77話 ムネモシュネの痛み
理神と戦神が衝突する。権能の押し付け合いに地は揺れ動き、神は破壊の限りを尽くす。
独創と模倣。破壊と創造。同じく嫡流の間に残り続けた格差の溝。長年に積み重なった期待と、一方的な超過の欲。野蛮と冷酷を兼ね備えた神の戦いは激化する。
『…』
戦神レヴィアタンは過去の経験から培った技術を次々と模倣して、対抗する。
結界術、ありとあらゆる魔法技術、時には魔術。洗脳と幻覚、強制操作と服従。自然元素、天空の脅威を降り注がせ、全方面から攻撃を仕掛ける。物理的、精神的、防御の観点すべてに対応する多様な技を繰り出していく。戦神の軍機と捉えよう。
理神ラウルスは、一瞬一瞬に繰り出された戦神の軍機の精度を図り、次の瞬間には破壊していた。戦神の欲が高まると、軍機の規模も肥大化し、高威力の攻撃が出される。理神は権能を発令し、軍機の筋書きを破壊する。彼女自らが調合した即死の毒を戦神に注入した。戦神の肉体が朽ちていく。だが、彼は一分足らずで毒を分解し、己の武器にしてしまった。それはかつて交戦した英雄が持っていた能力の一つ。即座にとはいかないが、群雄割拠を生き残った人類の実力は侮れない。
『輪廻、将相、破壊、天命の檻』
ラウルスが囁いた。彼女は未知の力で溢れ、強く拳を握った。眠りから覚めた獅子が嘆息する。
『司る破壊。誘うは決まり。恐れるは束縛』
ラウルスの肉体が変化していく。全身の筋肉が拡張し、強烈にうねった。人体の可動域を超えたうねりが解放されると、溜め込まれた力が回転に変換された。ラウルスは人知を超えた踏み込みで、レヴィアタンに接近した。音のない足の動きに反し、彼女の放つ殺気は赤子でも感じ取れる戦慄の産物だ。殺気だけでレヴィアタンは怯んだ。
『死ね』
暴言が戦神に向けられた。踏み込んで構築された拳が戦神の腹部に直撃して、戦神を後方へと投げ飛ばした。ズドンッと響く大砲の轟音が、理神ラウルスの拳の威力を物語る。たった一発で、拮抗していた戦況を優位に進めることになった。ラウルスから熱気が放たれる。肉体に蓄積した体温を外へと逃がし、通常の状態へと戻していく。
(骨はいった。臓器も壊せてれば、上々か?)
久しぶりに放った通常技の威力に高揚を覚え、久しぶりに成り立つ戦いを楽し気に味わう。ラウルスの中で任務という理性が働きつつも、目の前の獲物を逃がさまいとする獅子の本能が開花し、幾ばくかの愉悦に浸る。
がたりと瓦礫が動く。音は汚く、だが、音源の主は清い。銀青色の髪が無造作に動く。六芒星の耳飾りが突如として、光を出す。役目を果たさんとする固い意志がラウルスには感じられた。
『隠れて生きよ、君が別れ際に言った初めての教えを…よく覚えているよ』
レヴィアタンが姉であったラウルスとの思い出を語る。
『君にとっての戦いの存在意義。快感からの欲に従った野蛮な思考だと思っていた。だが、君の境遇は普通より逸脱していた。アザトースの胎から生まれ、神の嫡流の劫を一番に背負い、軍神の務めを担った。けれど、君は心の平穏を求めていた。そうするには周りを黙らせるしかない。そうやって、君はより一層…軍神として躍動した。だが、いつしか戦いの中でしか生きた快感を得られないと知った。理想は既に破壊された。そうだろう?』
『生憎、知性的なお話は合わねえ体質なんだ。要は戦闘狂と戦う神経は持ち合わせてねえって、言いたいだけだろ?』
『まあね。真正面から戦うにしては分が悪い。平穏を得るために戦いを選び、その果てに平穏を手放さざるを得なくなった空しい生物に負けるのも性に合わない。何より、君を超えると宣言した手前、真正面から討たなければ…私は一生、君を超えられそうにない。だから、表と裏で君を超えようじゃないか』
レヴィアタンが二つの能力を合作させ、発動させた。それは戦神としての権能”軍旅”と、十男”無”の元祖に芽生えた才。
レヴィアタンの持つ軍旅の権能の極致【虚空の哲学者】とは、万物模倣の御業。交戦した者のみを模倣する限定的な範囲であり、神相手では模倣の精度は落ちてしまう。交戦の条件も、互いが戦っていると認知しなければ達成することができない。だが、極致では範囲も、レヴィアタン本人が接触したことのある者と拡大しており、その対象が原初神であっても完璧な模倣が実現できる。つまり、実質無条件で後付けの御業を獲得することができる。
