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第3話 プロジェクト始動!

返信メールを打つ夢乃を、私は羨望の眼差しで見ていた。


「誰からのメール?」

「彼氏」

「ふーん・・・か、彼氏!?誰!?聞いてないし!!!」

「へへへー、いいでしょ?」

「ちょっと!どこで知り合ったの?あ、うちの生徒!?」

「秘密」

「なんでよ!?」

「もう少し彼と深い仲になったら教えてあげる」

「・・・携帯も彼氏も持ってるなんて羨ましすぎる」

「並列しないで」


夢乃は携帯を閉じるとベッドに座り、私を見た。


「私は美優のパパが羨ましいけど」

「パパァ!?どこが!?」

「かっこいいし、優しいし、若いし。体育祭とか文化祭もちゃんと来てくれるじゃん?

うちのパパなんて、ハゲだしデブだし、仕事ばっかで全然どこも連れてってくれないし」

「・・・」


確かにパパはスラッとしてるし、見た目悪くはないとは思うけど、

優しいかどうかは大いに疑問が残る。


「まだ34歳だから若いのは確かね。私、パパが18歳の時の子だもん」

「18!?高校生!?」

「ううん。大学1年の時だって。パパが19歳になる3ヶ月くらい前に私が生まれたの」

「へえ。すごいね。じゃあ、デキ婚だよね」

「・・・」


パパとママがデキ婚かどうかなんて考えたことなかったけど、

そうだよね、子供でもできなきゃそんなに早く結婚しないよね。


って、あれ?ちょっと待って。


「いや、デキ婚じゃないよ」

「え?」


だって、私、パパの子じゃないもん。

え?じゃあどうしてパパは18なんかで私のパパになろうと思ったの?


私が一人で考え込んでると、

さすがに勘の鋭い夢乃がつっこんできた。


「何か事情でもあったのかな?」

「うーん・・・」


誰にも話したことないけど、夢乃にならいいか。


「実はさ、私、パパの子じゃないらしいんだ」

「ゲッ。何、その重い話題。でも面白そう」


面白そうって・・・

夢乃はちょっと考えてから言った。


「でも、それで納得した。美優のママってパパより5つ年上でしょ?

ってことは、美優のママは23歳の時に美優を産んでたけど、パパと出会ったのは、

そのもっとずっと後なんだよ、きっと」

「え?」

「例えばパパが22歳、ママが27歳、美優が4歳の時に二人は出会い結婚した、とか。

22歳くらいだったら、子連れの女と結婚してもいいかなーって思えるかもしれない」

「ううん、それはない」

「どうして?」

「写真があるもの」

「写真?」


そう。写真。

パパとお腹の大きなママの写真。

それに私が生まれた日に3人で写っている写真。

どれも二人とも幸せそうな顔をしてる。


「なるほど。ってことは、美優のパパは、別の男の子供を妊娠してると知っていてママと結婚したか、

ママがパパに『あなたの子を妊娠したの』とか嘘言って引っ掛けて、後からパパに事実がばれた、か。

どっちかだね」

「確かに。でも後者じゃないと思う」


あの大喧嘩の日。

ママの「美優はあなたの子じゃないから」という発言の後、

パパが何を言ったかは、私は聞いてなかったけど、

なんとなく、ずっと昔からパパは事実を知っているような感じだった。


それに・・・

ママは綺麗でお嬢様で計算高いところはあるけど、

そういう嘘はつかない、と、思う。


夢乃は目を輝かせた。


「ってことは、美優のパパは、ママが別の男の子供を妊娠してるって知っていながら、

結婚して美優を自分の子として育ててきたって訳か」

「・・・」

「すごいねー!ますます尊敬しちゃう!18歳でそこまで覚悟できないよ、普通」


確かにその通りだけど・・・

どうしてパパはそこまで思い切れたんだろう?


「そりゃあ、それだけママのことを好きだったんじゃない?

今でも美優のご両親って、新婚みたいに仲良しよね」

「まあね。娘としては恥ずかしいけど」

「いいことじゃないー。いつまでも新婚みたいな夫婦・・いいなあ、憧れちゃう」


外から見れば、そんなもんかな。

私はほんと、恥ずかしい。


「ところで、美優は自分の本当のパパって知ってるの?」

「知らない。てゆーか、私がパパの子じゃないって知ってるって、パパもママも知らないし」

「・・・本当のパパが誰か知りたくない?」


うわ!夢乃のこの目は危険だ!

好奇心でキラキラ輝いてる!


「知りたくないって言えば嘘になるけどそこまで知りたいとも・・・」

「何言ってるの!もしかしたらどこぞの王様かもしれないのに!」


そんなバカな。


「よし!MSKプロジェクト始動!」

「MSKプロジェクト?」

「美優出生解明プロジェクト、略してMSKプロジェクト」

「日本放送協会、略してNHK、並ね」

「よろしく、美優エージェント」

「・・・夢乃は何するのよ」

「私は司令塔に決まってるじゃない。ちなみに本部はここ」

「・・・」

「じゃ、早速調査を開始してね」

「何したらいいのよ?」


まさかパパかママに面と向かって聞く訳にはいかない。

それができるなら、とっくにしてるし。


「そうねぇ・・・さしあたり、おじいちゃんとおばあちゃんにそれとなく聞く、とか」

「なるほど。でも『それとなく』ってどうやるの?」

「そこは美優エージェントの腕の見せ所よ!」



こうして、よくわからないままMSKプロジェクトは開始された。

私としては、携帯獲得作戦の方を実行したいのだけど・・・。

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