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NO PAIN~女神は眠りの中に~  作者: おじゃっち
3章 交易の海
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11話 罪滅ぼしの痛み


私が書きたい場面の一つです!

「華蛇、貴方には死んでもらいます」

イニティウムの発言に華蛇はうつむきながら目を細め、ミューズは驚きのあまりハープを持っている手に力が入らない。

「今、ラミアと華蛇の魂は連動しています。それならラミアではなく、華蛇を殺せばラミアも死ぬ。そういうことですよね?」

イニティウムの推理は合っている。だが、仮にも姉妹、しかも華蛇とミューズを育てたのはイニティウム。どうやったら、簡単に殺すという決断に至るのか…

「まあ、自死なんてできないでしょうね。一息に私が殺りますので」

イニティウムは血で作った槍を手に持って華蛇に歩み寄る。

「待って! お姉ちゃん! そんな簡単に、」

「こいつを仕留めることが優先事項…」

ミューズが必死に止めるなか、イニティウムは槍を華蛇の首の上に刃を運ぶ。

(まずいわね。魂の連動を解くにしてもあと3分は時間を要する。御姉様は本気なのよね)

ラミアが冷や汗をかいているのも、ミューズが止めるのも無視してイニティウムが槍を下ろす瞬間、パシッ、とイニティウムの腕を掴み、イニティウムの動きを止めた。イニティウムは、はあー、と深い溜め息をこぼして睨みつける。

「なんの真似ですか? ノーヴァ」

睨みつけてはいるものの怒りを感じることはない。ノーヴァは手に力をいれて、ラミアを見ずに話す。

「契約だ。華蛇との連動を解け。見逃してやる」

「あら嬉しい。それじゃあね」

ノーヴァが契約を持ちかけると即了承して、ラミアは逃げていった。イニティウムはノーヴァの手を振り払い、舌打ちをする。

「とうとう落ちぶれましたか」

「いや…それを決めるのは」

「ええ、そうですね」

イニティウムの持っていた槍が騎槍に変化していく。ノーヴァは山金造波文蛭巻大太刀を取り出す。

「「兄弟喧嘩だ」」


昔、まだ兄弟が揃っていなかった頃、年長組が珍しく言い争っていた。それはいつしか決闘にまで発展していった。

本当に大変だったことを覚えている。いつも仲の悪い兄や姉、妹、弟もこの時だけは協力して仲介に入っていた。

そこから決まりができて、決闘ではなく、喧嘩という名目、そして、武器のみ。


あの日から見たことがない喧嘩、それが今、起こるという現場を見て、ミューズは動揺を隠せないでいる。

堕神を倒して走ってきたバイラールが華蛇をお姫様抱っこして安全な場所まで移動させて、ミューズにもこっちに来いと指示する。

ガチン!

刃同士が当たる音、そして軋む音。ノーヴァはいなして、素早くイニティウムの後ろを取る。しかし、石突でノーヴァの腹を突く。それと同時に石突が壊れた。

(頑丈ですね)

(…少し変わったな)

「なぜ逃がしたんですか?」

「華蛇が死ぬところだった。それに仕留める場などいつかの機会がある」

「そう言って、そう言って、死んだのはどこの誰ですか? 私達があの時根絶やしにできなかったから、今も争いが絶えず行われているんです!」

「だから、俺が動いているんだ!」

ノーヴァが正面から振りかぶる。イニティウムは柄で受け止める。ぎちぎち、と音を立てていて、イニティウムの方はいつ壊れてもおかしくない。

「この理想主義! 現実を見ろ。それでなくても他の解決策はあるでしょう」

「…お前の長も理想主義だ」

(あっ、やべ)

ノーヴァの言葉を聞いたイニティウムはピタリと止まる。バイラールは終わった、と思いながら被害が来ないように移動した。

「この結界は、セアの理想が実現したものだ。だがいく先々で否定した、お前も例外ではなく。お前の今の行動は罪滅ぼしだ!」

ノーヴァが真剣な顔をして言うと、イニティウムの力が強くなって押し返されそうだ。

「そうよ」

ガキン、と音が鳴って攻防の体勢が崩された。

(分かってる。初めて聞いたとき無理だと思った、いくら長といえど旅に出たら諦めてくださると、そう思っていたのに…)

「あの方はそれを成し得て死にました。いくら実現しても身を滅ぼすだけ。だから私は理想なんて嫌いです」

「だから確実な方法を取る。理想も採る。それでいいのか!?」

話をしていても喧嘩の手を止めない。

「有望な人材が居なくなるよりはマシです」

「…やはり、お前は違うな。有望な人材という未来を見ているんじゃなく、要望な人材が居なくなるという過去に執着している」

ノーヴァが土を投げて目眩ましをする。よろけた一瞬で刀に力を込めてイニティウムの槍を壊す。

過去(過ぎ)ではなく、未来()を求めろ」

その言葉を聞いてイニティウムは昔のことを思い出す。

白に近いようなシルバーの髪が夕日の光を反射している。長が岩の上に座って怪我した足を洗っている時に、

『馬鹿らしい?』

珍しく仕事以外で長の方から声をかけられた。その時はなにも言えなかった。差し出したタオルで足を綺麗にする。

『確かに理想で身を滅ぼす。だが、その理想とやらが現実の先、未来を創る…』

『私は現実を見ていたいです』

それを聞いた長はフフッ、と笑う。

『目の前の理想は否定してもいい、摘み取る

な…理想(馬鹿)によって未来(常識)が創られる』


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