56話転 錘離の痛み
―ゲニウス・ニードホック、初めての覚醒は臣下の死であった
神聖時代が終焉する約二十年ほど前に生を受けたゲニウス・ニードホック。後に魔法界を牽引する魔塔主となる双子の弟にウェルテクス・マゴを持つ。竜族を構成する四つの家門青龍の正当な後継者を証明する竜名を宿したため、青龍の嫡子となる。それだけでなく、ゲニウスの母であるオブリヴィオン・アモルは竜族を束ねる竜王であり、六代守護者を務めた、最強の紅帝族と謳われた最強である。そして、叔父にあたるクリスチャン・ローゼンクロイツも四代守護者であり、青棟梁を兼任していた。まさに、王になるべくして生まれた御子。それがゲニウスだった。
だが、当時の地上宇宙はクヴァレ帝国の元祖により、紅魔族が覇権を握っていた。いつ、七大一族が侵略に合ってもおかしくない戦乱の世。それでも、ゲニウスは竜族の者から一身に愛を受け、育つ。そんな普遍的な生活に不穏な影が落ちる。
それはゲニウスが七歳の頃だった。
(みんな、忙しいのかな…)
ゲニウスがいつものごとく、勉学と鍛錬に一人で明け暮れていると、一族の者が忙しなく建物を行き来している。叔父や母の姿も見ていない。普段は別行動している弟のウェルテクスも、その異常さに気づいて一緒にいた。
「なにかあったのかな…」
「わからないけど、子供は大人しくしておくべきだよ」
「…そうだね」
二人は一日一緒に行動し、夜を共にした。だが、その夜、従者にたたき起こされた。
「起きてくださいませ」
「ぅ、ん…」
まだまだ、暗い夜が続いている時間。蝋燭片手に神妙な面持ちの従者。それを見て、眠気は一瞬にして消え、嫌な予感がした。従者に案内されるがままに到着した大広間には、重鎮らが俯いたまま話そうとはしない。重鎮らの列で隠されているが、大広間には数えきれない死体が並べられ、弔いを待っていた。奥に飾られた祭壇と棺桶。ウェルテクスの手を引いて、恐る恐る棺桶の中を覗く。そこには愛した母オブリヴィオンが眠っていた。花で埋め尽くされていたが、包帯だらけの上半身と、無くなった下半身。そして、部屋に漂う死の匂い。頭の中が真っ白になった。聡いゲニウスとウェルテクスは、母が亡くなったことを悟った。そして、ここにある死体全てがクヴァレ帝国の軍勢の侵略を妨害するために命を張った誇りある同胞だということも。
「ゲニウス。ウェルテクス」
呆然と立ち尽くしていると、叔父であるクリスチャンが名前を呼ぶ。そして、二人を抱きしめて、オブリヴィオンに向ける。
「おめえらの母上は最後まで戦い抜いた最高の戦士だ。最後に顔拝んで、ばいばいしろ」
「どうするの?」
不安がっていたウェルテクスが、クリスチャンに尋ねた。
「火葬だ。朱雀の炎で傷を癒して、次の人生がいいものであるように祈るんだ」
彼らの後ろで待機していた朱雀朱棟梁雀宇風羽が視線を送る。
「おう、やっちまってくれ」
彼女はウェルテクスの指示を受けると、炎を顕現させて、死体に全て火をつける。暗雲が立ち込める夜空に舞う灰と炎の揺らめき。ウェルテクスはクリスチャンに抱き着いて離れようとしない。
「叔父上、亡くなった者の死はどうすれば報われますか…」
ゲニウスの言葉に、クリスチャンは口ごもった。
「私は竜王として期待されていますが、臣下を守れる力がない。どうすれば、母の命は無駄にならなかったといえますか?」
