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NO PAIN~女神は眠りの中に~  作者: おじゃっち
6章 魔法の海
26/100

25話 ヘルメスの痛み

新章突入!!

次の舞台は魔法!魔法を使った戦いはどの頂点にあるのか!


赫灼と燃える街並み、余の弟子を笑顔で殺す七洋、大量の黒に染まった天使、聖女の結界を打ち破る者、そして迷宮から溢れだす魔物。

「はあ、はあ、はあ…」

ウェルテクスは体を起こして近くにあったコップに水を出して飲む。悪夢で荒立った息を整える。窓から見える暗雲が紫色に濁っている空を見て、

「……鼠輩(そはい)め」


魔法、それは権能とは別に神々が人類に与えた祝福として初めて元祖の手によって使われた…人類に祝福をもたらす術として普及している一方、軍事目的に争いの道具として普及してしまった恐ろしい力である。

魔法の海は魔法が初めて扱われはじめ、今でも魔法への研究が盛んに行われる。

そして、ここは多くの迷宮が跋扈(ばっこ)せし海である。


「あ゛ー、マジだりぃ!」

「そんなこと言うな」

魔法の海最大帝国ヴェスタ、ここには紅帝族の魔法使いを統率する魔塔と聖女を筆頭としたイオ大教会がある。ヴェスタ帝国のある惑星エルロイには未踏破の迷宮や未知の魔物などの生態があり、多くの魔法使いや冒険者が挑んでいる。

北欧の景観の街を肩を並べて歩くノーヴァと一条実経は、魔塔に向かっていた。

「兄貴ホンッットーに! こんなとこにエデンの槍があんのか?」

「イニティウム、じゃなかったラウルスが入手した情報だと三傑が、このヴェスタ帝国にエデンの槍を隠したらしい…」

「はーん? なにか隠し事だなぁ、あの野郎。繋縛の水晶とやらにエデンの槍が関わってんのか?」

「うーん、線が濃厚とだけだから何とも言えんが、無いよりはマシだろう」

あの話し合いの後、魔法の海へ行くことが決まった。提案者のイニティウムは、


『用意は此方に任せて、あと白練は預かっておくから全部終わったら来て下さいね♡』


(白練を人質に取られたからな。しかもさらっと…)

「兄貴のお人好しは相変わらずで。それでイニティウムの姉貴からはなんて?」

「ああ、魔塔最高峰の魔法使いを用意するって意気込んでたから。その待ち合わせ場所が魔塔だ」

「イニティウムの姉貴さー、昔に戻ってきてねえか?」

「……」

遠い目をして実経が言うことにノーヴァもまた遠い目をする。その言葉を最後に二人は無言で魔塔へと向かった。


「いやー、久し振りに来たぜ。兄貴協力者の名前って分かるか?」

二人の前に高く聳え立つ魔塔、実経にそう問われてイニティウムの言葉をメモった紙を取り出す。

「カトレア、かな」

「おっ、(りょ)! ちょっと待ってな」

実経が塔を造る煉瓦に手を翳して呪文を口ずさむ。と、煉瓦が動き出して重厚な門が現れた。ギョロリと大きな一目が二人を覗き込む。

座天使(ソロネ)級魔法使い一条実経、守護者(ガルディ)のイニティウム・テオス殿の依頼を受理しに来た」

実経の言葉を聞いて一目は閉じ、代わりに門が開いた。実経がノーヴァの手を引き、魔法陣の上に立つ。

シュゥゥン!!

