12話 復活の痛み
これで3章は終了です!
11話の内容は覚えておいて欲しいです!
是非、読んでください!
「……長」
静止したイニティウムが何を言ったのか、うつむいているから表情も読み取れない。
「イニティウム、俺達が止めなければならない…あの子達をよく知っている俺達が…」
「分かってますよ」
イニティウムはぐっと拳に力をいれると、周りに付着していた血が生きているかのように動きだして、イニティウムの持っているガラス管の中に入っていく。くいっ、と人差し指を動かすと華蛇の怪我が治った。
(権能…なのか? それにしては治癒の力を感じねぇーな)
近くにいるバイラールが分析していると、イニティウムがノーヴァをじっ、と見る。ノーヴァも見つめ返す。しばしの沈黙が生まれた。それを破ったのはイニティウムのスマホの着信音。ポケットから取り出して相手の名前を見る。
「また…会いましょう」
ワントーン低い声でそう言って、イニティウムは去っていった。ヒョイ、とバイラールが木から顔を出す。
「あの〜…ノーヴァさん? あいつに姐さんは禁句っすよ~」
おそるおそるバイラールが忠告をいれてきた。
「知ってるぞ?」
キョトンと先ほどのマジな顔から優しい表情になる。聞いたバイラールはうんと聞き間違えを疑う。
「イニティウムが執着するのなんて滅多にないからな! 脅しって感じだ!」
ニッコリと、満面の笑みで理由を述べるノーヴァにバイラールは頭を抱える。ノーヴァは倒れている吸血鬼を観察する。
ノーヴァは、イニティウムの腕を掴んだ時のことを思い出す。
(あの時、イニティウムからは焦りも感じ取れた。それも蝶や実経だけじゃなく、三傑の姿)
「バイラール、セアはどんな人なんだ?」
「んー…姐さんは、え~っと…」
バイラールの在りしの記憶、
『バイラール、あそこの悪魔始末しといて』
『精霊の海まで送れ…あ? 空間能力? 今から闘いにいくのに無駄な労力使いたくない』
『風呂借りる』
偉大な人のはずなのに、バイラールの記憶の中では無茶振りを押し付ける、という印象が強すぎて何て言えばいいのだろう
「………強かったぜ!」
捻りにひねり出した言葉。これ以上はなんもでん。
(あー! ダメだこりゃ…それじゃないって顔だ! でも、ごめんな! これ以上言うと殺されんぞ! 姐さんに!)
ノーヴァの満足していない顔にバイラールはどうにかして話題をそらそうとする。
「華蛇とミューズ見に行こうぜ」
ノーヴァの背中を力ずくで押して、邸へと二人は向かった。
(素晴らしいわ! 御姉様があれだけ…お怒りになるなんて!)
クヴァレの城に戻ってきたラミアは、左腕を血みどろの右腕に添えながら歩く。
「おや、まあ…随分なご挨拶だね」
「五月蝿いわ、最高よ! 無頓着があれほど感情を出すなんて…ああ! 早く会いたいわ」
興奮状態のラミアは話が通じない。アグネスがラミアの右腕を治す。
「それよりも、仕事は出来たんだよね?」
「とっくのとうに終わってるわ…仕事さえすれば後は自由なんでしょ?」
「…傷だらけ、困るわ」
「仕事をしているならいいさ…そろそろ、こちらも進めようか、神の復活を」
「異常がない?」
邸に戻って、島の確認をした二人からは驚きのことを聞いた。
「ああ、異変どころか…あたしの華も元気だった」
(あれがなにもしていない?…明らかにおかしい)
バイラールが考えていると、ノーヴァはフッと笑う。
「いいじゃないか…こうして兄弟で茶が飲めるんだ」
ノーヴァはミューズの淹れた茶を堪能する。バイラールもつられて笑みをこぼす。
「お兄ちゃん、次はどこに行くの?」
ミューズの質問にノーヴァは縁を指でなぞりながら考える。ここでのミッションは片付いているので次に行きたいが、どこに行けばいいのだろうか。
「そろそろライラに会ったほうがいいんじゃねーの?」
「元祖じゃないからなぁ…あんまり危険なことに巻き込みたくないんだよな」
「でも、あんたの娘のことあたしでも知ってるよ…人類最強の狙撃手、有名だよね」
華蛇の言葉にミューズも無言で何度も頷く。それを見たノーヴァは決心する。
「それじゃ、1000年振りの親子の再開といこうか」