彼の頬に一筋の涙が流れたことを見て、彼の頭をがしがしと撫でるクリスチャン。それに思わず、目を向ける。
「お前が母と同じように強くなればいい。そして、母の野望を実現しろ」
「母の野望…」
「―クヴァレ帝国の失墜」
初めて明かされた自身の母の野望に、ゲニウスは言葉を失った。だが、その野望は紅帝族最強を謳った最強が持つには相応しいものだ。だからこそ、ゲニウスはその野望が無知なる自分にも相応しいことを悟った。
「叔父上、神聖時代が終わるまでの間、竜王は任せてもいいですか…」
「あ?」
「私が実現します。無念に散った竜族の魂を糧に、紅帝族を脅威から救います」
―その一言が紅帝族の運命を変える大きな狼煙だった
それからのゲニウスの行動は異常だった。たった七歳で青棟梁の座を引き継ぎ、外交官としての才能を開花させる。七大一族との利害による関係構築を図る。当時、七大一族の覇権を握っていた原初一族と交渉の末、クヴァレ帝国の打倒に賛成させたことを皮切りに、鬼族・精霊族・妖精族・海族とも同様の国交を樹立。彼が十五歳になる頃にはクヴァレ帝国の雲行きが怪しいことに気づき、失墜計画に本腰を入れる。
「七大一族である夜の一族ですが、クヴァレ帝国の監視下に置かれている。その要因は元祖の長兄ノーヴァか。諜報員からの情報で彼がなにか企んでいるのは明白。ノーヴァが死ねば、クヴァレ帝国は内乱が勃発し、崩壊する。そして元祖同士の殺し合いの末、大幅な戦力が失われる。それを機に私たちは動く」
壁に張られた情報の数々を見て、ゲニウスは構想を確実なものへと修正していく。
「妖精王の話では五年以内には神聖時代は終わる。愚弟も面白い者を拾ったと言ってきましたし、クヴァレ帝国魔法機関に代わる魔塔の設立を考え始めた頃合いでしょうか。原初一族との国交もやっと意味を成してきますね。海族と鬼族の反応も上々。クヴァレ帝国は守護者という存在を忘れている。脆弱なものだと侮蔑しているのか。戦場では油断が命取りになるんですがね。傲慢な…
さて、そろそろ叔父上に竜王の座を譲っていただきますかね。竜王の立場で夜の一族に接触を…八代目にして守護者は生まれ変わる。もう誰にも舐められない最強の軍団にしてやりますよ」
ゲニウスの計画通り、その五年後、ノーヴァが眠りについたことでクヴァレ帝国では内乱が勃発。
元祖同士が殺し合う悲惨な元祖大戦が引き起こされ、クヴァレ帝国はみるみるうちに衰退していった。その機に乗じて、七大一族が革命を起こす。
八代守護者は汚名返上を果たし、クヴァレ帝国の元祖に、その強さを認識させた革命家となる。
しかし、ゲニウスの躍動は終わらない。神殺しの海を除く九つの海の主導権を整理。各地に住んでいた紅帝族を尊重しつつ、守護者という特権階級制度を公表し、象徴とした。約千年の平和の礎を築いたことで、ゲニウスは人類最強の王と謳われるようになる。
だが、ゲニウスは鍛錬を続け、人類初の忘却状態を意識的に抉じ開ける偉業を介す。
(懐かしい記憶が蘇りますね。正直、母や民を殺したクヴァレ帝国は憎くてたまらない。が、あれが無ければ私も本気にはならなかったでしょうし、愚弟が魔法の道に進むことにも反対していたでしょう。人生の岐路を見極めたクヴァレ帝国には感謝しています。だから、私の手で最強の元祖を屠る!)
