51話 アルテミシオンの痛み
アルテミシオンの戦いもペルシア戦争の1つであり、テルモピュライと平行して起こった戦闘です。陸戦がテルモピュライ、海戦がアルテミシオンであ。アルテミシオンでは、アケメネス朝ペルシアの圧倒的数を相手取り、互角に戦ったとされています。
「兄さん」
戦場の中心に立ち、深く呼吸する木聯にタチアオイが近づいてくる。おちゃらけでいつも場を笑いで和ませる彼女だが、大層ご立腹のようである。
「タチアオイ」
木聯が彼女の名を呼ぶと、彼女は木聯の頬を平手打ちする。その音が戦場に響く。叩かれた頬が赤く腫れる。タチアオイの平手打ちに木聯は呆然と彼女を見つめた。彼女の表情は、怒りと悲しみと、安堵と恨みとが、複雑に混ざったものだった。
「二度と自由に動くな!!!」
彼女は木聯の骨折した手に治癒魔法を施し、骨折を完治させた。
「アロエの仇言うて、兄さんも死んでしもうたら…わいら三人で決めた約束覚えてるか?」
タチアオイの剣幕に、しどろもどろな対応で木聯は答える。
「覚えとる…」
「せやったら、これ以上心配させんといて…」
タチアオイの悲痛な呻き声に、木聯は無言で返した。そんな二人の気まずい空気と、兄妹の微かな愛情がに充満する中、一つの轟音がそれを掻き消す。二人は驚かない。全て想定内のことだ。ゆっくりと、険しい表情を張り付け、轟音を見る。だが、その轟音の有様を目にすると、彼らの顔が強ばる。
朽ちた翅から飛散する液体。水蒸気のように目に見えなくとも、ベルゼブブ神の周りが揺れて見えるので、それがあるのだと判断する。だが、朽ちた翅を一回羽ばたかせると、葉脈から銀白色に輝く液体が放出され、ベルゼブブの体にある傷に侵入する。そして傷が塞がっていく。完治すると液体が神を取り巻く。それが一滴地面に落ちると、音と煙を立てて溶け始めた。
「あの液体…」
「ああ、無支奇やな」
一部始終を見たタチアオイが液体の正体を目配せで提示すると、彼女の提示に賛同した木聯は、彼女と同じ意見を示す。
「魔法石が独自の環境を長年晒されることで進化した魔法鉱石から、極稀に採掘される自然界が生み出した液体である”無支奇”」
「市場に出回っている数はごく少量。せやけど、一滴でも飲めば難病すらも治すことができる夢のような万能薬。せやけど、服用しすぎると、その身に地獄の苦痛が生まれ、死に至る死神の薬。
あんさんに相応しいもんちゃいますか?
七洋、慈悲と懊悩の神ベルゼブブ」
木聯が鋭い眼光でベルゼブブを睨む。その答えに、ベルゼブブは不敵に笑った。
「久方ぶりだな。その名を人間の口から聞いたのは」
かの神から発せられる声は前と同様に冷徹で、骨の髄まで凍ってしまうほどの無意識な殺意がこめられている。直に受けている木聯とタチアオイは、腹の底から出る恐怖を必死に押しとどめて、毅然とした態度を取り続ける。
「セア・アぺイロンが死して約593年。あの化け物から解放されたかと思えば、地上宇宙全土には結界が張り巡らされた。神をも縛る結界により、余らは衰微を辿った。人間は神の脅威を忘れ去った」
「だから?」
ベルゼブブの言葉が理解できず、怪訝な面持ちで指摘したのも束の間、木聯の視界全てが占領される。彼の視界にはベルゼブブが映り、いつの間にか急接近していた。開いた口が塞がらないほど驚きつつも、木聯は反射的に体を仰け反らせて、飛んでくる拳を回避する。木聯を庇うように、タチアオイが掌をベルゼブブ神に向けて、簡潔な詠唱を結ぶ。
「聖母よ其の娘を護り給え」
彼女の向けた掌からは白々と、神々しい輝きを放つ光の鎖が出現して、ベルゼブブの腕を拘束する。鎖を媒介としてタチアオイの聖力が、ベルゼブブの腕に纏う。聖力の包容量が限界に達した瞬間、拘束された腕が爆発する。爆撃の煙幕に紛れて、木聯が銃を十徳武器魔法で構築し、弾丸6発分を正確に撃つ。
「控えよ」
煙幕の中から、高圧的な言葉が聞こえる。それに腹の底から恐怖を抱いた二人は、それに逆らうことなく、後退する。
(なんや!? 前とは違う神を相手しとるみたいや!)
