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NO PAIN~女神は眠りの中に~  作者: おじゃっち
8章 英傑の海
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64話後編 ヘシオドスの痛み

会議を終えて、オーシャンとバイラールは早速手合わせをしていた。滝のように流れる汗を拭う暇もなく、激闘する。手合わせはオーシャンが持ちかけたもの。

守護者(ガルディ)は十の海を統括する。自身の統括地は命を持って守り抜く。オーシャンは天地創造の海を守護する。セアが民の危機を脱してくれたものの領土は奪われた。度重なる失態を増やすわけにはいかないという決意を固めている。今回、精霊の海と和の海は避難所となり、大規模な結界が張られている。大戦中は座天使(ソロネ)級魔法使いのカトレアと木聯、元守護者(ガルディ)であるゼーユングファーが警備にあたってくれる。和の海を統括するバイラールはどこに配置されるか分からない。

それでも激戦区に放り出されることは確実。遠慮のなくなったオベロンは絶対嫌な手段を使う。それに備えて、研鑽を積んでいるのだ。

「ボクを強くするために、ゼーユングファーは視力を失った。偉大なる祖先の犠牲を無駄にするなんてしたくない」

「その気持ち、よくわかんぜ! 俺だって、あの二人を苦しめたクヴァレを皆殺しにしてえもんなぁ!」

拳が交わる。衝撃破で庭園が壊れる。

「おい」

手合わせに割って入ってきたのは、フォーセリアとゲニウスであった。その後ろには杠もいる。

「技術者は始祖の指導受けるんじゃないの?」

「イニティウムは神器の製造。ラウルスはライラの銃の特訓。プロエレはアストラにつきっきり。エドガーは、オベロンと策略を練ってる。手持ち無沙汰なんだ」

「然様。あの女子(おなご)にできて、妾ができぬのは恥」

「不仲であることは変わりません。ですが、セアの命令は絶対。共同戦線といきましょう」

三人の言葉に、二人は呆気にとられる。不意に笑みが溢れた。

「ははは! 三傑に言われるとは思わなかったな」

「杠殿にもね」

提案を快諾する。

「面白いことしてるな~」

五人の声とは違う低い声。敵かと身構えるが、その姿を見て、警戒を解いた。

目に残る鮮烈な赤髪。薄いサファイアの瞳の周りを赤く縁取る男。フードを被ったダンサーのような服。装飾が多いが、細身の体型。身長は高い。

「お久しぶりです。太陽はどうですか?」

「最高の気分だ。風も気持ちいいし、寝てるだけでいい牢獄も好きけど、動くのも悪くない」

この漢こそが先代殿堂者ギハラだ。セアの前任であり、能力の全貌は分かっていない。

「セアも酷いよね〜。明帝族の余が捕まらないようにするのはいいけど、神々の監獄に入れるんだもん。手荒すぎ。せっかく強くしてあげたのに~」

この発言の通り、彼の強さは自他共に認める。好奇心旺盛で、元祖について調べ上げるほどの探求心を持つ。守護者(ガルディ)の持つ元祖の情報源はギハラのものだ。

「手合わせ中?」

「はい」

「なら、余が相手してあげる」

ギハラは大きく伸びをする。手招きをした。戸惑っていると、ギハラは煽る。

「余はセアの兄であり、師匠。多くの元祖を相手にして生き残った。余を満足できないなら、勝てないよ」



「まだ、引きづってるの?」

「…オリゴ殿は私を…」

「オリゴがそう判断した。始まりの賢者を生かすことを優先すれば、勝てると判断した。あれの判断を活かすのは私の役目で、あれを慰めるのも長たる私の仕事だ」

バルコニーにつけられた格子に肘を置いて、寛いでいたセアの背後に、桂が現れた。この短時間で十数本もの煙草が灰と化している。無表情のセアに恐怖を覚える。勇気を振り絞って聞いた。