『君も馴染みあるアザトース神を選ぼう』
レヴィアタンは、模倣した。大戦の災厄と恐れられるアザトース神の権能を。その精度はラウルスも本体と見間違うほどであり、アザトース神を前にしているようだった。
レヴィアタンはかの神の権能を握り、軽く手を振った。すると、彼の起こした風の先にある万物が灰も残らず消滅した。建物、植生、地に根付いた怨嗟。種を問わず破壊されたのだ。軌道も分からなかった。ラウルスは幾星霜に拝んだアザトース神の権能に、身の毛がよだつ。三割の恐怖と六割の嫉妬、そして一割の好機。
『黙ってやられるかよ!』
ラウルスは特攻した。彼女もまた、権能を発揮した。
ラウルスの持つ原理の権能の極致【伽羅の哲学者】とは、破壊の御業。無条件対象であるが、原理の権能で、ラウルスは破壊の限度を常時制限している。だが、極致では限度を取っ払った本来の実力を発揮することが可能となった。
制限下では効力までしか破壊が出来ず、一部の理の根本のみ有効であった。だが、撤廃されたフルスロットルのラウルスは、存在そのものを破壊することができる。
対象には、三十二の概念を司る原初神も含まれる。
『全ての平穏の原点に、死は値する。恐れるでない。死はない。今を生きろ!』
特攻で生まれた勢いを拳に乗せる。権能の極致に至る肉体。破壊を拳に集中させ、レヴィアタンと対峙する。彼は手を振る。だが、完全に振り切る前に、ラウルスの拳は到達していた。
『滅す豪腕―終わる愚者!!』
拳が戦神の胸を貫通させた。それと同時に、アザトース神の権能と軍旅の権能が根本から破壊され、レヴィアタンにとっての表の攻撃を破壊した。権能そのものを破壊されたレヴィアタンは極致を解除せざるをえなかった。まだ息の根のある彼を、ラウルスは危険視し、止めを刺そうともう一度権能を発揮させた。
(なんだ…?)
突如として、ラウルスは違和感を覚えた。
(極致が、勝手に閉じていく…)
己の意志を無下にして、己の権能が出力を落としていく。不可解な現象。ラウルスは、この現象を引き起こしたであろう人物を視界にとらえた。その人物は薄気味悪い笑みを浮かべている。
「流石に未知は対象外。君のぶっ壊れた頭でも」
レヴィアタンは裏の攻撃、才を展開した。それはレヴィアタンが初めて、元祖の能力を公にした歴史的瞬間である。
アザトース神嫡流十男”無”の元祖レヴィアタン・リヴァイアサンの才”禍根”は、対象のトラウマを強制的に実現する。
発動条件は、術者が対象者の名前を知っていること。そして、対象者がトラウマを抱えていること。
明確な欠点として、実現するトラウマは、術者であるレヴィアタンも完全に把握できないことだ。
だが、レヴィアタンは唯一の私欲の対象であるラウルスを超えようとしていた。遂には、ラウルスの人生の筋書きも理解した。彼にとって、ラウルスのトラウマを把握することは容易く、そして、実現も可能である。
「君にとっての”禍根”は、戦えなくなることだ。権能も応答せず、自慢の格闘も落ちぶれた。戦いの放棄で平穏に生きることができる。だが、君は平穏を恐れた。故に、戦いの消失こそが、君にとって唯一最大のトラウマ」
六望星の髪飾りが強烈に光り、その光がラウルスの”禍根”を実現する媒介となった。瞬時に能力は強制され、ラウルスの戦いが消失した。次いで、レヴィアタンの軍旅の権能が形を変えず新たに誕生した。彼が模倣するのは、無論、ラウルス。レヴィアタンは彼女の原理の権能を模倣し、極致へと至った。一度ラウルスの見せた破壊の御業を模した。
『不信、弁明、罪状、毒杯、不滅―死後の宇宙でも、善く生きよ!』
レヴィアタンはラウルスの胸を貫いて、心臓を取り出した。彼の神気が巡るラウルスの肉体は灰のように消滅していく。
『驚いた。ゆっくりだね』
消滅は緩やかで、話す余力さえ残っていた。レヴィアタンは勝ってまた、恐れた。
「壊したはずだろ」
『ああ、壊された。だが、軍旅の権能で模倣した能力は蓄積することができる。これは既存の能力じゃない。私が長年研究を重ねた副産物だ』