タチアオイが自身の無意識な行動から、目の前の敵の変貌ぶりを再度実感する。前回の襲撃でも苦戦を強いられていたことを思い出し、過去と今のベルゼブブを比較してみる。有能な彼女なら、その変化を理解し、その残酷な影響を一瞬で悟った。
「タチアオイ、お前はここで下りてええで」
そんな妹の考えを見越した木聯が声をかけた。
「あれ見て絶望するんなら、この先の戦いもお前には酷や。帰りぃ」
遠回しに戦力外と通告された。言うなれば弱いということ。しかし、それよりもタチアオイを憤怒の感情に包む理由があった。
「兄さん、約束守る言うたよな? さっそく破る気やな」
「…約束を破ってでも、やらなきゃいけん現実がある…
―それが今や」
タチアオイの憤怒を押し切ってでも、己の決意を優先する木聯は、ベルゼブブだけを見据えていた。
「あい、わかった。兄さんの気持ち」
諦めたかと木聯は安堵する。しかし、タチアオイは彼の一歩後ろに立ち、魔法を展開する。その行動に、木聯は驚きはしなかったが、説明を求めて、タチアオイを一瞥した。
「死ぬで」
「どうせ死ぬんやったら、一緒に死のうや」
「―!」
死を予感し、震えるタチアオイ。だが、芯の通った声に、決意に、木聯は嗤った。
「ほんなら、逝こうか」
自身の言葉を合図に木聯は一気に浮遊する。彼が空に避難した瞬間、地上で爆発が起こる。辺りが爆発によって生じた火に包まれる。上空から、その光景を眺める木聯は浮遊魔法の術式を思い起こしながら、タチアオイを見つめる。
「(聖女は、治癒と守護を体現化した象徴。やけど、タチアオイは違う。聖力自体に爆発魔法の術式を付与している。あいつが合図さえ出せば、爆撃が起き、破壊を齎す。治癒と破壊を司る稀代の聖女。それがタチアオイという聖女や)
うちも遅れんようにせんとな」
菫青石の金槌
木聯は浮遊魔法を解除する。重力に従い、落下していく。受け身を取りつつも、自身の3倍近くに巨大化させた金槌を振るう構えを取る。そして、タチアオイも地面に、聖力で造り出した魔法陣を描く。爆撃魔法が付与された聖力が巡り、今にも爆発してしまいそうだ。上と下とに挟まれた完璧な、逃げる隙も窺えないそれに、ベルゼブブは如何なる判断を下すのか。そんなことに気を巡らせる暇など、木聯とタチアオイにはない。ただただ、己が仕掛ける攻撃を、時間が許す限り、遂行するだけである。
ガァァーーン!
ドゴォォン!!