ゲニウスが、ロワを圧倒したことで、過去の記憶が掘り起こされる。それは忌々しい記憶ではあるが、その過去が無ければ、今、ゲニウスはこの立場にはいない。それを再認識した彼は嬉しそうに微笑むと同時に、ロワを絶対に殺さなければならない好敵手として認めた。
「!」
その直後に、ゲニウスの遮断されていた視界が開放される。そして、黒に染まっていた左腕が元の色に戻り、感覚遮断も解かれた。
「この程度ですか。人類始まりの王」
少しだけ失望の念が含まれた言葉をゲニウスが呟く。その途端、大きな音がしたため、ゲニウスは音源に目を向ける。それは瓦礫の下から力尽くで起き上がったロワだった。彼は額から流血しているが、目が眩むほどの赫を瞳から放っている。
「まさか、オレ様が一瞬倒れたから”執行”の我儘が解かれたなんて思ってないよね?」
「…違うのですか」
「オレ様の我儘は永続的だ。オレ様が死んでも、我儘は消えない。君に”執行”した我儘はオレ様の意思で解除した」
「なぜ、そんなことを…」
「君と本気で闘ってみたい。それがオレ様の我儘」
「まるで今までが本気じゃないと言わんばかりの言葉ですね」
ゲニウスが睨むと、ロワは声を上げて笑った。
「あっはっは!! 君が言えたことじゃないでしょ。君はまだ手札が残ってるんでしょ?」
そう言ったロワの手にはやはり聖剣が握られている。彼は前髪をかきあげ、額の血で髪を整える。
「君を見てると分かるよ。本気が出せない理由。恐いんでしょ? 本気を出すのが」
真顔で見つめるロワから、目をそらすことはないがゲニウスは口をつぐむ。
「元祖大戦の後の大革命、オレ様は君が本気を出した所を間接的にだけど見た。理性の箍は外れていなかったにも関わらず、君は二つの海の文明を一度滅ぼした。規格外の破壊力は民を傷つける。それは王としての君は不本意な状況。王の君らしい理由だね」
「よく…お分かりで…」
「うん。でもね、これは戦争。人類の統治者の奪い合い。だから、そんなひ弱な理由で、民の為に本気を出せないような奴は未来の統治者には相応しくない。ある程度の犠牲を覚悟できない綺麗事を並べる奴はいらない」
「それが貴殿の…皇帝としての、覚悟ですか…一つ聞きたい。貴殿は兄姉を踏み台にしてでも、王であり続けたいのですか? 不名誉と言われても…」
ゲニウスの問いかけに、ロワは当然だろうと鼻で笑う。
「兄ちゃんや姉ちゃんが楽しく暮らせる帝国があるなら、オレ様は皇帝で、帝国の平穏を守り続ける。たとえ、同じ人類を迫害しても、それが兄の頼みなら。オレ様はやってのけるよ、倫理の間違いだとしても民を守るためにね」
ロワは聖剣を空に向けて、大きく掲げる。
「蝶を知ってるでしょ。オレ様の妹分的な存在。オレ様達は七洋に育てられた。そして、父であるアザトースの気まぐれで神器を授けられた。この聖剣もそうだ」
「それが神器ですか。神器には特出した能力が付与されています。ですが、貴殿の神器からはなにも感じ取れない」
「そうだよ。オレ様の神器”聖剣ルルイエ”はアザトースの一部を素材として創られた。でも、それだけ。神器特有の能力は”ない”!
神器と言われている耐久性の高いだけの武器だ」
ロワは平然としているが、それは普通ではありえない。戦いにおいて、手札は大いに限る。手札の一つの要素として、武器が挙げられる。耐久・攻撃力だけでなく、武器自体に能力が付与されたものは価値が高い。そして、必然的に神器には能力が付与されている。だが、ロワの神器ルルイエにはそれがないという。つまり、彼は皇帝として臨んだ戦いで、武器一つで対処したということになる。その事実に、ゲニウスはロワという男の凄さを再認識した。
そして、ロワが宣言する。
「オレ様が最強であると証明してあげる。
―”神の存在証明”!」
宣言し終わると、目の前からロワが消えた。その出来事に、ゲニウスは取り乱すことなく、気配を探る。
(透過。でも、気配まで消えたわけじゃない。そんな中途半端なことをロワがしますか?)