「あなたが最後の…」

「そうね、私は座天使(ソロネ)級魔法使い。でも、始まりの賢者に比べれば、ちっぽけな肩書きよ」

「馬鹿なことを言わないでください。オドの技術は高度なもの。考案者の私でさえ、オド魔法は制限されるというのに。魔法の開祖が血相を変えて襲ってきます。

なぜ、あんなことを…」

詰問に、セアは吸っていた煙草を灰皿に擦りつける。緑の目が向けられる。

「私は権能を選び、魔法を捨てた。魔法で負けようがどうだっていい。だけど、魔法だけを求められたのなら、必ず勝つ。魔法への情熱はないけど、勝利への情熱はある」

「…あなたは私よりも…才能がある」

「スタートラインに差があるのは当たり前。でも、継続に才能はいらない。一割の努力と、九割の楽しむ心。それだけあれば、いつかどんなに離れていた星に手は届く。

私はそうやって、舞いの名手になった」

セアの発言に、桂は深刻そうな顔をする。

「楽しむ心がなければ、どうすればいいでしょうか…」

「…キルケか」

「ええ、弟は私よりも優れている。そんな弟から逃げるように魔法に没頭した。気づけば、始まりの賢者と称されてしまった。楽しみなんて、これっぽっちもない。

双子とは恐ろしいものです。どちらかが優れていれば、どちらかは劣っている。私は劣っている方でいいと思っていましたが、弟はそれが許せないらしい。だから、魔法を選んだ。

とても苦しいです。争いの道具になるなら、魔法なんて作るべきではなかった!」

魔法への解像度は、人類で桂を上回る者はいない。その技術も該当する。しかし、桂は苦しそうにしている。魔法が破壊を喚ぶ傀儡にしたくないと、心の底から願っている。

心情を察したセアは、煙草を持ち、桂に火を出すようにお願いした。彼女の願いの意図が分からない。桂は小さな炎を出し、煙草に火をつけた。

「…ふぅ」

他人の炎で燃える灰。セアはリラックスしている。そして、桂に言った。

「こんな使い方は贅沢ね。でも、これは誰かを傷つけてるわけじゃない」

「!」

「魔法が争いの道具でないというなら、大戦で定義を押し付けなさい。勝てば、その定義は罷り通る。私がそうしたように…

いつまでも、ウェルテクスに隠してもらおうだなんて思ってないでしょう?」

セアに指摘されると、桂は驚愕する。セアは静かに煙草を吸っている。彼女の肩には宇宙というものが乗っている。莫大な緊張が波のように押し寄せて、ストレスで胃に穴が開きそうだ。なのに、自身よりも年上のものに臆することなく話す姿勢に、桂は胸を撃たれる。

「セアは立派ですね」

「そうか?」

「ええ、とても…臆病な私を激励してくださる。実現しますよ。セアにできたなら、私にもできるはず」

「ふっ、無礼だね」

「礼に私の名前をお教えしましょう。これはギハラ殿も知りませぬ」

ギハラという名前を聞いて、セアが反応する。

「マギ・カリオストロ。これが私の本当の名前。そして、”魔”の元祖になるはずだった名前です」

「キルケに、マギ。本当に魔法使いにぴったりの名前だ」

くすくすと笑って、セアは煙草を消す。月桂樹改め、マギはもう一つの疑問を尋ねる。

「あなたは、クリス殿の伴侶なのですか?」

「そうだよ」

「…」

「言いたいことは分かる。私を薄情だと思ってるでしょ。でもね、クリスは笑顔で逝ったらしい。なら、私は泣けない。

笑顔でいないといけないの。夫婦ってのはそういうもんだから」

「怒ってますね…」

「とってもね。今すぐにでもクヴァレ帝国へ殴り込みに行きたい。理性で抑えてる。でも、お前と話してて分かったよ。

私も定義を押し付けようと思う…他人の幸せを壊す権利はないけど、壊された意趣返しはしてもいい。

―ノーヴァは私が殺す」

怨念を吐いたセアはバルコニーを後にする。マギは彼女の後姿を目で追った。

一人で回廊を歩くセアは、孤独に暮れる。すぐに会いに行きたかったが、気持ちの整理ができず、快楽に縋ってしまった。マギは気づいていないが、少し八つ当たりをしていたのだ。憂さ晴らしが出来て、心が落ち着いている。そんな己を未熟だと、軽蔑する。