魔法陣の上に立つと魔法が発動して目を覆うほどの光とともに一瞬浮遊感を覚えた。その次の瞬間、ノーヴァの足はコツと床に触れる音がして目を開く。暗闇で覆われた夜が明けると現れる燃えるような太陽を彷彿とさせる鋭い赤い目、蝶の瞳孔。黄金の林檎を象徴しているようなサラサラと靡く金髪。誰もが見惚れる美貌で発せられるその美しい声で誰もが呼ばれることを願っている。だが、どこか死者を思い起こされるような不気味な雰囲気であるが、それがまた彼女の魅力だとノーヴァは直感的にそう捉えた。

「よう!」

「久しぶりね、実経。今師範は出掛けているわよ。あら、御客様がお見えね」

「イニティウムから依頼されてるやつだが」

「あら、そう。なるほどね」

パンと手を合わせて合点がいったような顔をする彼女はすっと手を胸に当て軽くお辞儀をする。そして不気味だが妖艶な笑みで、

「妾は座天使(ソロネ)級魔法使いカトレアと申します。イニティウム様からの御依頼。このカトレアが命をかけて尽力いたしますことをお約束しますわ」

カトレアが微笑むと実経が胡散臭そうな者を見る目でノーヴァを後ろへと下がらす。

「あら?」

「いや悪ぃ悪ぃ。姉貴を思い出しちまう。ここで話す時間が惜しい。往くぞ」

「忙しないわね」

カトレアが隣の部屋に行き、書き途中の魔法陣をさらさらと書き終え、手招きをする。

「…酔いそうなんだが」

「あー、まっ、あっち着いたら少し休むから、なっ!」

門にあった魔法陣に似た魔法陣の上に立つと同様の感覚を覚え、今度はジャリッと砂道の上に立つ。ノーヴァは近くにあった木に手を当てて、

「さすがに、魔法使えない俺には鬼の所業じゃないか?」

プルプルと小鹿のように足が震え、ズキズキと痛む腰に手をやり自分で労る。慣れっこの二人はちょっと可哀想な目をする。

「確かに鬼の所業ですが、緊急の依頼ですのでご了承ください」

にこにこと笑うカトレアに、一体どんな依頼をしたんだとノーヴァはイニティウムに少しばかり苛立つ。が、こんなことは時間の無駄だと痛む体を動かして振り返る。その目に映るは錚々と聳え立つ霊山、禍々しいオーラを隠さずに侵入者を殺すという意思が見て取れる。

「トリスメギストス跡殿、この地上宇宙(バース)が誕生した時より存在する原初の迷宮です…」

「ああ、聞いたことがある。弟と妹が腕試しでよく行っていたな。毎回大ケガをして帰ってきていたが」

迷宮の穴の偵察を軽く終えた実経の呼び掛けにより足を踏み入れる。洞窟の中に広がっていた光景は巨大な鍾乳洞(しょうにゅうどう)だった。青白く発光する氷柱と枯れているかのような黒い木、所々に小さな泉があり、それも発光している。まさに神秘の秘境。しかし、道というものはなく形や大きさがバラバラの岩が散乱し、今にも崩れだしそうな地形で安全とは程遠い場所。

「前回は砂漠と海の迷宮だったが、今回は洞窟か~。やりづれぇ」

ゔーんと大きく伸びをして体を(ほぐ)す実経と外套を羽織り準備をするカトレア。ランプに火を灯して足元を鮮明にする。やはり、足場が悪く歩きづらい。

「前回は師範、ウェルテクス様が踏破されていますわ。四百八年頃ですので、今から五百九十二年も前のこと。迷宮が進化しているのは当たり前ね」

「そりゃそっか。そーいや、他の座天使(ソロネ)級魔法使いはどした? 魔塔専属の魔法使いのクセに魔塔にいねぇじゃねえか」

「さっきから耳にするが、その…ソロネとか言うものはなんだ?」

話してなかったな、と今更に気づいた実経が丁寧に説明を始める。

「現在の魔塔の階級は三つ、上から…座天使(ソロネ)級、力天使(ヴァーチャー)級、権天使(プリンシパリティ)級。権天使(プリンシパリティ)級になればやっと魔法使いとして認められるが、現代の魔法界を占める魔法使いは十五パーセント…残りは全員見習い魔法使いだ。いいか? 見習い魔法使いは()()()()()()()()()()()()()っていう肩書きだ。こっちからしたら魔法使いとしては扱うわけにゃいかねえ」

