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NO PAIN~女神は眠りの中に~  作者: おじゃっち
6章 魔法の海
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35話 クドラクの痛み

強敵である七洋について、ウェルテクスから告げられることはなんだろうか…

そして、ついに、あの一族も動き始める!

神と人類は太古より交流があった、今の書物にある天界は天界宇宙(ゴットバース)と言う実在の神の居住区である…神は干渉せず、人類と交流を続けたが、クヴァレの政治体制には神の権限を持ち妨害していたらしい…しかし、その神々はある時から姿を現さなくなった…その代わりなのかは知らぬが、ある7柱の神が人類の監視を始めた…それが七洋だ


「今までの神は干渉こそすれど、それは人類が平等に存在できるようにとの方針だった…だが、七洋は違った…かの神は強者こそが人類の統治者であるという弱肉強食の思想から、人類に争いを奨めた」

「クヴァレ帝国が肥大化していったのって…」

「七洋の後ろ楯があったからだ」

衝撃の事実に木聯とタチアオイは反応に困り、顔を見合わせる。七洋を()と呼んでいるのは、魔族の王であるからだと教えられてきたので、まさか本当に’神’であったとは…

「後ろ盾など、無くてもクヴァレは動いていたでしょう…しかし、太古では神への信仰が一般でしたでしょうから、神の命を受けたクヴァレに立ち向かうことは神()()()()と捉えられていましたわ…故に()()()()()()()…それだけですわ、政など都合がよくても悪くても戦争の火種となる忌々しい人類の過ちですから」

カトレアが自己の感想を述べると、2人はなるほどといった反応を示して頷く。ウェルテクスが一応の補足を入れ始めた。

「魔族、どの海にも存在する魔物だが、これの統治は”聲”の元祖クレオパトラが最初に成功させた…」

「和の海で、二条良基が倒したっていう元祖でっか?カリスマを発揮する才を持ってはる…」

「そうだ、クレオパトラを倒したこと自体に問題はなかった…しかし、あやつは最悪の事態に備え、自身が死んだ場合、魔族の支配権を七洋に譲渡した…」

「!」

「そんなら、いずれどデカい戦いが起きるんとちゃいます?…どっか七大一族が陥落するとか…」

木聯の発言に場が凍る。そうなってほしくないと言うエゴと、なってしまうかもしれないという可能性が事実として衝突し合っているのは、この七大一族の現状だと痛感している。そんな中でも策があるのか、ウェルテクスは口を開く。

「余の見立てでは…クヴァレが指で触れるだけで、こちらを混沌に貶められる…それが今の現状であり、余らの実力だ…しかし…」

ウェルテクスが指を鳴らすと、空間に穴が空いて、扉が開く。その中にカトレアが入って確かめると、莫大な書物が整頓されている。その書物の正体に三人は感動する。何故なら、それは座天使(ソロネ)級魔法使いでも閲覧することが禁じられてきた魔法研究史実であり、魔法使いからは敬意を持ち、’グリモワール’と名付けられている。

(今日に至るまで魔法使いが研究してきた結果、それと可能性の詰め込まれた書物…その所在はクヴァレが独占していた筈なのに…)

喜びの顔でカトレアがウェルテクスの方を向くと、彼は自慢気な顔をしている。

「知識は何人にも介入することのできない個人の財産…そして知識を学ぶことは何人にも介入できぬ理想の権利…お前たちに、その権利を授けよう…備えるぞ、戦いに向けて!」




魔法の海での一連の騒動の波が収まり始めた頃合いで、英傑の海にて一つの会談が始まろうとしていた。それは七大一族の一角を担う()()の1人の竜王と、王を支える四つの家門の棟梁らが雑談を交わす密会であった。

コツコツと靴音を鳴らして、薄暗い回廊を一人歩く者がいる。灯籠の炎が揺れ動く度に、その者の存在感は強く提示され、炎の輝きが増しているように感じる。回廊の次は階段に繋がる扉の前に黒い外套を着用している柳色の瞳をしている青年が、その者に気づいて駆け寄ってくる。