「はあ~い、愛しの人間ちゃん。相変わらず憎ったらしい顔してるわね」

突如としてセアの後ろに一翼の天使が現れる。白い布で顔の上半分を隠している。切れ目から覗く黄金の瞳。羽根の装飾。金の帯。白銀の髪を大層に靡かせる麗しい女姿の天使。セアは憂鬱そうな態度をする。

「異常でもあったのか? サンダルフォン」

「いいえ、あるとしても貴方の迎えくらいかしら」

天界宇宙(ゴットバース)への扉の鍵は私も所有している。命令外の行動は慎め」

セアの忠告に、天使サンダルフォンは床に下りる。セアよりも大きく、大柄のゲニウスやウェルテクスと同じくらいの身長だろうか。ずいっと近づいて、頬に手を添える。翼をセアの背後に回して、檻を作る。後ろにも前にもいけない直立不動のセアを見下ろした。

「イル神の名を人間の前で出すんじゃないわよ」

「!」

「いい? イル神が貴方を溺愛していたとしても、イル神の名声を落とすような真似しちゃいけないのよ。あなたなら、理解してると思ったけど見当違いだったかしら?」

「随分とご機嫌斜めだな。天使の本能で私は邪魔か?」

憤怒の念を起こすサンダルフォンを無表情で挑発するセア。琴線に触れたのか、サンダルフォンは彼女の首に手を回して、爪を立てる。天使とは思えない凶悪な感情を向ける。結膜が黒に変色して、黄金の角膜と瞳孔が際立つ。

「なぜ与えれたものを克服したのに返すの? 神々が負うべき痛みを横取りしてまで得たのに? あの方々はきっとお前が使うだろうと考えた上で譲ったのよ? 使えるものは何でも使わなきゃ勝てないと私たち天使に力説したお前の情熱は嘘だったの?」

「克服した結果、使うべきではないと判断した」

セアは袖を捲って、腕を見せた。その腕は火傷を負ったと思わせるように焼けただれて、血が滲んでいる。口角がひきつるサンダルフォンを横目に、セアは袖を戻す。

「私は虚弱体質なんだ。昔なら、少し歩くだけで血を吐いて失神していた。今は神気を体内に循環させ、常時権能を使い、肉体を強化してる。こうでもしなきゃ、私は意識を保つことすらままならない。原初神の権能を克服したと宣言した。各々の権能も使えることは事実だが、三十二の権能は私の肉体では耐えられない。あいつらには言わなかったが、私はそう長くない。

六百年の眠りを無駄にしたくない。だから、返す」

「…」

「分かったなら翼をどけろ。おちおち、伴侶を見届けられん」

サンダルフォンは翼を開示し、セアの道を解放した。白銀の髪をくるくると弄って、ため息をつく。

「神というのは隠し事が多いのね。私たちにも言ってくださらない」

「私が口止めしたからな」

セアは振り返って進む。

「待ってるわよ」

サンダルフォンの呼び掛けに、手を振る。

大々的な帰還を果たしたセアは、この侵略で命を落とした者の体が安置されている霊廟に向かう。霊廟と言っても、広間に死体を並べている即興の場だ。だが、高位の者は他とは違う所に安置されている。セアは木製の格子扉を開けて、狭い部屋に入る。

ここには太陽の光は入ってこない。室内に置かれた一つの棺桶。

「…」

セアは棺桶を覗く。その中には、彼女の夫であるクリスが横たわっていた。とても安らかな笑顔で眠っている。事の行き先を聞いていたが、助けることができなかった。深い悔恨に苛立ちが抑えられない。

「妻を差し置いて居眠りか。感心しないわね」

セアは棺桶の縁に座って、クリスの手を握る。いつも体温を分けて温めてくれた手が、酷く冷たい。擦過傷が多く、肉体の欠損が目立つ。

(いや、先に置いてったのは私の方か…)

セアは、クリスの頬をなぞる。

「ゲニウスから聞いたよ。太陽を超えたって。私を言い訳にしてくれたらしいな。本当に…立派な漢だ」

髪を弄んで、在りしの記憶を巡る。クリスに背を預けて戦っていた未熟な自分がよぎった。

誰かと共闘したのは、クリスが初めてだった。背中を預けたのも、クリスが最初。クリスは率先して前に立ち、一瞬で敵を薙ぎ倒していく。雄々しい姿に恐怖を覚えていた束の間には、心を奪われていた。

