エバとのランチ相談会
黙々と料理を口に運んでいたリュールだが、聞いてみたいことがあると言ってランチに誘った手前、やはりあの話をしてみるべきだと思った。
「あー、えーとだな、ジュリエルと昨日話していたら、ふいにある提案をされたんだ」
「......私が聞いて良い話なのでしょうか?」
「構わない。........その、ジュリエルに側妃を持つように言われた。まだ結婚もしていないのに、側妃を持てなど今から言われて驚いてな。.........これは、ジュリエルが僕に愛想をつかしているからなのだろうか?」
「……そういうわけでは無いと思います。おそらくですが、子を産むとしても思うようにならないかもしれませんし、殿下の立場を思えばこそ心配なさって言われたのかと」
「それはジュリエルにも言われた。だが、言うにしても早すぎるだろう」
「はい……確かにおっしゃられる通りかと」
「ジュリエルは幼馴染だ。僕達は甘い関係ではなく、どちらかと言うと“同志”としての感覚が強い。だが、ハッキリと言われると、何だか複雑な気持ちになったんだ」
「殿下は、ジュリエル様を愛してらっしゃるからそう思われるのではないでしょうか」
「そんなことはないと思う! あ、イヤ、彼女に対しては家族のような気持ちは抱いている。でも、僕の知ったあの気持ちとは違う」
リュールはエバに出会って、甘やかな気持ちを初めて知った。家族愛とは違うと言える。
「殿下にはほかに想う方がいらっしゃるのですか?」
「.........何でそんなことを聞く?」
「殿下の“知っている気持ち”とは、そういった方がいるのかと」
(“それはエバだ!” なんてこの状況で言えない......)
「そ、それについてはまたの機会に話すとしよう。 えーと、エバはどうなんだ?屋敷では評判が良かったと聞く。婚約者とか恋人はいないのか?」
ホントはこの件についてはとっくに調べていて、答えを知っている。エバには婚約者も恋人もいない。
「婚約者はおりません。我が家は貧しい家ですし、求婚してくれる方もいませんから」
「そうか」
分かっていても、安心してしまう。ニンマリしないように気を付けた。
「..........でも、密かにお慕いしている方はいます」
「何だと……っ!?」
驚いて声を上げたリュールに、エバが驚いている。だが、目の前が真っ暗になっていたリュールはエバの驚く様子が目に入らない。
(ウソだろ!?調査では好きな者もいないはずだったのに..........…)
「殿下........?」
「あ、ああ。想い人がいるのだな。そ、それは屋敷にいる者か?」
「いえ、違います。...............私の中に秘めた想いなので、その方に気持ちをお伝えする予定はありません」
悲し気に微笑むエバに、リュールは胸が切り裂かれるような痛みを感じる。
(誰なんだそいつは! でも、伝える予定はない? これは喜ぶべきなのか??)
リュールはひどく動揺していた。自分が初めて心から気になる女性には既に慕う相手がいたとは……。伝える予定は無いと聞いてもショックだった。
「私は、殿下のお役に立つことが本望ですから」
エバの言葉にバッと顔を上げる。
「慕う相手がいるならば、夫婦になりたいと望むのが自然ではないのか?」
「いいえ......私は兄と共に殿下に尽くしたいと考えています。側に私を置いて頂ければ幸いです」
「それは嬉しいが、何も結婚を諦めなくてもいいのだぞ?」
最後の方の言葉がかなり小さくなる。本当は誰にもエバを取られたくない。
「その、エバは、もし結婚するならばどういったことを相手に望む?」
「望むことですか?もし、私が結婚するならば、お互いを思いやれるようなそんな結婚が理想です」
「思いやれるような結婚か」
「はい。何でも話せてお互いを尊敬できるような…そんな結婚が理想です」
(何でも話せて、お互いを尊敬できるか......)
「つまり、仲の良い夫婦ということだろうか?」
「はい」
「僕も結婚するならば、そんな夫婦がいい」
思わず思ったことを言えば、エバがこちらを見た。思わずエバの手を握りたくなったが、彼女には好きな男がいる........。
「殿下、ジュリエル様との問題は解決できそうでしょうか?」
「ジュリエル?」
「ジュリエル様との関係についてお悩みでしたよね?」
「ああ、そうだった」
「?」
ジュリエルの心の内が知りたいと相談してみたが、リュールの本当の目的はエバが結婚をどう考えているだった。幸いにして結婚観は同じようだ。
ベルを鳴らして官女を呼んだ。茶のおかわりを頼む。
「そうだエバ、ジュリエルの家で出された茶についてだが。女性の美容にいいらしい。君も良かったら飲んでみてくれ」
黄金色の茶をエバに勧めた。
「これはキビ茶ですね」
「ジュリエルが飲んでいるから知っていたか」
「はい。最近、好まれるようになりました」
「女性はそういったものが好きらしいな」
「身体を温めるので女性にはおすすめですね」
「そうなのか。ジュリエルは冷え性なのか?」
「冷え性というより、身体を労わってらっしゃるのだと思います」
「そういうものか」
ランチ相談会が終わると、リュールは傷心のまま執務室に向かった。
(エバは好きな人には想いを告げないと言った。ならば、チャンスだと考えることにしよう)
リュールは、どうもジュリエルが自分との結婚を避けているらしいと知ってから、自然とエバとの進展を考えるようになっていたのだった。
エバに好きな人がいると言われて凹むも、側でずっと働きたいと言われ、何だかんだで嬉しいリュールです。
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