表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NO PAIN~女神は眠りの中に~  作者: おじゃっち
7章 知識の海
41/101

36話 アナトの痛み

新章突入!

次なる舞台は知識の海、一体どんな物語が待ち受けているのか?

だが、これだけは言える!運命は狂いだす!

知識の海

その海は七大一族の原初一族と妖精族が共存するという稀有な日常が送られている。しかしながら、この海には日夜地上宇宙(バース)全ての情報が管理されている場所であり、人類の図書館と称されている。


ノーヴァは宇宙戦艦内に乗り、魔法の海から知識の海までの旅を楽しんでいる。ノーヴァ自身は今から仕事に行くために楽しんでいてはいけないという理性があったのだが、

『魔塔が知識の海までお送り致します』

カトレアから、魔法の海を発つ時に言われた。何かの冗談かと苦笑していたところ、魔塔が一機だけ保持している宇宙戦艦を出してくれたのだ。激しい戦闘からよく休めていなかったノーヴァの思考はうまく回っておらず、カトレアの提案を断ることはなかった。

「至れり尽くせり…」

その時の己の判断に少し反省しているが、戦いの痛みはほとんど回復したので良しとしよう…

そんなことを考えて三日経っただろうか、目的の知識の海に入り、中央部へと宇宙戦艦は泳いでいる。ノーヴァはガラス越しに宇宙を覗く。

「そろそろか…」

ノーヴァは目的の星に来たことを察して、出発の準備に取り掛かる。と言っても、カトレアから、これまたご丁寧に貰った魔法石に行きたい場所をしてするだけだ。彼は魔法石を手に取って、カトレアの説明を思い出す。

『これは空間移動能力が施された貴重なものですわ…空間を操ることは高度なものですので、制約も課して使用を実現させていますわ…』

『これの制約は?』

『その星の中でならどこへでもいけますわ…逆にその星と別の星に行くことは不可能…そして、力を使いすぎてしまうと壊れてしまうので、配慮してください』

「原初一族の里へ」

ノーヴァは魔法石を持っている手に力を込めて、そう言葉を紡ぐと、彼の周りに粒子が漂い、次の瞬間、光に包まれた。

「…」

十秒ほど、目をしばたたきして、急な景観の変化に視界を慣れさせる。慣れてくると、目をしっかり開いて視界をとらえる。ノーヴァの前にあるのは、巨大な樹木ではなく、大量の木々であり、森である。それが幾重にも重なり森ではなく、視界上での巨大樹の形を成しているのだろう。

「隠すのが随分とうまくなったな」

大量の木々から構築された森の中には妖精族と原初一族が共に生活をしている。妖精族を絶やすことなく保護するものと、原初一族の機密情報を守るという互いの利益が一致したためだとノーヴァは知っていた。

森は見た目からは想像できないほど険しい樹海である。故に、一族の者でなければ立ち入ることができない場所であるため、原初一族の里と妖精族の住まう領域を”チップテトラ”と人類は呼んだ。

「あと…もう、少し…」

森を歩くこと、早二十分、ノーヴァが慎重に一歩一歩足を進めていく。右足を前に出して地面に足をつけると、何故かその箇所だけぬかるんでいるとノーヴァが思った矢先、

「うおっ!!」

一瞬の浮遊感を味わい、体ごと穴に落ちてしまった。それは自然にできたにしては深さや穴の中の壁が均一になっている。つまりは、この穴は人工的に作られたものだとノーヴァは判断した。それならば、一体この穴を掘ったのは誰であろうか…これもノーヴァは既に判断していた。

「近くにいるんだろ? 早く出てきなさい。オベロン!」

その場に響き渡る声でノーヴァが呼びかけると、手にスコップを持ったオベロンがひょいっと顔をのぞかせる。

紅帝族序列十二位守護者(ガルディ)オベロン、そして、44男”知”の元祖でもある。

「…居心地は?」

「良いように見えるか?」

にっこりと怒りの笑みを向けてくるノーヴァにオベロンは無言で見つめる。

「何故こんな悪戯を…」

「イニティウムが提案してきて、面白そうだったから」

「あいつ…」

オベロンが素直に答えてきた内容にノーヴァは納得ずくで頭を抱える。そして、彼の脳内には面白半分でこの悪戯を提案したイニティウムの愉快に笑う姿が容易に想像できて、さらに頭を抱える要素になってしまう。

「兄者、手を…」

そう言ってオベロンから伸ばされた手をとり、落とし穴から脱出する。

「イニティウムから兄者を迎えに行けと頼まれた…」

「そうか。と言っても、チップテトラは目の前にあるぞ?」

ノーヴァが指さす方向には今まで見ていた景色、森の険しい樹海となんら変わらぬ景色が続いているだけだった。しかし、ノーヴァは知っている。これは、チップテトラを信じる者だけが通れる、チップテトラに通ずる扉であることを。ノーヴァの対応にオベロンはしばし笑った後、足を一歩踏み出す。ノーヴァも彼に続いて、踏み出すと、次にその目に映ったのは、自然に満ち溢れた活気と穏やかな風に守護された美しい景観だ。先ほどの鬱蒼とした樹海とは対照的に温かい。360度見渡しても樹木、若葉、花、時には川が見える。遠くを見つめると、大きな建造物が見える。それが原初一族の本拠地、一族内の業務に対する情報だけでなく、地上宇宙(バース)の全情報が管理されている所である。