ロワと戦って、ゲニウスは彼の性格を推測する。彼なら姿だけでなく、気配も隠すはずとゲニウスは不審がった。彼はあらゆる手段に対応できるように警戒心を高めていく。だが、ゲニウスはロワが接近戦を始めに仕掛けてくると思っていたが、その考えは異変によって掻き消された。
その異変とは、空模様が急変したのだ。暗雲が空を覆い、大気から温度が奪われていく。その直後に突風が吹き荒れる。
(まさか、台風じゃないですよね)
ゲニウスの憶測通り、始まりの異変とは台風だった。突風と雷雨が容赦なく、ゲニウスを襲う。光速で降り注ぐ大規模な落雷を避けるが、如何せん強風により、立っていることもままならない。雷雨が止んだと思えば、次は砂嵐が巻き起こる。瓦礫を含んだ凶暴性の高い砂嵐からゲニウスは急いで距離を取る。が、砂嵐は止み、今度は視界を悪くする霧が発生する。
(台風に、雷に、塵旋風、霧…気象現象が間髪入れずに発生している。何が来る?)
視界の悪い霧の中、ゲニウスは思ったように動けない。彼は背後から異様な気配を感じ取った。急いで振り返ると、宙に浮いたロワがいた。彼は口を開けている。
(牙?)
人間とは思えないような、獰猛な獣の牙が光っているのが、目に映ったのか動きが止まった。いや、敵を前にして驚きのあまり動かない愚行をゲニウスはしない。ゲニウスの意思に反したまま、固まって動けない。状況の整理が追いつかないゲニウスを見たロワは、彼の耳元で囁く。
「抵抗しても無駄だよ」
その言葉を聞いたゲニウスが鋭く冷たい眼光で睨む。それを無視して、ロワは獰猛な牙でゲニウスの喉元を嚙みきった。そして、動けないゲニウスを思いっきり蹴る。ゲニウスは噛みきられた喉に手を当てる。流血が止まらない。気管支に影響があるのか、ゲニウスの息が荒くなる。
「苦しそうだね」
意思のこもっていない言葉をロワにかけられる。彼の言う通り、ゲニウスの状態はあまり良くない。下手をすれば出血死か呼吸不全に陥るだろう。そんな状況で、ゲニウスは笑い、毅然とした態度で、ロワの言葉を否定した。
「たかがこの程度、傷のうちには入りませんよ」
「へえ、じゃあ…もっと強く殺っちゃうよ!!」
ロワがもう一度、目の前から消えた。二度目は動揺しない。ゲニウスは彼がどこに消えたのか、見当がついたからだ。敵の場所と対処が理解できたゲニウスのすべきことは、ただひとつ。ロワの行う異次元かつ理不尽で、多様な攻撃に順応するだけ。目的が定まったゲニウスは再度忘却状態を抉じ開ける。時間の流れが遅く感じ、ゲニウスの周りで起こる物体の移動など、あらゆるものがゆっくりと見える。そして異次元の視野の広さと、空間把握能力を忘却状態で得ているのだ。それだけでなく、今のゲニウスは皮膚感覚にも長けており、肌から感じる温度の変化と粒サイズの違和感も見つけることができる。また、彼はロワとの死闘を通して、聴覚も異次元に進化させている。最高に練れた身体能力だけで攻撃を素早く解析する。
(上空から氷のようなものがぶつかる音がします。かなり小さい。寒風が吹き始めた。なるほど…)
「ブリザードですか」
ロワの仕掛ける異変を脅威の索敵能力で判明させた。彼の読み通り、上空から雹が降り始めたかと思うと、激しい冷風が吹き荒れる。視界が悪くなる。雹が地面に落ちて溶ける寸前で、雹が地面に根を張り、一面に氷華を咲かせる。
「…これは」
どうでもいいと思っていたが、ゲニウスは一瞬、その氷華に目を向けてしまった。恐らく、誘惑の効果が付与された魔性の華だろう。それだけでなく、氷華を中心に地面と壁などの物物を凍結させていく。放っておくには危ないと判断したゲニウスは氷華を蹴って、散らせた。異変を一つ壊していくと、瓦礫の素材である石が礫となり、飛んでくる。また、それだけでなく、ロワに殺されたゲニウスの侍従から血が生き物のように蠢いた。大量の血が結合して、空を覆うほどの槍の形になる。槍は血そのものであるため、鮮明な赤である。横方向から大量の石礫、上から大量の血の槍が降り注いだ。それに対して、ゲニウスは横に逸れるように動く。途中の石礫の細々としつつも、刺されるような痛みに耐える。そうしてでも、上から降り注ぐ血の槍の範囲からできるだけ離れるようにしたいのだ。