「その残骸に、天使も、オリゴも…数えきれない命もいるだろ」
『君を超えるための犠牲だ。アザトースの権能も、軍旅の権能も囮だ。”禍根”さえ通用すれば私は勝てる』
ラウルスの破壊の御業の前に、軍旅の権能を模倣蓄積し、能力の喪失を防いだ。裏の攻撃”禍根”でラウルスの能力を封じ、蓄積していた表の攻撃軍旅の権能で、再度ラウルスの権能を模倣し、返した。
筋書きはこうだろう。一か八かの賭け。もし、ラウルスが一度目の拳で全てを破壊していれば、御破算だったろう。だが、レヴィアタンは賭けに勝った。
『権能そのものは無条件で発動することができる。だが、権能を保有する個人の力量により、発動条件や制限が無意識のうちに付与されてしまう。神の権能も、人類の権能も条件がある限りは完璧ではない。私のように、同族としての意識が芽生えると、私が臆してしまう。だから心臓を食らって、私は清算する』
レヴィアタンは、持っていた心臓を一飲みし、ラウルスに向けた執念を終わらせた。自身の心臓を食べられる様を見たラウルスは、にっと口角を上げて、笑った。もう体のほとんどが灰となっている。
「最後に教えてやる。生き様まで模倣はできねぇぞ!」
ラウルスの教えに、レヴィアタンは微笑んだ。別れを告げる。
『さよなら―アザトース神が恐れた人類。
始まりの消滅―セア・アぺイロンの右腕。
私を唯一屈服させた偉大なる長女。
死後の宇宙で、楽しく生きておくれ』
完全に灰となったラウルスを死者の宇宙へと見送ったレヴィアタンは、まだ残る始祖の殲滅を行おうとする。
『!!』
頭上から異様な殺気を捉えたレヴィアタンは、思わず見上げた。金色の粒子が落ちてくる。自然に根付いた魔力が無意識に共鳴した。
(イニティウムは魔力を持っていないはず…)
魔力とは無才でありながらも、魔力を操るほどの殺気を放つイニティウムが宙に浮遊していた。黄金の髪が風に乗って揺れ、その瞳が光を落とす。彼女の周りにある血の巨大な槍の切っ先が地面を向いている。揺れる血が毒針を造り、槍が大輪の薔薇を咲かせている。美しさとはかけ離れた過激な刃。十七の薔薇槍。赤く、赤く、ただ赤く。薔薇に魅了された。
「十七本の薔薇槍」
イニティウムがマチェットを振り下ろし、薔薇を沈下させた。薔薇槍が降ってくる。レヴィアタンは防御魔法を模倣し、展開した。薔薇槍は彼の想像を超えた鋭さを持ち、容易く防御魔法を粉砕した。
(おかしいね。魔法の開祖の魔法を防いだ座天使級魔法使いの技術なんだけど…)
地面に突き刺さる薔薇槍は、血の根を生やし、異なる植生を生み出す。槍の薔薇が散った。散り際までも美しく、戦神の心を魅了する。同時に、地底を走る異様な気配を感じた。どくどくと心臓が跳ねるような生物の音を立て、血の根が愷飧の檻の地底を覆った瞬間、地下から槍を生成した。地下からの串刺しにレヴィアタンは悲痛な叫び声をあげた。
(二段階攻撃か。器用なことをする)
高低差の状況を覆さないことには勝機はないと考えたレヴィアタンは浮遊の能力を模倣し、イニティウムのいる宙まで飛んでいく。
「私の涙は高いわよ」
黄金の瞳から一滴の雫が零れた。無職の涙ではない。黄金の涙は変容し、黄金がかかる薄茶の大輪の薔薇を咲かせる。のし上がるよりも、一滴が地に落ちる方が速い。異種族の薔薇が触れた瞬間、相乗効果が働いた。金の巨大な針が交錯し、高く高く積み重なって、浮遊していた戦神の肉体を貫いて拘束した。
「剣弁高芯咲典録」
強固な針。灼かれる痛み。貫通した箇所を通じて、イニティウムの血が体内に流れ込んでくる。戦神の血に混じることで発動する洗脳効果に、レヴィアタンは眉をしかめた。彼はもう一度、見上げる。
黄金の瞳と髪。思い浮かぶ金甌無欠の言葉。今まで交戦してきた誰よりも美しさに厳しい。野蛮な戦場に、大輪の薔薇を咲かす美への執着。どこか傲慢な立ち振る舞いと、高飛車な態度。
(これだから、嫌なんだよ。アザトース神の血を最も濃く受け継いだ人間)
「いつまでそうしてるつもりかしら?」
『まだっ…十分も経ってないだろう?』
「あの程度では、私を満足させてくれなかったの。姉の失態は妹が解決するしかないでしょう?
