦しんでいるとのだと知れば呼び出す気持ちにはならない。
........フロック公爵家まで馬車に揺られやってくると、よく手入れされた庭園は今日も素晴らしかった。
(こんなに平和な風景があるというのに、何故、人は争うんだ)
感傷に浸っていると、玄関につく。ジュリエルの待つ部屋へと案内されると、ジュリエルと侍女、例の護衛騎士がいた。
リュールはひとまずジュリエルと2人で話を聞くために、人払いするように言う。騎士のセロはチラリとジュリエルに目線を送ったが、ジュリエルがうなずいたので部屋を侍女と共に出て行った。
「リュール、今日は私に話を聞きに来たと聞いたけど」
「ああ、そうだ。.........ジュリエル、僕に話すべきことはないか?」
ジュリエルはじっとリュールを見つめる。何かを考えているようだ。
「……何かを掴んだって顔してるわね。昨日、パトラが街にお使いに行っていたことと関係あるのかしら?」
「察しがいいな。言っておくが、彼女は悪くない」
「やっぱりパトラね。彼女の実家にはだいぶお金を渡してあげたというのに、平気で告げ口するのね。人って信用ならない。......でも、いいわ。もう少ししたら体型も変わるし隠せなくなるもの」
開き直った様子のジュリエルは真相を話し始めた。
「さっき、私の後ろにいた護衛騎士はセロというのだけど、私は彼を愛しているの。私のお腹には彼の子がいるわ」
「何故、僕に話してくれなかった?」
「話したら変わったかしら?お母様は私の妊娠を知っても、あなたとの結婚を継続させようとしたのよ?子どもを亡き者にしようとしてまで!そんなの許せない!」
ジュリエルが胸を押さえる。気持ちが昂り、呼吸が荒くなっていた。子を宿しているのだ。負担になるようなことはさせたくない。
「落ち着いてくれ。君の腹には子どもがいるんだ。......僕は君を責めようなんて考えていない。だけど、確認しなくちゃいけないことがある。どうか、落ち着いて話をきかせてくれ」
「……リュールは私のこと、怒ってないの?私のしたことはあなたへの裏切り行為よ?」
「怒るというよりも、驚いた。.......僕達の結婚は人に決められたものだ。それに、人を好きになることは止められない。僕達は幼馴染であるし、君の幸せを願ってる」
「リュール……ごめんなさい」
ジュリエルは涙をボロボロとこぼした。怒ったり、泣いたりするのは、やはり妊婦だからだろうか。情緒が不安定だ。
「ジュリエル、君はマレル様が子を流そうとしたことを恨み、毒殺しようとしたのか?」
「違うわ。信じてもらえないかもしれないけど、私は何もしてない。もちろん、セロだってそんなことしないわ」
「信じたいが、マレル様を恨んでいたんだろう?」
「今だって未だに恨んではいるわ。.....だけど、お母様は私が手を下す前に倒れたの。ふと我に返ったわ。私は恐ろしいことをしようとしていたんだと。..........正直、なぜお母様が倒れたのか、何が起きているか分からないの」
「本当か?」
「ウソじゃない。お母様がいなくなれば私はセロと一緒にいられるし、子どもの安全は図れるとは思ったわ。だけど、実際に何もしていないの。毒だって手に入れていないもの。倒れるはずがないのよ」
ジュリエルの態度からウソを言っているようには見えなかった。
「話からすると、君やセロは何もしていないがマレル様は倒れたということになるな」
「そうよ。セロは常に私の側にいるし、彼が何かしているとは思えない。彼はとても優しい人なのよ」
「好きな者には優しくするものだろ」
「セロを疑っている?彼はそんな人じゃないってばっ!!」
「興奮するな。一般論だ」
ジュリエルの目から再び涙が流れた。情緒不安定な彼女は感情の起伏が激しい。リュールは迷ったが、興奮を抑えようとジュリエルの隣に座って背中をポンポンと叩いた。ハンカチを目元に当てて涙も拭き取ってやる。
「ジュリエル、落ち着け。呼吸が荒くなっているぞ。腹の子に差し障る」
ジュリエルはなかなか泣き止まなかった。声を上げて泣いている。どうしたら良いか分からず、リュールはジュリエルの背中を優しく叩き続けていると、いきなり扉が開いた。
「お嬢様!!」
扉を開いて入って来たセロが、ツカツカと寄って来たかと思えばリュールを睨んでいる。リュールはムッとした。
「お前、僕を睨むとは言い度胸だな!」
ジュリエルの意は汲むつもりだが、自分の婚約者に手を出した男だ。睨まれる筋合いなどない。リュールは不機嫌になった。イラつく気持ちを抑えつつ、リュールは元の席に戻り座る。
「扉を閉めて、お前も座れ」
セロは扉を閉めると、ジュリエルの横に座り肩を抱きしめた。ハンカチをジュリエルの目元に当てたり耳元で何やら愛の言葉を囁いたりして忙しくしている。
睨まれてかなりムカついたが、ジュリエルを心から愛しているのは本当らしい。もし、財産狙いや遊びだったとしたら、直ちに獄に落としてやるところだった。
.........しばらくして、落ち着きを取り戻したジュリエルから話を聞いたセロは、土下座してリュールに謝罪をしていた。
「殿下には大変失礼なことをしてしまいました.....!」
「お前、いい度胸をしているな。僕の婚約者に手を出したうえに睨んでくるとは」
「それはその…ッッ!」
セロが下を向いている。ジュリエルはセロの腕にひしりと抱きついた。
「リュール、ごめんなさい!ごめんなさい!」
「何で、ジュリエルが謝るんだ。僕はセロと話しているんだ」
「だって……!」
「……一応、言うべきことを言ってみただけだ。睨まれたのは相当、ムカついたからな」
「本当に申し訳なく......!」
「もういい。謝罪も聞き飽きた」
「許して頂けるでしょうか?」
「許すも何も、マレル様が倒れた原因を作っていなければ咎めるつもりはない。無事に事件が解決したら、お前達の未来のことも考えてやる」
セロは祈るようなポーズを見せた。何だか、調子が良くて違う意味でもムカつくヤツだ。
「私は、何もしておりません。むしろ、お嬢様を止めることに必死でした。お嬢様を愛しているからこそ罪を犯させるわけにはいきませんでしたので」
「セロ……」
ジュリエルがセロを見つめる……何だか甘ったるい空気になる。
「おい!2人の世界に入ったら許さんぞ!」
イライラしていたリュールは苦言を呈したのだった。
ジュリエルとセロは2人きりの時はいつも甘々なのです。
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