夜を共にした日。熱いと思った温もりが今では恋しい。力強く握るクリスは、驚くほど優しい顔をしていた。

共にいた夜が懐かしい。

(お前はくだらないと言っていた。本当は普通の努力で人の何倍もの成果を得られることに罪悪感があったんでしょう。他人が苦労した産物を、すぐに手にできるから。そんなことないよ。お前は、お前が思ってるよりも、そして誰よりも努力して強くなった。

くだらないなら、天賦を放棄するはず。でも、そうしなかった。横暴な見た目に反して、優しさに溢れた最高の漢だ…私が何百年と眠っていたのに、私の言葉を言い訳にしてくれた。ちゃんと覚えてくれていた…

そんなお前に惚れてたんだ。ちゃんと言えなかった。言ったら、お前が本気を出してくれないと思って…)

「私が無常じゃなくて霜であったなら、霜じゃなくて結晶であったなら、まだお前を暖められたのに。温度を分かち合えたのに。

なあ、クリス。私はお前がいない宇宙で絶対を演じられるかな。狂った自分を演じられるかな。

お前と同じように、誰かに生きる希望を与えられるかな…」

セアの頬に一筋の涙が伝う。泣かないと決めていたのに、自然に流れてしまう。号哭は許されない。こんな時クリスがいたら、嗚咽を拾って抱きしめてくれるのに、とセアは思ってしまう。

(私は存外脆い。お前に縋っていたんだと、いつも思うよ。一人で戦うことが怖い。でも、お前を害した愚図が生きる宇宙は、もっと怖い)

セアの目つきが豹変する。怨みに染まった醜くも、芯のある最強の目だ。

セアは顔を近づけ、クリスの額に合わせる。安らかに眠るクリスの寝顔を朗らかな笑みで笑う。

セアは心の中で願った。


―愛するものよ、今はどうか安らかに。


強ばっていたセアの表情は和らぐ。伴侶との再会を喜び、別れを嘆いて、感情が荒波のように押し寄せて去っていく。余韻に浸りたいという甘えが邪魔をしてくる。

「狂えと願うくせに、狂うなと願う。いかれた連中だ。でも、もう遅い。私は地上に降りた時から、父に剣を向けた時から狂ってくる」

狂えば狂うほどに、舞いが昇華していく。舞踊を戦いに持ち込むなどおかしくはあるが、私なら許してもらえる。私なら醜態も美となる。

歴戦の最強や猛者には経験で劣る。だけど、魅せ方では人類で一番だと自負している。厚かましいと思えるくらいが、ちょうどいい。傲慢でいい。

弱い自分にさようならを言う。その勇気も必要なんだ。そして、強くなった自分を想像する。実現する才能と技量。さよならとようこそを言う勇気を掴んだ。脚光を浴びて、誰も彼もを虜にする快感。宇宙が私を中心に回っている時間を作る。その意気込み。

全部手に入れた。最高の手本を見てきたから、どんな強敵にも立ち向かえる。

セアは、ある神の姿を見る。

「教えてやるよ。お前の脅威になりえる人間がいるってことを…私が、全身全霊で」

セアは木製の格子扉を開ける。

開けた瞬間に、臆病な自分を封じた。清く在りたかった夢を捨てて、演技だけの笑みを造った。

もう、大切なものが壊されないように。

無駄を捨て、意味を増やすために。

セア・アぺイロンは過去の境界を踏み越え、未来に舵を切る。


三日後、双方の準備が整った。永遠なる神秘レース・アルカーナ・アエテルタニスの中央に、武装した序列者が集まる。彼らは静かに、気づかれぬように磨いた刃を心に忍ばせる。

「早いね」

一番最後に来たのは、セアだった。彼女は三日間奔走して、大戦の準備をしていた。行き先も、内容も知らない。ただ彼女が纏っているどす黒いオーラがさらに深く濃く淀んでいる。一体、何があったのだろう。見えないベールに包まれたセアは指輪を嵌めて、簪で髪を結う。

