マレルの夫モハイル
父王に頼んでマレルの夫、モハイルを早々に王城に呼び出してもらった。
王からの呼び出しとなれば、どの者でも健康に問題が無い限り、遠かろうが城に飛んでやってくる。モハイルも例外では無かった。
王と王妃に挨拶を済ませたモハイルはリュールに呼ばれ、今、リュールの対面に座っている。王との対面でイヤミでも言われたのか、既に疲弊した様子だった。
「久しぶりですね。モハイル殿」
「ええ、本当ですね。普段、私は領地で過ごすことが多いですから、殿下にお会いできて嬉しく思います」
「僕もです。本日はマレル様の毒殺未遂の調査に協力して頂きたいと思っています」
「妻があのような事態が起きて私も驚いています。私達は離れて暮らしてはいますがいつも互いを思いやっておりましたから」
「夫婦ならば互いを思いやるのは当たり前でしょう」
疑わしいと思う意識からか、つい言葉が厳しくなる。
「私達は貴族です。政略結婚が多い世界ですから、私達のように仲の良い夫婦は珍しいかもしれませんよ?」
モハイルがウィンクでもしそうな余裕ある答え方をしてきたので、何となくシャクに障る。
「お言葉を返すようですが、愛し合っているならば側にいるものではありませんか?」
「私は領地の運営や監督をしなくてはなりませんから。妻には社交を楽しんでもらいたいですし、ジュリエルはあなたの婚約者です。妻には残ってもらう必要がありました。私が領地に行くのは当然です」
「直接、領地経営をご自分でなさっているのは感心です」
「領民の声を直に聞きたいのです」
「長く領地に滞在せねばならない理由とは何でしょう?」
「領地には大きな川が流れています。治水事業はわが領地の最大の課題です」
「確かに。ここ何十年かは、水害による被害も少ないですね」
「はい、まだまだ川の土手の改良など力を入れるべきところがたくさんありますよ」
モハイルの領地に対する意見は真っ当であった。ここらでもう少し話を切り込んでいこうとリュールは口を開く。
「では.........もう1つ聞きたいことがあるのですが。こちらは少し聞きにくいことです」
「なんでしょうか?」
「領地で長く過ごしているならばまわりで世話をする者が必要になるでしょう。……ようするに、愛人がいるのではないかということです。しかも複数いませんか?」
「何てことを言われるのです.......!」
モハイルはタメ息をつきながら顔にかかっていた髪をかき上げる。その姿は男のリュールから見ても色っぽかった。
「違います。確かに私に良くしてくれる女性は何人かおりますが」
「良くしてくれる女性、とは何なのです?」
「皆、バップ商会の生地や化粧品などが目当てなのです。あの商会は珍しい物も多く扱っていますから、私とつながりを持っておけば融通してもらいやすいと考えているのでしょう」
バップ商会は、有名ドレスショップに生地を多く卸している。バップ商会の生地を使ったドレスオーダーは何年も待つほどの人気ぶりらしい。
「なぜ、あなたに頼む必要が?」
「バップ商会の息子は私の同級生です。個人的にも親しいのです」
「それだけで、あなたに女性達が群がるものでしょうか?個人的に親しくなりたいからでは?........だが、確かにあなたとバップ商会のつながりは強いらしい。バップ商会の娘パトラを王都の屋敷で雇っているくらいですから」
「そうです。バップ商会頭のオビルから行儀見習いに頼まれました」
「信頼できる友に巡り合えるなんて、随分と充実した学園生活だったのですね。マレル様とも学園で出会われましたよね?」
「そうです。彼女は、伯爵家の次男である私を気に入って下さった。マレルの目に留まらねば私はどんな人生を歩んでいたか分かりません」
「いやいや、あなたは学園で相当、モテていたそうではないですか。マレル様から聞いたことがありますよ」
「はは、古い話です」
モハイルの話を聞いていて、破綻するような辻褄の合わないところは今のところ見つからない。モハイルに女性が近づこうとしているのは事実だが、個人的に会ったという調査報告も上がっていなかった。もう少しツッこんで聞いていかねばならないだろう。
「ドレスを最近、多く購入されていますがそれは何故です?」
「友人の商会を盛り上げるためと、まわりの方に感謝の気持ちを表すためです」
「随分と太っ腹ですね」
「1度はしっかりとまわりの方に礼を尽くそうと思っていましたので」
「紳士的ですね」
「それほどでも」
「そう言えば、ジュリエルのメイドのパトラにもドレスを贈ったとか。それは何故です?」
モハイルは意外なことを聞かれたとでも言うように、目を一瞬大きく見開いた。
「それは..........親友の子どもですし、ジュリエルの身のまわりの世話をよくしてくれていますから。こちらもよくしてやりたいと思いますよ」
「まあ、分からなくはないですが」
モハイルはどの質問にも卒なく答えた。こちらとしては物足りない気分になる。
調査を終えると、リュールはモハイルについてより詳しく調べるようにメントに指示したのだった。
モハイルはリュールを小さな頃から知っているので、取り調べ中に“成長したなあ”と、考えていました。
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