ほら、ラウルスを超えたように、私を超えてみなさいな」
イニティウムの挑発に、戦神の矜持が疼く。レヴィアタンは権能を使用し、槍を模倣した。握った瞬間、薔薇の拘束具を切断した。黄金の花弁が散って、檻の地底を覆いつくす。刃こぼれした槍を見て、レヴィアタンは新たな武器を模倣する。雷を帯びた片手剣だ。細身な刃と鋭い切っ先。鍔は三鈷杵の意匠が施されている。一メートルと五十はありそうな、レイピアの中では大振りだ。
イニティウムはレイピアと聞いて、一人と一柱の使い手を思い出す。一人は、イニティウム自らの手で武器を精錬し、最高傑作を手渡した唯一尊敬できる御仁。そして、もう一柱は原初神三十二柱に数えられる剛勇の釈。精悍な顔つきのその神は、前線を好んでいた。その神のために造られた神器の造形が、レヴィアタンが模倣したレイピアと酷似する。神器から漏れ出る雷の覇気も、過去の印象と変わらない。だが、
「似てないわね。インドラ様の破滅的な姿を表せていないわ」
拍子抜けの評価。最適を選んだレヴィアタンの評価に、イニティウムは美の観点を用いた。
「あなた、権能の完全性に随分と執着しているじゃない」
『君だって考えたことはあるはずだ。能力に囚われない無条件下での発動と、不干渉性。それさえ実現できれば、いつだって理想を実現できる。
完全性に、発現者の境遇が加わり、感情での新たな条件と制約が生まれてしまう。あのラウルスだって、その運命は抗えなかった』
「つまり、完全性を持つべきだと言いたいのかしら?」
イニティウムは首を傾げた。うんうんと唸り、納得いかないのか見下した。
「それって、あまりにも芸がないのではなくて?」
黄金の瞳が自信に満ちた光を宿す。
「あなたの理想は宇宙の頂点に君臨することも夢ではない。とても比類ない目標。けれど、始めから完全無欠の絵なんて見てて飽きるわよ。絵画というのは、その存在と作者がいてこそ本来の魅力を引き出すの。知っていて?
白紙のキャンバスに、一本の線を引き、絵画を完成させる。その絵画は誰でも描けると非難されてしまうけれど、著名な作者が描いたと知れば、価値は膨れ上がる。なぜ、そんなことが起こりえると思う?
それは作者の生き様に、人々は感化されるのよ。貧相な暮らしの中、負の連鎖の中、恋人に裏切られる中、幻聴に苦しめられる中、様々な境遇を体験して尚、絵だけを追い求めた作者の生き様に、人々は狂っているの。
初めから完全性が保たれているのは苦労していない証拠。いわば、努力や己を奮い立たせる場面に出会っていない未熟な状態。始まりは完全でも、試練で打ち破られる。そんな嵐の中、歩き続けて、芸を磨き、自分なりの完全性を追い求める。制約を課そうが、原形でなくても、己の唯一無二を手に入れた。それこそが…真の完全性!
