町から追い出されたのかと! わかってるわ!
俺達は町に入るなり捕まった。
理由は「怪しいから」。
どこの世界も怪しければ捕まるらしい....
「これはお兄が悪い」
「何がどうしてそうなった。経緯を教えろ、俺が悪いということになった経緯を」
「お兄の見た目がキモいから」
「おいてめぇ!それ、完全に独断と偏見だろうが!」
「まったくその通りじゃ」
おいこら、王様らしき人。
納得すんな。
「お兄ちゃんは別にそこまでキモくないかと?」
"そこまで"って海、キミはいつもギリギリフォローになってないんだよな。実は俺のことめっちゃ嫌い?
「はぁ....我が妹達よ、俺のこと兄だと思ってる?」
「思ってない」
「即答すんな!海は、お兄ちゃんだと思ってるよな?」
「........うん!」
「何?!今の間!」
一話目の海の紹介が一瞬で矛盾したよ!?[兄を慕ってくれる]
って紹介したんだけど?!
「ごほんっ」
王様らしき人の咳払いで俺達は静まり前を向く。
「貴様らは何者かな?」
え、これどう答える?
「異世界召喚されました」って素直に言うか?いや、信じてもらえないだろ....
「他の町からやって来ました」もダメだ....無一文なのがバレたら怪しまれる[現在も同じ]
すると海が立ち上がって
「待て、海?お前は口を開くな?」
どうやら遅かった。
「気付いたらここにいたので異世界召喚かと!」
ん〜アホ!
「むふっ!」
ドヤ顔やめろ、「言ってやりましたよ!」って顔だろ?それ。
今、お前のせいで一気に警戒されたぞ?多分。
「..ふむ、頭がおかしいのは分かった」
「これは嘘じゃないかと!」
確かに嘘では無い。
だけど、そういうのが通用しない世界もある。
「しかし、怪しいな。どうするべきか....」
処刑か?いや、流石に無いだろ....
ここは一手打つか....
「お、俺達は遠くの町からここまでやって来て、お金が無くなり食料も無くなりました!そして、怪しみながらも俺達を拾ってくれた」
「拾っては無い、怪しいから捕まえたのじゃ」
「....」
俺は笑顔で固まる。
「で?」
「俺達、実は料理人でして..お詫びに料理を振る舞わせて頂きたいと....思っていまして....」
「ほう」
すると波が小声で
「お兄、馬鹿なの?私達は代々料理音痴の家系だよ?レシピ通りにやっても上手く出来ない食材を無駄にする家系だよ?」
「仕方ないだろ....この場を切り抜けるにはやるしかない、異世界に召喚されて料理が上手くなってるかもしれない!」
ということは無かった。
「貴様ら、どうしたらこんな不味いものを作れるのじゃ」
あー、これ処される?
「そ、それは王様の舌が馬鹿なのかと!」
やめろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!
馬鹿でアホはお前だぁぁぁぁぁぁぁっ!追討ちかけんなぁぁぁぁぁっ!
「貴様ら、もういいわ!」
ああ、処される処される処される処される処されるぅぅぅぅぅぅっ!
「この者たちをつまみだせ!」
あ、追い出されるだけで住んだ。
良かった。良くはねぇな。
「お兄ちゃん、海達、追い出されたかと!」
「わかってるわ!」
さて、どうしたものか....お金も食料も無い俺達....このままでは死一直線....
「お腹減った」
波がそこに倒れる。
「その辺に何か落ちてないかな?」
「お兄、汚い」
「仕方ないことかと」
その「仕方ない」はどっちの仕方ないだ?食料ないからその変のもの拾うのが仕方ないのか、俺が汚いといえのが仕方ないのか。俺が汚いのが仕方ないってなんだよ。
「まぁ、確かに衛生的に良くないな。せめて調理できたらな我慢して食えるんだけど」
「ねぇ、ここは異世界だから私達魔法使えたりしない?」
「なるほど、やってみよう」
俺は手を前に出してみる。
「火を起こせたらいいんだよな?」
「火使えなきゃ調理出来ないでしょ馬鹿なの?」
「わかったよ、俺が悪かった」
俺は渋々引き下がり「ファイヤーボール」と言ってみたが何も起こらない。
アニメや漫画みたいにはいかないか。
「お兄、火魔法適正無いんじゃない?」
プッと波が笑う。
「じゃあ、お前やれ」
「....ファイヤーボール」
シーンという効果音が響いた気がした。
「ダメじゃん」
「お兄と一緒だ。お嫁に行けない」
何で俺と同じならお嫁に行けないんだよ。そろそろ俺に失礼だぞ。ぶっ飛ばすぞ。
「ファイヤー....」
「やめとけ海、無理だ」
「そうそう、アニメや漫画みたいに上手くいかない」
「ボール!」
すると海の手から火の玉が放たれた。
「「えぇ〜」」
俺と波は啞然とした。
「今の出たかと!」
「どうやら海には火の適正があるみたいだな」
「それはいいけどお兄」
「ん?」
波は真顔ながらもプルプル震え町を指差す。ま、まさか....
