王と王妃
翌日、リュールは早めに目覚めると、ライラ達が来るのをベッドの中で待っていた。
扉が開く音がしてライラ達が部屋に入って来ると、リュールはベッドから今、起きたように装って伸びをした。カーテンを開けるエバと目が合う。
「おはようございます。殿下、起きてらっしゃったのですか?」
「今、起きた。おはよう」
ベッド脇に立つと、エバは着替えさせることに慣れてきたのか、リュールのパジャマのボタンを手早く外していく。今日はバッチリ、シルク製のパジャマを選んで着ていた。少し寒かったが、リュールにとってエバの前では見栄を張る方が今は大事だった。腕を上げるとスムーズにパジャマを脱がせてくれる。
「着替えの手伝いも慣れたものだな」
「そうでしょうか」
余裕が出てきたようで控えめに微笑んでいる顔が可愛らしい。身体が冷えないようにシャツをすぐに着せてくれる。
「今日は城で溜まった執務などをするつもりだ。 エバ、良かったらランチでも一緒にどうだろう?」
「え、私がですか?」
「ああ。ちょっとエバに聞いてみたいことがある」
「何でしょう?私で良ければぜひ」
「ということで、ライラ、いいかな?」
「はい、かしこまりました」
リュールは着替えが終わると執務室に向かい、父王チャートの仕事の手伝いをこなした。仕事後は、久しぶりに両親と仕事の報告を兼ねて話をすることになっている。
両親のいる執務室に向かうと、ソファに父と母が座って茶を飲んでいた。
「調子はいかがでしょうか?父上、母上」
「いつも通りだな。お前がしっかりとしているから任せている仕事も心配いらない」
「力になれていますか、僕は」
「もちろんだ」
「リュールは私の自慢の宝物ですよ」
母が言いながらニッコリと微笑む。母はリュールをとても可愛がっていた。息子が1人しかいないということもある。姉がいるが、姉はすでに他国に嫁いでいた。姉が嫁いでからは母はよりリュールを可愛がっていた。
「それよりも、リュール、毒殺未遂事件のその後はどうなっている?」
「調査中です。近々、モハイル殿も呼び寄せて話を聞こうと思っています」
「モハイルか。あれは顔が良いが、マレルを大切にしているようには思えんな」
「色々なウワサがあるようですね。慎重に調査を進めます」
「あなた、幼馴染のマレル様を心配なさるのは分かりますけど、私のことも気遣ってくださいませ」
母上がプリプリとする。母はかつてチャートとマレルが結婚するかもしれない間柄だったことを気にしているのだ。プイと横を向いて拗ねている。
「そう怒るな。倒れて意識が戻らないと聞けば、心配になっても仕方がないであろう?」
「母上、父上は母上一筋ではありませんか。そのように機嫌を損ねては父上が気の毒ですよ」
母上一筋、と言ったところでリュールは、両親が”側妃”についてどんな反応をするか知りたくなった。
「あの、もしもですが、父上と母上は僕が側妃を持つと言ったらどう思われますか?」
「何? 誰か気に入った娘がいるのか!?相手は誰だ?どこで知り合ったのだ?もう長いのか?」
「まあ、あなたが側妃を持ちたいと思うなんて!ジュリエルの気持ちを考えているの!?それに結婚もまだなのに言うことかしら!?」
2人が意外にも大きな反応を見せたので、リュールは焦った。特に母は自分を汚らわしいものでも見るような目つきで自分を見ている。
「持ちたいとは言っていません........!実は、ジュリエルから側妃を置いてはどうかと言われたのです。異民族との闘いも続いているからと、心配しているようです」
「まあ、ジュリエルは何てことを言うのかしら! 異民族との戦いが続いているから何なの?リュールは戦場には出させないし、そんな心配はいりません。結婚してから何年も子ができないならばともかく言うべきことじゃないでしょう!」
母は“側妃”という言葉自体がキライだ。父が側妃を持つことを認めなかった。聞いてみる前から何となく反応は分かっていたので予想通りだ。
「子孫を残すのも大事だけど、それでモメたりするのは国が乱れる元なのよ。あくまで最終手段として考えるべきだわ」
父は他国の姫であり、年の離れた母をとても大切にしている。政略結婚ではあるが、父と母はとてもうまくいっていた。子もすぐに生まれたので側妃は必要無かった。それでも、もっと男子がいた方がいいという意見があり、母は“側妃”という言葉を嫌悪していた。
「私は、お前次第だと考える。側妃がいればいたなりに気を使うことにはなるだろう」
「はい。面倒なのは僕もキライです」
「お前とジュリエルはあまりうまくいっていないのか?」
「..........そういうわけでは無いと思いますが」
「リュール、花や宝石、ドレスなどをきちんと贈っていますか?」
「従者に選ばせて贈っています」
「従者任せではダメよ。すぐにあなたが選んで贈ったのではないと分かってしまうわ。人任せのプレゼントなんてもらっても嬉しくありませんよ。それにきっとリュールのことだから、お茶会で戦いの話ばかりしているんじゃないの?」
「いやあ、最近はしていませんよ。ハハハ....」
“大抵、お互いに本を読んでいる”なんて言ったらキレられそうだ。
「きちんとかまってあげないから、ジュリエルがそんなことを言い出すのよ」
「何故か私も耳が痛いな」
父が頭をかいている。最近、父のやるべき仕事が多く、母と過ごす時間が減っているらしい。
何となく雲いきが怪しくなってきたところで、報告会はお開きとなった。リュールは早々に退散したつもりだったが、もう昼だった。
「殿下、エバ嬢がお待ちですよ」
部屋の外で待機していたメントが耳打ちしてくる。
「ああ、分かっている」
エバとのランチにウキウキしていた。表情には出さないがランチを用意している部屋に向かって早足になる。昼食の用意をされた部屋に入ると、既にエバがイスに座って待っていた。
「やあ、待たせたか?」
「いいえ」
エバは緊張しているようだった。
「固くならないでくれ。さっそく昼食を食べよう」
軽く乾杯をして食事が始まると、リュールはどう話題を切り出そうかと考えていた。
それとなく、側妃についてエバがどう思うか聞いてみたかった。だが、切り出すにしてもどう話せば良いか分からない。
話の切り口を考えてリュールは黙々と料理を口に運んだのだった。
リュールの両親はとっても仲が良いのです。
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