至福のマッサージ
モハイルは、聞き取り調査後も都の屋敷に残り、マレルの様子を見守るらしかった。
「王都にいるのならば、すぐに呼び出せるな」
リュールは聞き取り調査の後、モハイルが領地でふだんから過ごしていたのは治水事業や領地の経営などの問題のほかに、理由があるのではないかと考えていた。
(僕のカンが当たっているならば、原因はパトラなんじゃないか?)
リュールはパトラを見た時に、どこかで見たことがある気がしていてモヤモヤしていたが、モハイルの顔を見てピンときたのだ。
(あの2人は似ている)
リュールが感じたのだから、2人が近くにいれば似ていると評判になってもおかしくない。
(もし、あの2人が親子だとしたら、マレル様を排除してパトラを自分の娘として家に入れようと考えてもおかしくはないな)
侍従に指示していたモハイルの詳しい情報が上がってきた。
........やはり、リュールの想像した通りモハイルの学生時代の恋人はバップ商会頭オビルの妹、ヨージュだった。
学生時代にモハイルとヨージュが付き合っていて、パトラがモハイルとよく似ているとなれば、パトラは2人の子どもだと考えて良いだろう。
マレルは2人の子どもだと知っているのかが気になるが、意識の戻らない現時点では確認しようがない。ジュリエルの様子ではパトラがまさか自分の義理の姉だとは気付いていなそうだ。
(モハイルは自分の子どもを引き取りたいのに、引き取れないから屋敷に使用人として入れたのか?バップ商会に潤沢な金を落としているのも娘のためなのか?)
もし、モハイルがマレルを殺害したとして、ジュリエルが嫁いでしまえばモハイルは公爵家を自由にできる。強引ではあるが、パトラを養女として引き取ることもできるだろう。
(そもそもパトラは自分の本当の父のことを知っているのだろうか.....?)
バップ商会の商会頭であるオビルとヨージュを呼び出し、問い詰めれば簡単に真偽は分かりそうだが、父親が大好きなジュリエルが大きなショックを受けると思うと気が乗らなかった。ただでさえ、体調を崩している。
(ジュリエルは父親に愛人などいるとは思っていないんだ。まさか自分の身の回りの世話をするパトラが母違いの姉妹なんて知ったら、あのように普通に過ごせるわけがない)
「お疲れですね。マッサージでもしましょうか?」
リュールの従者であるメントが話しかけてきた。リュールは執務室のイスに座って目をつむり、天井を仰いでいた。
「ああ、頼む」
目をつむったままマッサージを受ける。頭皮を揉む加減が丁度良くて気持ちいい。
「メント、今日のマッサージは絶妙だな。いつもは痛いくらいだが」
目を開けると、すぐ近くに自分を見下ろすようにエバの顔があった。
「エ、エバ!」
エバがリュールの頭皮をマッサージしていたのだ。側に立ってこちらの様子を見ていたメントが爆笑している。
「な、なんでエバが!」
「たまには女性のマッサージも良いでしょう」
「ビ、ビックリするだろう!」
予想していなかったのもあり、心臓が激しく動いている。心臓に悪いというヤツだ。
「やはり、メント様にマッサージして頂いた方が.......」
リュールの取り乱し具合にエバが気にして口を開いた。
「いや!いい君で!ぜひ続けてくれ」
リュールが慌てて言う。
「もう少し、強い方が好みでしょうか?」
「いや、丁度いい。上手だ」
思わぬスキンシップでリュールのテンションが上がった。エバはマッサージが上手だった。
「なぜ、マッサージが上手なのだ?」
「まだ家にいた頃、兄のマッサージをよくしておりました。剣術の練習後は、身体にハリが出るそうで少しでも解消できればと始めたのがキッカケです」
「そうなのか。マッサージもできるとは良いな」
リュールはマッサージを受けるのが好きだ。意外と執務の書類仕事は肩が凝るし、剣の訓練をした後は疲れが溜まる。解消するには入浴とマッサージの組み合わせが効果的だと思っていた。
「本日から入浴後のマッサージをエバ嬢にお願いしましょうかね?」
「おい、マッサージはメントの仕事の1つだろう。職務怠慢は許さんぞ」
「男の私がマッサージするよりも女性にマッサージされる方が良いでしょう?」
「だからそれは!」
「……私は構いません。殿下がお嫌では無かったらですが」
「...........!エバがそう言うならば任せよう」
「良かったですねぇ」
「お前も礼を言え!エバの仕事を増やすことになるんだからな」
「はいはい」
リュールは態度には現さないようにしたが、飛び上がるほど嬉しかった。愛しい人に触れられて嬉しくないヤツなんているだろうか。
「そう言えば、メント、スタルの新しい軍の様子はどうだ?」
「ひたすら、同じ動きを繰り返し行っているようです。最初は将校上がりの若造がと、舐めていたヤツもいたみたいですが、スタルが厳しく罰したことで命令を聞くようになったみたいです」
「どんな罰を与えた?」
「片方の腕を縛り、木剣を持たせて騎馬兵の中に放り込んだようです」
「それはキツイな」
「皆、死にたくないので必死になったようです」
エバをチラっと見ると、口元に手を当てている。兄の過激な調練方法を知って驚いているみたいだ。
「今は、動きもかなり良くなりましたよ。時間があれば近いうちに確認されてはどうでしょう」
「ああ、気になる。後でさっそく観に行く」
リュールはエバにマッサージをしてもらい、新しいスタルの軍が好調であるのを確認すると、上機嫌になったのだった。
ジュリエルはパトラと父が似ているとは思ったことはありません。彼女はあくまで使用人だからです。まわりも自分の首が惜しいので、似ているとは思っても口に出す強者はいませんでした。
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