姐姐(ねえちゃん)!」

姐姐と呼ばれるその者は竜族の四つの家門の一つ朱雀を取り仕切る19代(しゅ)棟梁(チェエ)宇風羽(ユーファウ)、そして、青年は宇風羽(ユーファウ)の弟であり、次期朱棟梁である(チェエ)謝氾(シャハン)だ。

「王二同伴シナクテイイノカ?」

「今回は家門の代表として来いって言われたカラ…」

謝氾(シャハン)は竜族の王であるゲニウスの専属侍従であるが、今回はどうも違うようだ。宇風羽(ユーファウ)が羽の飾りがついた仮面で目元を隠すと、彼も同じような行動を取る。

「姐姐…」

「心配スルヨウナコトハナイ…」

寡黙な宇風羽(ユーファウ)の性格を知っている謝氾(シャハン)は、その言葉を信じて、足元にある灯籠を持って先導する。真っ赤に塗られた壁と一方通行の階段を長いこと降りると、赤色の木でできた扉が見えてくる。扉を開けたその先は、一つの小部屋になっており、木を軸とした骨組みにガラスが張られている円卓を取り囲むように5つの四角い安楽椅子が設置してある。謝氾(シャハン)が椅子を引いて、宇風羽(ユーファウ)をエスコートする。彼女の座った安楽椅子は朱雀を象徴する朱色である。そして、彼女のほかに椅子に座るものが数名。宇風羽(ユーファウ)の真正面にある黒の安楽椅子に座り、甲羅の模様が施されている仮面をつけている男は自身の瑠璃の髪を暇そうに遊んでいる。そして、こちらに気づいたのか、仮面をつけていても分かる胡散臭い笑顔を向けてきた。

「こんにちワネ! 対面の会議だってのにお互いに顔も見れないなんて、悲しいアルネ~」

「気持チノ悪イ」

快活な口調での言葉に苦言を伝える宇風羽(ユーファウ)をけらけらと揶揄う男に謝氾(シャハン)は少しだけ睨んでしまった。そして、この男の正体は、四つの家門の一つ玄武を取りまとめる73代(げん)棟梁(ウー)蠍然(シーラン)である。

「お宅の弟君はコワいネ、どうにかするネ?」

(ユー)ハ貴様ノ言動ガ厚カマシイト思ウ、次期棟梁ハドウシタ?」

「ムリアルヨ~、次期棟梁はお仕事中ネ…天皇様のところで…それにヨォ?…元竜王様をこき使うなんて、ワタシには到底できっこないネ」

「ふふっ」

2人の会話を聞いていた隣の男が静かに笑っている。男と、その後ろに控えている男は同じ虎の仮面をつけている。白色の安楽椅子にちょこんと座っている鮮緑の髪を無造作に下ろしているのは、四つの家門の一つである白虎を結束させた初代(はく)棟梁(フー)皓空(ハオア)である。そして、後ろで真っ白な翼を生やしている緑青の髪色の青年が48代()(はく)棟梁(フー)雲颯(ウンリン)である。

「いつ聞いても君たちの会話面白いよ、飽きが来なくて…ねっ、雲颯(ウンリン)?」

「…………是」

仲睦まじい姿を見せつけられた三人に僅かな沈黙が生まれるが、その沈黙を破った話題はもう一つの家門の棟梁のために用意された席が空であることだった。

「青龍ハ今回モ欠席ナノカ?」

「そうみたいだね」

「仕方ないネ、(せい)棟梁ウェルテクス殿は魔法使いの統率で多忙アル」

「モウ少シ自覚ヲ持ッテ欲シイ」

宇風羽(ユーファウ)に賛成…何かあったら次の竜王はウェルテクス殿になるんだから…」

()()とは?」

皓空(ハオア)の発言が質問で返ってきた。質問の主を見て談笑していた棟梁が一斉に立ち上がり、雲颯(ウンリン)謝氾(シャハン)も棟梁らに倣い拱手して、敬服の意を示す。