「その簪…」

ゲニウスは簪に目を向ける。それは以前、セアに贈ったものだ。

「願掛け」

役者がそろった。大戦への参加を歴史に刻む。

セアは指輪に口づけをして、祈る。アストラがハンマーを地面に叩きつけ、空間転移を発動させた。

革命と保身を求める序列者が宇宙の海に、踏み入る。そこに待つ元祖と神。殿堂者も倣い、最前線に降り立つ。

これから起こる凄惨な戦いを覚悟して、双方は武器を手に取る。今までの人生で積み上げてきたものを駆使して、夢を成し遂げる。複雑に入り組んだ道。敵と味方の道が交錯しても、向かう先は同じ。だからこそ、戦うのだ。

己の欲に従い、存在を守るために。必ずしも幸せを望んでいるわけではない。ただ、因果の相手が幸せにならないようにする。

黝い痣を与える。目的はそれだけで、因果と戦うのみ。

「来たね」

英傑の海で宿敵を待ち望むロワが言った。彼の目に悠然と歩んでくるゲニウスが映る。

「選んでしまいましたね」

「ああ、とっても愚かで効率的な生き方だ。一片の悔いと…」

「因果が残らぬ、戦いを…」

孤高に響く開戦表明。二人の王が衝突する。衝動は下の者に伝わる。

銀河を巻き込み、宇宙観で殴殺される大戦が、ついに幕を上げる。

恐れた分だけ、前へ進む。積み上げてきたものが崩れる悲惨が当たり前に起こることを知っている。それすらも余興で、宇宙の星を盛り上げていけばいい。そう思うだけで、強くなれる。


のち、神々は一ヶ月戦い抜いた人類を讃え、大戦をこう称した。

―ヘシオドス、と。


セアとクリスの秘話

ギハラとはぐれて迷子になっていたセアに、魔獣が襲いかかって来た時、ちょうど近くで仕事をしていたクリスが駆けつけて倒してくれました。

この時、セアはまだ十二歳です。原初一族の長に就任したすぐの頃です。セアは自覚していませんが、この時に一目惚れしていました。

お互い誰か分からず、その場は軽い挨拶だけで終わりましたが、後にプトレマイオス会議で再開を果たします。会議ではゲニウスなどいましたが、少女が戦場に立つことを許さないと一蹴。

そんな時に後見人としてクリスが立候補。そこから二年間生活を共にします。セアは大人びていましたが、心は未発達です。対等に接してくれて、大切に扱ってくれる紳士的な面にときめくのも仕方ありません。

絶対に守ってくれる信頼感からセアはクリスに恋心を自覚していきます。クリスも最強になるために切磋琢磨するセアを見て、愛を覚えます。

セアはいずれ来る終わりを考えて気持ちを伝えず、クリスも別れが来ることを知っていて打ち明けずにいました。両片思いの二人は大人の関係を維持した不器用な間柄です。


最後の別れに命盟を結びました

"俺様の最期は来るんじゃねえ"と…

セアの前では絶対でいたかった誇りと、セアを悲しませないようにするために結びました。

クリスは自分の死を目の当たりにしたセアが暴走することを察していました。それは彼女の存在意義を彼女自身が壊すことに繋がると考え、竜の決意を示しました。

クリスの最期に天使を送ったのは完全にセアの意思ではありません。セアは命盟を破ってでも助けようとしましたが、始祖に止められました。

イニティウムやラウルスは、クリスと面識があり、少しの情は持っています。だからこそ、尊重した。

セアは帰還の舞踊を納めるための舞台に立つために、クリスを諦めたことで、蝶と多くの人類を救う功績を納めました。

この功績で、セアの中でクリスは絶対の存在と位置づけられています。


伴侶の最後を見たクリスと、伴侶の最期を見届けられなかったセア。

他者から好意を向けられ中立であるセアはクリスを選べず、皆に信頼されているクリスは複雑な環境で誰からも選ばれない。

クリスの前では誰でもない少女でいられたセア。

セアの前では、感情を曝すことができたクリス。

初恋は結ばれない。

けれど、二人だけの時間は穏やかだったそうです。

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