俺達は詰んだ!
料理スキルを磨こうと決めた俺達はとりあえず入れる町を探すため歩き出した。
「とにかく今日はここで寝るか。何かあったら海頼む」
「任せといて下さい!」
俺達は順番制で仮眠を取る。
一番最初は俺が取り最後に海に取ってもらう。
「じゃ、俺は寝るわ」
俺はその辺に寝転がり眠る。
______________
『迷える人間の子よ』
んあ?
『私は女神【セレネ】、アナタ達をこの世界に召喚した者』
お前の仕業か
『仕業って。まぁ、そうね』
何で俺達をこの世界に?
『適当に暇そうな人を召喚した』
誰が暇人だ。
『朝起きたら知らない世界に飛ばされてさぞビックリしただろう』
ああ、何で朝なんだよ。大体ああ言うのはおきてる時って相場が決まってるだろ。
『仕方が無い、私の能力は満月の日の夜12時にならないと発動が出来ない』
何だよどっかの童話にありそうな設定は!
『アナタ達には使命がある』
おい待てコラ。お前、さっき俺達のこと暇人って言った上に適当って言ったな?
『はて?』
お前、女神の座降板しろや!
『落ち着け人間』
お前がツッコミどころ満載なんだよ!
『まったくどの世界の人間も煩いなぁ』
あ、やべっ、そろそろ起きなきゃだ。じゃな
『あ、話はまだ終わってなーい!!』
______________
「お兄、二分遅い」
「悪い、変な夢見てた」
「ふーん、私も寝るね」
「おう」
波はその辺で丸まりやがて寝息が聞こえてきた。
______________
『迷える人間の子よ』
....。
『わ、私は女神【セレネ】、アナタを召喚した者』
....。
『え、寝てる?』
....。
『夢の中でも寝るの?』
....。
『....』
何?
『あ、起きた。アナタ達には使命がある』
だから?
『その使命を果たしてほしい』
え、面倒
『ほら、チョコあげるから』
チョコ一番嫌いなお菓子なんだけど
『贅沢言うな!』
そんな事よりも質問していい?
『良いぞ』
どうしたら町に入れる?
『アナタ達は町に入りたいの?』
まぁ、寝る所も無いしお金も無いから働けたらなって。
『ふーむ、あ』
何?
『すまん、特典を付けるのを忘れていた』
特典?
『そう、アナタ達の世界の漫画やアニメ?には異世界特典というものがあるのでしょう?』
うん、まぁ、基本は?
『私達の世界にも特典は存在する』
ふーん
『今からアナタ達に特典をあげよう』
一人一つ?
『いや、三人で一つ』
ケチるな女神が
『煩いわ!特典貰えるだけでもありがたかく思いなさい!』
あーもう、分かった。とにかく起きなきゃだから
『アナタもなのーー?!』
_________________
「おう、起きたか」
「お姉ちゃん交代かと!」
海は波の前にバンッと飛び出す。
「うわ、ビックリした」
「お姉ちゃん、さ!早く!」
波はスッと立ち上がり海と交代する。
「スヤァ」
海は寝転ぶなり一瞬で寝息を立てた。
________________
『迷える人間の子よ』
私の名前は【長谷川 海】なのです!
『....私は女神【セレネ】、アナタ達兄妹を召喚した者』
へぇ、神様って漫画やアニメの世界でしかいないと思ってました!
『ふふ、実在するのよ』
所でどうして私達をここに?
『アナタ達には使命がある』
使命?
『そう、今ここにいる私は幻像に過ぎない』
幻像?
『ええ、本物の身体はどこかに封印されているの』
それは大変かと
『そう大変なの』
それで?
『そこでアナタ達には私の身体を見つけてほしいの』
んー、お兄ちゃん達に相談してみます!さようなら!
『え、ええ。長谷川兄妹はよく似てるわね....』
________________
「おはようございます!」
海が起きるともう早朝だった。
「おう、おはよう。飯にしようか?」
俺は昨日、姫騎士から貰った食料を漁り料理しなくても食べれそうな物を探した。
「パンがあるな」
俺達は一つのパンを三等分して食べた。
「そういえば夢で女神にあったんだよ」
「私も」
「私もです!」
マジか、同じ夢見てたのかよ。
「何かよ、「召喚したのは私だ」って言ってた」
「あ!お兄ちゃん。私も聞きました!そこで「私の身体を探してほしい」と!」
それぞれ聞いたことが違うのか? そういえば使命があるとか言ってたな。てか、私の身体を探してって使命じゃなくて頼み事だろ。何を格好良く言ってんだあの女神。
「私は異世界特典をお兄達と考えろって」
「お前それを早く言えよ!」
「聞かれなかったし」
「ま、まぁ、そうだな」
「で?どうする?三人で一つなんだけど」
女神のクセにケチだな。
「やっぱ調理器具じゃないか?」
調理器具が無いと料理が出来ないしお金も貯められないというか町にすら入れてもらえない。
「じゃあ、それで」
俺達は異世界特典を料理器具に決めた。
「しかし、どうやって女神に頼むんだ?」
「もう一度寝るとか?」
「もう朝はバチバチに目が冴えているかと!」
「だよな、夜でいいか」
俺達はとりあえず朝食を終えた。
「しかし、行くところも無いな」
「お兄のせいで町二つ出禁だからね」
「俺の責任、だな。うん」
「どうするんですか?これから」
確かにどうしよう。町に入れないんじゃ....
俺達が困っていると一人の青年が通りかかった。
「大丈夫、ですか?」
その青年は俺達に声をかけた。
「ああ、いえ。お構いなく」
「いえ、ボロボロな人を見て放っておくなんて僕にはできません!」
おお、なんと好青年!
「お話、聞かせてもらっても?」
「はは、すみません。俺達は遠くの町から来てお金も底を尽き、残りの食料を食い繋いでここまでやって来ました、ですが他の町に入れず困っているんです」
「なる程」
すると好青年は難しい顔をする。
「他の町から違う町に入るには冒険者カードがいるんですよ」
え、何それ初耳....
「それってどこで作れる?」
波が好青年に問う。
「町と別に冒険者ギルドっていうのがあってそこに申請するんだよ」
「そこはどこにあるんですか?」
海が礼儀正しく問う。
「ここから少し離れた所に小さな小屋があるんだ。そこが冒険者ギルドだよ」
「はへ〜」
「良かったら案内しようか?」
「いいんですか?」
「勿論」
俺達は好青年に着いていき冒険者ギルドに向かう。
これで町にも入れるな!
と思ったのも束の間
「住民カードを提示下さい」
んなもんねぇよ。この世界にそんなもんあるんだな。ビビるわ。
「無い場合って....?」
「冒険者カードをお渡し出来ません」
....。
「他に方法は??」
「ありませんね」
詰んだ。完全に詰んだ!
「俺達、住民カードを紛失していて....」
「..ですが無いのならば冒険者カードは....」
「そう、ですか」
俺達は肩を落とし冒険者ギルドを出る。
「すみません、折角案内して頂いたのに」
「い、いえいえ!大丈夫ですよ!」
俺達は好青年と別れた。
「たは〜、どうしようか」
「特典を住民カードにする?」
「それだと俺達がいた世界の住民カードを渡されるんじゃないか?」
「やっぱり美味しい料理を振る舞ってあげるしかないかと!」
「そうだな」
詰んだな、俺達は....