金槌がベルゼブブ神に悪意をもって触れる音と、聖女による規格外な爆発音。それが轟きは尽く、その場の音を薙ぎ払い、飲み込む。
「!」
爆発の起こる中に飛び込み、勇猛果敢にベルゼブブに武器を交える木聯は信じ難いものを見た。自身の武器である菫青石の金槌が溶解している。その原因は、神が操る無支奇であることは明白だった。魔法使いの最高峰という自負を一応は持っている木聯はそれが受け入れがたい。しかしながら、受け入れがたい事実は膨れ上がっていく。彼が驚いていると、ベルゼブブ神の翅から大量の無支奇が放出される。それは一つの真球のようにまとまり、彼に向かってくる。
「めんどいなぁ」
危機感が木聯の頬をくすぐる。彼は防御魔法を展開して、無支奇を防ぐ。防御魔法と無支奇が触れると、音を立てて、防御魔法が溶け始めた。その溶解もほんの一瞬の出来事で、魔法の溶けた穴から無支奇が垂れ、木聯の腕にかかる。
じゅゅゅうう…
まるで肉が焼ける音のように、木聯の皮膚を焼き、その下にも侵入する。激しい痛みに木聯は顔をしかめるが、すぐに武器を生成する。
そこに押し入る聖女タチアオイ。一切の躊躇いが感じられない行動選択。そして躊躇いのない聖術の展開。それは自身の兄である木聯すらも巻き込みかねない爆撃魔法。どちらも力任せの愚行。だが、それが気にならないほどのスマートな連携。
「聖母よ其の娘を護り給え!」
「十徳武器魔法月長石の銃!」
タチアオイは、ベルゼブブの翅に聖力を纏わせ、爆撃する。木聯は短銃を、ベルゼブブの脳天を、至近距離で撃ちこむ。しかし、それすらも無支奇によって防がれ、ベルゼブブに一切の傷と隙を生むことができない。だが、手札が尽きたわけではない。木聯は、自身の体に駆け巡るマナと、エレメンタルの魔力を再確認する。そして、エレメンタルだけを抽出し、掌にその感覚を宿す。
「精霊術シルフよ、意のままに!」
彼の掌から放たれるものは、風の精霊シルフの風を操る力を拝借して、生み出した風の刃。極限にまで、風が圧縮されたそれをベルゼブブの神経を切断するように操作する。
「借りるで」
木聯が握っていた短銃をタチアオイは掻っ攫い、全ての弾丸をベルゼブブに向け、撃ち放った。それはまだ精霊術に慣れていない木聯へのフォローと、一分の隙も生ませないタチアオイの配慮だ。
一方的で、残忍な攻撃が飛び交うその現場は二人の魔法使いによるものであり、端から見れば、非難されてしまうかもしれないほど魔法使いにはあるまじき、非効率的で、こじつけにも等しい、思考を捨てた攻撃の連続。だが、その連続と連携には、木聯とタチアオイの必死さと賢明さが見て取れる。
親友の仇討ちのため、人類を守るため、時間稼ぎのため、使命を果たすため。あらゆる思惑と思いが募る猛攻。だが、そんな人間の思いを神は嘲笑う。
「悪霊の王」
ベルゼブブ神が、虫も殺さぬような声で言い放つと、かの神の翅が肥大化する。その挙動に覚えがあったタチアオイは、思考する前に、自然と、聖術を展開した。それは治癒魔法という聖術の特筆した点を、結界術に組み込んだ聖術独自の結界。破壊されようが、瞬時に再生を行う特殊な結界術であった。
タチアオイの予想通り、肥大化した翅は幾重にも重なり、大気を抉るほどの斬撃が飛び交う。自力で避けることが不可能だと一目で分かる。タチアオイが結界を張っていなければ、二人とも死んでしまう状況だった。視界ではとらえることができない高速の翅の斬撃を受け、再生を続ける結界。だが、木聯もまた、よく知っていた。この後に続く攻撃のことを。
「精霊術ウンディーネよ!」
咄嗟に浮かび上がった水という事象に、木聯は賭けた。彼の呼びかけに答えたウンディーネが、どこからともなく水を運ぶ。そして、彼とタチアオイを保護するように覆う。
ベルゼブブの翅の斬撃から出現するダガー。それは木聯が知っていた二段階攻撃だ。前に戦った時は避けることで精一杯だったが、今はどうであろうか。
ベルゼブブの斬撃と合うように出現するダガーの総数は増え、翅の一閃を縁取るように飛んでくる。物量の攻撃は相変わらず、木聯らを苦しめるが、それが些細な変化であると錯覚してしまうほど、決定的に違うものがあった。それはダガーと翅に、無支奇が帯びているということだ。
防御魔法や武器魔法すらも、容易く溶解させてしまう無支奇が、二段階攻撃の物量と鋭利さを向上させた。
(水が無支奇に飲み込まれた!?)
