中傷の名月
「光一さん。」
鈴を転がすような声がした。
そこにいたのは、狐耳の少女。
「ミレイちゃん!」
彼女は、稲荷町という街の牧師さんだ。
どうも、彼女の祝詞は独特だ。
なんか・・・
牧師さんなのに、お稲荷様なのだ。
狐が十字架を抱いたようなロザリオを、首にかけている。
「今日は満月・・・
中秋の名月ですよ。」
「風流だなあ・・・」
・・・と、いうわけで、稲荷神な牧師さんと、お月見をすることになった。
ここは、近所の丘。
「いやあ・・・
まさか、稲荷神のお膝元に教会があるとはねえ・・・」
僕が、月を見上げながら言った。
「まあ・・・
私は母が外国人の牧師で、弟子の稲荷神と結婚したんですよ。
むしろ、教会側が承諾したのには驚きましたけど。」
その辺、稲荷神の御社様はむしろ最初から乗り気だったようだ。
月が昇ってきて・・・
ものすごくいい雰囲気になってきたころ・・・
ミレイちゃんは、持参のポテチを食べていた!
「ん!?」
ふと、月を見ると・・・
「今日は中秋の名月だな!」
とか・・・
「最近の首相はアホ!」
とか・・・
なぜか、書き文字が!
それも中傷の文句なのだ!
「え!?
これは・・・」
さすがにミレイちゃんも、固まっていた!
「これじゃあ・・・」
げんなりした声で、口をそろえて言った・・・
「「中傷の名月」だ!」
いい雰囲気が台無しだった!
ここで登場するミレイちゃんは、「猫耳女王」のミレイちゃんです。