ノーヴァが周りを見惚れていると、一人の女性が二人に近寄ってきた。金色のしなる髪に紫の瞳、真っ赤な口紅を少しひいて華やかな印象とは裏腹に、優しい雰囲気を纏うのは32女”色”の元祖スマラグディノスである。彼女はオベロンに目で語る。

「あそこの建物でイニティウム達が会議(御茶会)中らしい…」

「メンバーは変わりないのか?」

「ああ、昔も今も…なにも…ここは始祖に守られている…」


棟梁らが竜王であるゲニウスに仕えて、竜族を支える柱のように、原初一族も長のセアに仕えて、一族を支える柱が存在する。その柱は五人の元祖によって形成されている。

この五人は紅魔族であるが、明帝族のセアに忠誠を誓っている異端な存在と、元祖でも特筆した実力を持っていることの敬意を称され、こう呼ばれている。

―原初一族の守護者(ガルディ)始祖、と。


「始祖の会議(御茶会)は長い…終わるまで()が話し相手になろう…」



ノーヴァが遠くから見ていた建物は荘厳な外装とは違い、内装は石畳で造られており、縦に広い構造である。奥の壁一面と天井はガラスが張られており、室内に太陽光を取り入れ、明かりを確保している。至る所に天体を模したインテリアが置かれている。机には大量の書類と資料、本棚にも多くの情報が管理されており、その整理を妖精が手伝っている。ここが原初一族の本部である。

「良からぬことを敵が企てている、という有益な情報。ふふ、私達の中に裏切者がいるなんてね。心踊る小噺。ありがとう、ラウルス」

次女”血”の元祖イニティウムが愛想よくお礼を言う相手はアイボリーブラックとインナーカラーはターキーレッドと派手なコーンロウをポニーテールにして、リップピアスとシルバーのフープピアスを着用している。その瞳はイニティウムと同じ金色だが、イニティウムとは違って蛇の目のように鋭い。ハーフタンクトップと動きやすそうなズボン、その露出からは花や蛇、天使の翼を模したタトゥーが見えて、全体的に柄が悪くて近寄りがたい明眸な女はイニティウムの双子の姉である元祖における長女”猛”の元祖ラウルス・ノビリスである。

「なかなか良い茶じゃねぇか。イニティウム?」

「この茶会の為に私の選りすぐり(コレクション)を開封したの。二人は御口に合っているかしら?」

何時(いつ)ものごとく…」

イニティウムの質問にたった一言の無機質な返答をするのは108女”瞳”の元祖オリゴ・アポストロスだ。

その瞳は薄氷のように燦然と小さく輝いていて儚い気持ちにさせるが、彼女は自身に満ち溢れたような艶美な美女であるように感じる。

ウェセクが彼女に光を纏わせ、胸を覆う金糸で刺繡された衣、ベルトで固定された軽く地面を引きずるスカートは両方の側面にひだをあしらっており、パンツスタイルでサンダルヒールが脚の魅力を引き立てている。これだけでも豪華であるのに、金のバングルや、サファイアのフープピアスを着用している。極めつけは黒橡(くろつるばみ)の髪のところどころにブルートパーズの金具をつけている。

「冷たい妹だねぇ」

オリゴの冷たい対応を笑顔で吹き飛ばすのは、11女”淼”の元祖プロエレだ。

「エドガーは欠席かい?」

「あいつは没頭すると、どうしても周りが見えなくなる。困ってんだよ、こっちは」

「それは貴方の言えたことじゃないわ、ラウルス…妖精たちから聞いたけど、()()標本を造ったらしいじゃない。今回は骨格標本? 悪い趣味、これが姉だなんて…」

「おい、イニティウム! お前こそ、所構わず誑かして? そのくせ選り好みで捨てる。美貌が武器なんて常套句。オレ様には無理だね。オレ様の妹ながら手の施しようが無え」

「ひっどい言い草。好きに言っていいわ。私は愛によって強くなるの。私に触れたければ、それ相応の実力”愛”を貰わないとね」

「愛で人は変わるのか?」

イニティウムとラウルスの会話に割って入ったのは意外にもオリゴであり、寡黙な彼女の口から愛という単語が出たことにプロエレは心底驚いている。

「ええ。愛は人を美しくさせることも、醜くさせることもできるわ」

「はっ! それならオレ様の愛とやらを見つけねえとな!」

「あら、駄目よ?」

ラウルスの言葉を一瞬で否定するイニティウムは、ティーカップを優雅な所作で口に運び、三人を見据える。

「義務と見栄っ張りから手に入れた愛ほど人を惨めにさせるものはないわ…」

イニティウムの真剣な一言にラウルスはつまらないと落胆する。

「信頼できんな、イニティウム(貴様)の言葉は。だが、貴様の遊びで興が乗らなかった事はない…」

「まったくだねぇ。お茶会なんて和やかな名目で呼びやがって。さっさと始めようぜ?」

「いいじゃねぇか! オレ様は血の気の混じった闘い、好きだぜ?」

「ふふふ、まったく…」

四人の間には殺伐とした殺気と、獲物を取られまいとする強情な欲の欠片が垣間見える。

「これまでと同様に、互いを信用し…」

「信頼せず、騙し合い…」

「出し抜き、協力して…」

「たった一人、獲物を(さら)いましょう!」


―裏切者との楽しい鬼ごっこの始まりよ


運命の歯車は原初一族の守護者と称される始祖⁉

しかも、4人それぞれに癖があるようで…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