精霊の力が少し纏っている水が、ベルゼブブの翅の攻撃を受け、緩和させるかと思えば、翅に帯びた無支奇が、水に入り混じり、不純物となる。それは水の防御を朽ちさせ、タチアオイの結界の再生力を遥かに上回る翅の斬撃が、彼らの防御を全て剥ぐ。強制的に無防備となった木聯とタチアオイに、ダガーが飛び注ぐ。
人間が生きるために敵を屠ることを躊躇うことが無いように、神もまた、興が失われ、生かす価値もないという考えに至り、ほとほと飽きたと言わんばかりの態度で、手を下す。慈愛と言う躊躇なきベルゼブブ神の攻撃。金属と皮膚が擦れる音が、戦場に響き渡る。
「十徳武器魔法…日長石の銃」
攻撃が止まぬ中、掠れ声で木聯がライフルを生成し始めた。しかし、それをベルゼブブは翅の一薙ぎで遮断する。
「精霊術と武器魔法という二つの魔法。目新しいという境地には立ったが、存外つまらぬものだ。そのようなもので、余を殺すなぞ。不愉快極まりない」
殺気が全面的に押し出されたベルゼブブを真っ向から迎えていた木聯とタチアオイは、ひどい倦怠感を覚える。体の節々から悲鳴が上がり、一切動かす気、あるいは抵抗が生まれない。
「…確かに、うちらは、紅帝族序列に名を連ねることができん未熟者や。魔法使いの最高峰と名高い座天使になっても、任務を完璧に遂行できへん屑や。
十神王の技術を取り入れれば、少しは強くなると思うとった軟弱さ。それが弱いんかもしれん…」
膝をついて静かに語りだす木聯。その体には、いくつものダガーが刺さっている。傷から無支奇が侵入して、酷い痛みを及ぼす。しかし、木聯はその痛みに声を上げず、ただ、ベルゼブブを見据えていた。
「神は強い。殺せるようになっても、うちらは、その境地にすら立つことが出来へん」
「ならば、消えろ」
「まあ、待ちぃや。強くなりたい者は、ずっとずっと高みを目指す。どんな手段を払ってでも、大切なもんを切り捨ててでも。もしかしたら、うちはそれが嫌やったんかもしれん。でも、それはあくまでも非凡で、弱者の、最強への道のりや。
この地上宇宙には生まれ持って、最強になると決められた最強共がおる。
徒党を組むことがなく、自由奔放な最強やけども、人類が窮地に陥れば、必ず駆けつける十名の革命家!!」
木聯が言い終わると同時に、どこからか微かな音が鳴る。それは本当に小さく、そして日常に流れる音の一部のようにならなくてはならないような音。だが、どこか殺意を感じられる音。その音の発信源は遠く、その音がなんであるかを察することは不可能。だが、その音の正体はすぐに明らかとなる。自身の体の一部を犠牲にして。
「!?」
ベルゼブブは驚きの声を上げる。なぜなら、ベルゼブブの翅の片翼に破壊による亀裂が生じたのだ。ベルゼブブは突発的な出来事を受けて、辺りを見回す。
(目の前にいるこの魔法使いらの仕業ではない。そのようなことができるはずがない。
では、一体誰だ!?)
正体を求めて、ベルゼブブは周りの変化に取りこぼしが無いように、目を凝らす。すると、ベルゼブブは見つけた。些細な変化を。それは弾丸。恐らくは地上宇宙一般に普及している弾丸となんら変わりない。それが神の翅を砕く威力に結びつくとは到底、ベルゼブブは考えに至らなかった。しかし、神は、木聯の話と弾丸を結びつける。
最強と弾丸。一見すると、共通点は皆無。だが、”十神王”と”十名の革命家”という異名に共通点を見出す。
(十の頂に座る最強につけられた人類最高の称号"守護者”!!
