犯人は誰だ?
ジュリエルは護衛騎士セロとの子をお腹に宿しており、マレルがその子を亡き者にしようとしてたという話を聞いたリュールは衝撃を受けていた。
ジュリエルが妊娠していたことも衝撃だが、母であるマレルがそこまですることが驚きだった。
(マレル様は血統を重視するお方だが.........)
王家との繋がりを強化したい考えを持つマレルにとって、娘ジュリエルとリュールの結婚は絶対なのだろう。
(娘の気持ちも考えずに強引に薬を飲ませようとするなど、狂っている)
ジュリエルが言うように血統を重視する結婚など、もう時代にそぐわないんじゃないかと、リュールも強く感じた。
「偽薬を渡してからどうなった?」
「ジュリエル様に薬を飲ませても変化が無ければマレル様に疑われます。そのため、意を決してジュリエル様にマレル様の計画をお伝えしました。体調を崩したように演技なさるようにと」
「ジュリエルはどんな様子を見せた?」
「それは、ものすごい怒りようで.......ただでさえ、お子様を宿されている不安定な時ですので、気持ちのコントロールができないようでした」
「ジュリエルが怒る時はすごいからな」
子どもの時に、イタズラ心でジュリエルの苦手な虫を手に乗せたら、ものすごく怒って殴られたことがある。子どもながらに本気のパンチで、腫れた頬が問題になったほどだ。リュールがとりなして問題は解決したが、怒りの頂点に達したジュリエルはコワイ。
「どうにか冷静になって頂いてから、偽薬を飲んでも身体には影響がないこと、演技をすることでマレル様からお子様を守ることをお伝えました」
「だから、ジュリエルは一時期、寝込んでいたんだな?」
「そうです。つわりもひどく、演技しなくてもそれらしく見せることができました。マレル様は完全に子が流れたと信じておられました」
「だが、やがて腹がふくらんでくれば気付かれてしまうだろ?」
「気付かれる前に領地に向かい、そこで出産するつもりだそうです」
「領地で出産?そこも気になる話だが、まずは今の話とマレル様が倒れたという話はどう繋がる?まさか、ジュリエルが恨んでマレル様に毒を盛ったのではないだろうな?」
「ここからは憶測になります。ジュリエル様は、マレル様を許す気持ちになれなかったのではないでしょうか。万が一、子がまだお腹にいると分かれば、また、薬を盛られる心配がありますから」
「つまり、ジュリエルが今回の毒殺未遂事件の犯人である可能性があるというのだな?」
「.......状況から考えるとどうしてもそうではないかと考えてしまいます」
思いつめたように語るパトラをリュールはじっと見つめる。
「ジュリエルは君の主人でもある。どうして僕に知らせた?」
「主ではありますが、殿下を裏切り子を宿してしまった時点で罪は深いでしょう。それに、もし、マレル様を毒殺しようとしたのが本当ならば、そんな方が王家に入るのはどうかと思ったのです」
「正義感からか」
「はい。私は、近日中にフロック公爵家を辞めようと考えています」
「....そうか。重要な情報を知らせてくれてありがとう。君はひとまずフロック公爵家を出て、実家に戻っているといい」
「分かりました」
パトラが城から去ると、リュールは一人考え込む。
(パトラが言うようにジュリエルがマレル様を排そうとしたならば、ジュリエルはどこからか毒を仕入れたということになる。だが、パトラの商会には頼ってはいないようだ。一体どこから毒を仕入れた?なぜ、未遂に終わった?)
死までは至らない身体の自由がきかなくなる後遺症を残す薬だったのだろうかと、様々な考えが浮かぶ。
(それにしても何故、ジュリエルは僕に本当のことを言ってくれなかったんだろうか……)
リュールはジュリエルがほかの男と結婚したいというならば、エバの存在が無かったとしても許していた。無理やり結婚しても、お互いにツライだけだからだ。貴族の結婚とはそんなものだろうが、幼馴染を不幸にするつもりはなかった。
(ジュリエルの相手のセロ、やつもマレル様を恨んでもおかしくはないな......)
もし、マレルが倒れていなかったら、セロを追い出そうとするはずだ。ジュリエルとセロは子を守るためにあらゆる手段を考えてもおかしくない。
(領地で出産を考えているという点から、モハイルが共犯である場合も考えられるな..........)
色々な可能性が出てきて、頭が痛くなった。
リュールは気分を一新するために、入浴の用意を指示する。用意が整うと、湯舟にゆったりと浸かった。メントが身体を洗おうとやって来たが、考えたいことがあると言って断った。
しばし、湯舟で目をつむって思考に浸る。
(パトラの密告は、本当に王家に対する忠誠心だけなのだろうか? 自分がモハイルの子だと知っていてジュリエルを貶めるために、故意的に密告したのではないか?)
そうかもしれないと思うと、ドロドロした人間関係に気分が悪くなった。
リュールは湯から上がるとタオルを腰に巻き付け、マッサージ用のベッドに横たわる。マッサージをしてもらうためにベルを鳴らした。すぐにエバがやって来た。
「殿下、随分と長湯をされたようですね。お顔が真っ赤です。水をお飲みになられては」
エバが、水の入ったグラスをくれる。リュールは起き上がるとグラスを受け取って一気に水を飲み干した。
「うまい」
「随分とお疲れに見えます」
「ああ、今日はとても疲れた。念入りにマッサージをしてもらえるか?」
「はい」
エバの手は柔らかくて触れられると心地よい。
リュールは、ジュリエルが自分の知らないところで護衛騎士と恋仲になり子まで設けていたと知って、エバに触れないようにしていた気持ちに迷いが生じた。
エバがリュールの腕から手へと順にマッサージをしていく。エバの手がリュールの手に触れた時、リュールは思わずエバの手を握りしめた。
「で、殿下?」
「少しだけ、このままで」
エバの緊張する気配が伝わってくる。エバの手に触れると癒される気がした。
「すまないな。ちょっと人肌が恋しかったんだ」
「そ、そうなのですか…」
妙な空気になってしまったなと、思いながらエバの手を握り続けたのだった。
疑わしき人がたくさんいます。
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