「礼は結構、座ってください」

声の主であるゲニウスが安楽椅子に腰を下ろしたことを確認すると、棟梁らも座る。四つの家門を取り仕切る棟梁らが敬意を示すゲニウスこそが、竜族を統率する竜王である。竜王としてのオーラが溢れる空間は緊迫している。空気が薄いわけではないのに、酸素が身体に十分に回らず、5人の手や足などが震えている上に、金縛りにあっているのかというほど体が動かない。それは王たる竜王(ゲニウス)の逆鱗に触れていることを窺わさせている。

「お前たちが竜族の大黒柱として貢献してくれたこと…それにより一族に過敏であること、幾重にも感謝申し上げています…故に、言葉には少々気をつけなさい」

ゲニウスの忠告に一度首を縦に振ると、その殺気だったオーラが弱まり、身体の制限が解かれた。

「王、三傑会合ハドウダッタ?」

「件の騒ぎ、三傑が七洋とクヴァレの勝負に勝ったので、前回の失態は覆せたと思ってくれても構いません」

「勝負はここからですよ、王…今度間違いなく竜族(ぼくたち)に勝負を仕掛けてきます…」

「ええ、ですから、指示は簡素に…朱雀は天皇にお使いを頼みます、玄武は英傑の海全土の防衛、白虎は和の海へ遠征を命じます」

ゲニウスの言った通り、彼は指示の意図を話さず、ただただ望むことだけを伝えてきた。しかし、ゲニウスは一度たりとも無駄な指示を出したことはない。それだけの実績が王への信頼に変化して、棟梁に反発されることなく、了承させた。

「王、無礼ながら発言を…」

指示を出し終えると、先ほどゲニウスの逆鱗に触れてしまった皓空(ハオア)が畏まって、発言の許可を求めてきた。ゲニウスは瞬きを一度だけして、許可を促す。

(せい)棟梁の交代を提案します」

「…」

「今重要なことは四つの家門が協力体制を敷くこと…ならば、棟梁も団結しなければなりません」

「ウェルテクス殿は魔塔の仕事で忙しいネ、ダケド戦力が減るのは困るヨ」

皓空(ハオア)の提案を否定したのはゲニウスではなく、蠍然(シーラン)である。続けて、

「青龍の仕事は他一族への牽制、いわゆる外交…雑魚に竜族の顔任せる弱ったらしい一族に仕立て上げるアルカ?」

「…ウェルテクス殿は外交上の顔は果たせても、青龍の仕事はできない…外を気にするあまり、内を蔑ろにすることこそが内部崩壊に繋がるんだよ」

「お気楽爷爷(おじいちゃん)は困るネ!」

議論が2人の中のみで白熱してきている。どちらの意見も正当性や説得力があり、とても悩ましい提案である。しかし、その最終判断は棟梁ではなく、竜王に委ねられる。宇風羽(ユーファウ)が悩ましく聞き入っていると、ゲニウスが手をたたいて、2人の議論を強制的に終了させた。

「優秀な部下たちばかり…しかし、その議論は既に決しています」

「ウェルテクス殿以外二務マル王…」

宇風羽(ユーファウ)の呟きにゲニウスがほくそ笑む。

「いるではありませんか…かつては竜王として一族を率いていた私の叔父であり前任」

「ウェルテクス殿は了承済みで?」

「愚弟の我儘(要望)ですよ、自由に動きたいそうで…ということで、ウェルテクス・マゴを次期棟梁に降格…そして、クリスチャン・ローゼンクロイツを63代(せい)棟梁に任命します!」


竜族の棟梁は曲者揃いです、しかし、どの棟梁も竜王であるゲニウスのことは慕っています…

そんな四つの家門青棟梁が交代という慌ただしい決定、そして、ウェルテクスの後任はゲニウスの叔父であるクリスチャン!

ゲニウスは一体何を考えているのか?

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