あらゆる美徳の終着点!」
イニティウムは自身の爪で腕を引っ掻き、血を垂らす。血は薄く変色し、花弁をつくった。放射状に花弁が並ぶ華やかなロゼット咲きの薔薇。マチェットに薔薇を宿し、紋様を浮かべる。
「あなたはどうかしらねぇ。模倣と利用を繰り返すだけの美しくない所業。花形を発明することこそ、嫡流の役目でしょう?」
僅かに憤るイニティウム。過程を重んじる彼女にとって、他人を模倣するレヴィアタンに良い印象を持っていない。他人が苦労して得た能力を、理不尽に模倣する彼の生き様を軽視している。
『人の人生を君が、勝手に評価するのはどうなんだい?』
「私はあなたの姉よ。姉の失態もだけれど、弟の愚行もここで収めなきゃ、私の美が失われてしまうわ」
黄金の瞳に薔薇の文様が映る。火の光を吸収する黄金の髪にも、薔薇の文様が咲き乱れ、畏怖の念を抱かせる美しさを顕現させる。どこか魔物的な美しさ。
レヴィアタンは、彼女の姿をよく知っている。彼女が天界宇宙でアザトース神の娘として過ごしていた大昔、美神として多くの神々を虜にし、戦争の火種となっていた。アザトース神の容貌をありのままに受け継ぎ、他人を無意識のうちに虜にする魔性の神。その風貌が、美神を放棄した今、再現した。本来ならば、レヴィアタンは好感を抱きはしない。だが、イニティウムは人間となり、地上宇宙に降り立ってすぐ、イアシオンという男に熱中し、血の滲む努力を積み、一層の魅力を増した。天然と努力が組み合わさった最強の魅力に、レヴィアタンは腹が立つ。同じ神として円卓で話していた古い記憶、レヴィアタンは美神を侮っていた。美貌など苦労しなければ朽ちる。人間に堕ちれば、尚更。だが、彼の思惑を捻じ曲げ、イニティウムは美神よりも燦燦とした魅惑の笑みを手に入れていた。
「アフロディーテであった私は虚像の愛をまき散らしていた。けれど、今の私は愛を知ったの。もっとも普通の神人類は私には不釣り合い。私が応えるべき愛は二つ。一つ、私に愛の存在を指南したイアシオン。二つ、私を真っ向から見定めた全てを見てくれた美しき御方。かの御方は、私に愛を与えてくださる唯一無二の存在。かの御方は、あなたの死を所望した。私も応えたい。
未熟だった美神から、円熟の人間になった私の活躍を」
イニティウムの紅潮した顔。その薔薇の瞳には一人の人間しか映っていない。権能の極致に至った戦神など、蒙昧な存在だと批判している。傲慢は変わらないが、それも魅力の一つに数えられる。
レヴィアタンは模倣した神器を構えた。
誰もを魅了する恐るべき潜在能力を秘めた次女。愛を知ることで、完成する魅力。
絶対的君臨現存”愛”―。
『超えたと思えば、新たな障壁が生まれる。飽きない宇宙だ。君の言った愛とやらが、どこまで通用するか…ぜひ、試してみよう』
「知れば後戻りはできない魅力を、うんと魅せてあげる!」
守護者イニティウム・テオスは、愛に長けた存在。象徴は薔薇。
曰く―、傾国の月季花
イニティウムの秘話
誕生日は三月十八日、
誕生星はデルタ・スクルプトーリスで、【美を見つめ、揺れる眼差し】を意味します。
ラウルスとは双子の妹という関係で、ラウルスと同様に才の発現日が誕生日となっています。
アフロディーテであった頃は悠々自適に過ごしており、目的もなくただ愛と美を誇示して、神々を夢中にさせていました。傍若無人な一面もあり、最もアザトース神の血を濃く引き継いだ元祖です。
イアシオンに見向きもされなかった過去から、努力を怠らず、また武や生態学も学び、今では人類随一の戦力になっています。その後、もう一度だけイアシオンにアプローチをかけようとしましたが、努力をして生まれ変わった自分を見て、イアシオンは愛人ではなく、師範だと解釈し、良好な関係を築こうとしていました。ですが、イアシオンは元祖(自分の弟妹達)に処刑されてしまいました。それは一族を導くものの定めであり、教育者であったイニティウムが否定できることではありませんでした。
イアシオンが教えてくれた、いつか来る大切な人の為にイニティウムは努力を続けています。
いつか、大切な人が自分の愛を受け止め、壊してくれることを願っています。
人類が地上に降り立った時から、神聖時代は幕を開けています。神聖時代が二万年、それから千年の七大一族と守護者主導の体制が続いています。
そうなると、イニティウムは二万と四百年程度、顔も知らない現れるかも分からない最愛を待ち望んでいました。そして、アフロディーテであった時も、無自覚に孤独を抱えています。
神と人間を合わせると、約五万年以上は孤独を払う最愛を、望んでいました。