「魔法使いになるには昇級試験或いは殊勲をあげる必要がありますが、なかなか難しいようですわね。魔法使いの割合のうち、権天使(プリンシパリティ)級が十パーセント、力天使(ヴァーチャー)級が五パーセント未満、座天使(ソロネ)級に関しては一にも満たない。魔法は進歩しているのに、ここまで人間が劣化しているなんて拍子抜けですわ」

外套のフードで顔は見えないがカトレアからは怒りが感じられる。昇級試験が大変だったんだろうなと実経が思っていると、

「まあ、でも、座天使(ソロネ)級魔法使いに変動はありませんわ。守護者(ガルディ)候補という実力も…」





「なあ~、暑ない?」

ヴェスタ帝国、中枢都市デルロイの商店街が立ち並ぶ大通りに構えるカフェのビーチチェアに全身を預けてドリンクをストローから喉に通す黄みの強いシャンパンゴールドの髪を緩くまとめ、宝石眼の瞳を持つ訛りのある男。

魔塔専属座天使(ソロネ)級魔法使い木聯(もくれん)、耳のピアスがキラリと光を放つ。その横でグラスを両手で持ち、微笑する無垢な男。相済茶と紺鼠の髪をして、裏葉色の光りの薄い瞳。服はあまり肌を見せないようにしているのか、暑そうな見た目である魔塔専属座天使(ソロネ)級魔法使いアロエ

「そんなこと言わないよ、木聯(もくれん)

「暑いもんは暑いわ。師匠はどっか往きよるし、ほんまどこいってんねん」

「元祖の侵攻で守護者(ガルディ)様は忙しいみたいだね」

「ほんま洒落にならんでぇ? 今回の報告やとな、クヴァレが遂に堕神の力使いよったらしいやん。魔塔の見習い共が元祖に研究資料渡しよったのはこっちの責任やけどなぁ。防諜(ぼうちょう)に期すりすぎやろ。見習い()うてもそれなりの戦力やのに、痛手やで」

暑い暑いとタオルで汗を拭い、給仕からだされたコーヒーをチュウチュウと飲む。

「にしても、えらい装備やな~。世界会議並みの警備体制やで」

木聯が部下の配置図を見て面倒事のように言う。その周りには多くの魔法使いがいるのに対し、客や店員はいない。

「師匠の予知夢だって」

「ほぉ、さすが竜族やな。欲しいわ~、その力」

「宇宙に散らばった魔法使いを昨夜のうちに召集し、客と店員を避難させ商店街を封鎖して、協会にも協力要請を受理させた。スゴいよね、師匠」

「イオ大教会が独立した組織ゆうても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。魔法に関する絶対的権限を持つ魔塔に付き従うんは当たり前のことやろ。にしてもイオ大教会の信仰しとる精霊王なんて、ほんまおるんか?」

「ちょっと! 精霊使い目の前にしてそんなこと言わないでよ! それに精霊が実在してるんだからいるよ、絶対に!」

「まあ、考えは否定せんわぁ。()うとっけど偉人ちゅうんは歴史に都合のいい存在のために創られてるんやで」

「っもぉーー! ロマンがないっーー!」

「あほか。現実に必要なんは夢もロマンでもない。実力と成果や」

ぷくぅと頬を膨らませて胡乱な目で木聯を見るが、木聯は受け流す。ずっと目をタオルで覆っていた木聯がばっと体を起こす。同様にアロエも勢いよく立ち上がり杖を顕現させる。木聯はナイフをくるくると回しながら、周りの部下である魔法使いに伝達する。

「聖女呼んできーや。あいついんと勝てへんで」

「木聯!」

「分かっとる、なんや偉いんが来てはるやん」


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