「っ…」
高速で移動したゲニウスだったが、右半分の体に血の槍を受けてしまった。痛みはかなり大きいが、その痛みよりも危険なものをゲニウスは身をもって体感した。
「即効性の毒…痙攣と吐き気…意識障害」
血の槍に付着した毒で、ゲニウスは膝をついて倒れた。その直後、絶好の機会だと判断して、潜んでいたロワが、ゲニウスの背後を取った。その手には聖剣ルルイエが輝いており、彼は無言で斬りかかる。
「待っていましたよ」
背後を取ったにも関わらず、ロワの斬撃は受け流され、いつの間にか立ち上がっていたゲニウスに背後を取られてしまう。しかし、背後を取られようが、ロワは予備動作無しに次の一閃を振るう。その一閃をゲニウスは拳で殴り、相殺した。彼を見たロワは違和感を覚えて、距離を取った。
「生憎ですが、私は命を狙われる立場。毒には馴れっこです」
「わざとか。やっぱ、君狡賢いよ」
「お褒めいただき光栄です。貴殿の隠密も素晴らしいですよ。直前になるまで反応できなかった」
「嫌み?」
「いえ、ただ貴殿の隠密場所が解明できただけです。そして、貴殿のやり口もね」
ゲニウスの言葉に、ロワは眉をひそめる。
「貴殿が逃げた先は、平行世界、もしくは多次元空間でしょうか。そして逃げた理由は限りなく、私が弱ったか油断したタイミングを作りたかったからでしょうか。そのため、多様な攻撃法を瞬時に編み出して、私の対応を鈍らせ、止めは貴殿自ら刺したかった。そうとなれば簡単ですよ。私があえて弱ったふりをして、貴殿を誘い出す駒になればいいだけですから」
「へえ、空間の発想なんてよくできたね」
ロワの探りに、ゲニウスは得意げな顔をして答える。
「空間技術において、紅帝族にはクヴァレ帝国を凌ぐ守護者がいますので」
素っ気ない態度で、ロワは天を指さす。
「君の解釈は正しい。でも、誤解を訂正させて。オレ様が自らの手で君を屠りたい理由は、オレ様が最強の王だと証明するためだ!」
その直後に、ロワが指差している上空から灼熱に燃える隕石が出現する。それは到底回避できるものでなく、もし回避してしまえば、竜族全体に被害が及ぶ。それがロワの狙い。それを考慮してか、ゲニウスは回避の思考を消した。その代わり、彼は一つの思考を生む。それは手札を使い、隕石を消滅させること。
「盤古開天元始天尊”麒麟”」
ゲニウスの声が響く。その声は隕石が落下する轟音に掻き消されるが、次の瞬間、隕石は跡形もなく消滅した。
「!?」
その光景に、ロワは驚愕して言葉が出ない。だが、彼の眼に映るゲニウスが全ての要因であると確信していた。否、彼しかできない。ゲニウスからは半透明の金色に輝く角が現れ、全身が龍の鱗で覆われている。そして、ゲニウスから溢れる偉大なるオーラに、ロワは少なからず侵される。
「それが、君の竜名。青龍が元祖に代わって受け継ぐ至宝…」
ロワが息をのんで、ゲニウスを凝視した。神々しい見た目とオーラから、目が離せない。縦長の瞳孔の琥珀の瞳。まるで龍に睨まれているような感覚をロワは味わうそんな彼に、ゲニウスが言う。
「竜族の棟梁には人としての名と、竜としての名が宿ります。それが竜名。武力を重んじ、名を尊ぶことが、私たち竜族が七大一族の理由でもある。ですが、私に宿る竜名の中でも特別中の特別。この名は神の力”権能”と同類であり、その覚醒も”権能”と同類」
「…まさか!」
ゲニウスの言わんとしたことを察して、ロワは興奮した。
「龍が神となる唯一無二の至宝。
―名を”麒麟”」
ゲニウスの琥珀の瞳に、金色が加わり、神々しい光を宿す。
「―祝福を齎す」