その中でも異彩を放つ人間がいる。遠距離に特化した守護者。そして、人類で最も著名な狙撃の名手。人類最強の狙撃手!!)
「―ライラ・エンプレス」
自身に攻撃を当てた正体の名をベルゼブブは呟く。その顔は悔しさではなく、心底興が乗ったという快然たるもの。それは木聯とタチアオイと戦っていた時には見せなかった本気が垣間見えるもの。ベルゼブブが、どこから攻撃が来るかと警戒していると、微かにだが発砲音が聞こえた。神は翅を羽ばたかせて、狙撃を無効化しようと目論む。しかし、そう簡単にはいかない。
「―!?」
全方位を防いだと思っていたが、弾丸が、ベルゼブブの顎を撃ちぬいた。これにはベルゼブブも目を見開いて、攻撃経路を考える。そうした反応に、近くにいた木聯がにやりと笑って答えた。
「あんさんの翅は重なる斬撃によって、広範囲で小さい武器でさえも侵入できへん。でも、隙間がないわけちゃう。あんさんの斬撃に隙間ができる時間を計算して、どうやったら、あんさんの弱点を突けるか」
「…ありえない。余の顎を攻撃したとなれば、翅の隙間を掻い潜る前に、弾丸を跳弾させなければならない。そんなことどうやって…」
木聯の理論にベルゼブブは納得はしつつも、弾丸の跳弾というもう一つの課題が浮上した。
「あるやん。跳弾できるもんが!」
そう言って、木聯は、自身の体に刺さっていたダガーを見せびらかした。そのダガーは僅かに歪んでいて、跳弾した証拠が残っている。
「…」
信じられないものを見る目で、ベルゼブブは木聯のその先にある高台で動く影を見つけた。その影が一瞬光を放つと同時に、発砲音が克明に聞こえた。ベルゼブブの瞳には黒いものが映る。それは一瞬にして大きく映り、ベルゼブブがそれを弾丸だと理解した時には、すでに、弾丸とベルゼブブの距離は取り返しのつかないものだった。
弾丸がベルゼブブの目を抉り貫通する生々しい音が、木聯にも、タチアオイにも、撃たれたベルゼブブにも聞こえ、辺りに沈黙が齎された。一人の守護者によって。
弾丸を撃たれる前にベルゼブブが見ていた高台の物陰。一つの影が動いた。一部始終をスコープから覗いていた影は、目をスコープから離し、裸眼でベルゼブブらを見下ろす。その正体は言わずもがな、人類最強の狙撃手にして、守護者たるライラ・エンプレスである。
「角度ずれた。やっぱり神相手だと、本格的に感覚戻さないといけないわね。ここもばれたし、さっさと移動しないと」
地面に寝そべっていたライラは状況を冷静に把握して、次の攻撃へと備える。固定していたライフルを携帯用の形状に持ち帰る。ライラの指は、下へ下へと重力に従うように、ライフルをなぞる。彼女の顔は紅潮していて、嬉しさのあまり、引き攣っている。
「思い出してきた。神を抉る感覚が、こんなにも快感だなんて。でも、まだ全て思い出せてないわ。神を殺す感覚が!」
ライラは左目を隠すように黒布でできた眼帯を解く。その瞳は、右目のシルバーとライトブルーの色と酷似しているか、それよりも深く淀んでいる。右目と決定的に違うものとすれば、左目には十一芒星が宿されているということ。
右目が煌く月夜を示しているのであれば、左目は暗闇の中、一つ煌く一等星を示しているようだ。
「あの時以来かしら。この眼を開放するのは。解放したからには全て戻す。
―人類最強の狙撃手の脅威を!」
夜の一族二代長ライラ・エンプレスに語り継がれし守護者の二つ名
―曰く、沈黙の甘受者