「海、町の方に放ったよ」
これ、絶対、追い出された腹いせだと思われるやつだ....
「走るぞ!」
俺達は一目散に逃げた。
「はぁ、はぁ、ここまで来たら大丈夫だろ」
「お腹空いたかと!」
「だな、腹減ったな」
「もうダメ、死ぬ」
「死ぬな」
俺達がもう力尽きそうで寝そべっていると木の上から何かが落ちてきて俺の顔に直撃した。
「いってぇ!」
俺は顔を押さえジタバタする。
「お兄これ、木の実だ!」
波が口に入れる。
「え、あぁ、そうなの?」
俺も一口パクリと口に入れる。
「おお、この口いっぱいに広がる甘酸っぱい感覚!苺みたいだな!」
「美味しいです!美味!美味!」
「ふむ、使えるな!」
「お兄これを調理するの?そんなことしたら味が」
「いや、包丁も何も無いんだ。今は無理だろ」
とにかくまずは町に入って色々と揃えないと....しかし、お金が無いな。どうするか。
「お兄、とにかく木の実を全部採ろう」
「そうだな」
俺達は木の実を全て採ってとりあえず地面に置く。
「入れる袋が無いな」
「どうします?」
「全部食べる?」
「いや、食べ切ってしまえば当分の食料が無い」
「じゃあどうするの?」
「次の町が近ければいいんだが」
俺は遠くを見つめる。
一つ小さな町がちょこんとあった。
「俺が袋を貰えないかあの町に行って確かめてくる」
「お金も無いのに?」
「そこはー、考えがある!」
波に「あっそ、期待はして無いけど頑張って」と言われ、俺は出発した。
二時間程歩いた所で町に着いた。
「少し日が暮れてきたな....」
俺は急ぎ足で町に入る。
すると二人の騎士が俺を停める。
「見ない顔だな、何者だ?」
ふっ、今こそ俺の漫画で鍛えられた演技を見せる時!
「おっと、これは失礼!私は旅の者でして、ここに来るまで何ヶ月とかかりお金も食料も無くしてしまいました。見てください私のこの懐を....」
俺は懐を開け残り少ない木の実を見せる。
「なるほど、そうか」
「はい」
「そしてここに何しに来た?」
「少しばかりの食料を分けてほしく....」
俺が苦笑を漏らしていると騎士が鼻で笑った。
「ふっ!貴様の様な者にくれてやる食料は無い!」
「な!騎士が貧しき民に言うことですか!?」
「我らが知ったことでは無いわ!」
俺は突き飛ばされる。
「残飯でもいい!売れ残りでもいい!なんならカスだけでもいい!それを袋にありったけ詰めていただければ〜っ!」
俺は騎士にしがみつきわざとらしく泣く。
「ええい!離せ!」
俺は負けじとしがみつく。
「何だ、コイツ!力強いな!」
俺と騎士が揉めあっていると後ろから女性の声が聞こえた。
「何をしている?」
その声を聞いた瞬間、二人の騎士はピシッと姿勢を正す。
「まさかお前達、罪なき民をいじめているわけではなかろうな?」
おお、ありがとう。女の人。
「い、いえ!姫騎士様!その様なことは!」
「こ、この者が食料を恵んでくれと言うものなので!」
「言ったからなんだ?」
「す、すみませんでした!」
「はぁ」
姫騎士様は溜息を着く。
「すまないな、罪なき民よ」
姫騎士様は俺に食料の入った袋を渡す。
「これをやる」
「あ、ありがとうございます!なんとお礼を申したらいいか!」
「お礼はいらない」
なんて優しいお方なんだ!姫騎士様大「だからもう私達にこの町に関わらないでくれ」嫌いだぁぁぁぁっ!
「くそっ、追い出された![入ってもいない]」
俺は町に中指を立て波と海の元へ戻る。もう日が暮れている。
「やべっ!」
俺は全力で走った。
「お、お兄ちゃん。その食料....」
「ああ、これか?」
俺は袋を持ってニッと笑う。
「お兄、いくらなんでも万引は....」
「待てよ!なんでだよ!」
「お金がないからかと....」
うん!確かに!
「違う違う、これはあの町のクs姫騎士様がくれたんだ!だからもうあの町にはいかない!」
「なんで?」
「..騎士がクソだったから!」
「酷い言い様です」
「お兄がクソ」
「お前らの方がずっと俺に対して酷いわ!」
「とにかくお兄はあの町からも追い出されたと」
「やかましい!とにかく、食料は手に入ったんだ。暫くは困らないさ」
「確かに、木の実も入れとこう」
波が入る分の木の実を入れる。
「あとは包丁かナイフがあれば最高だな」
「料理、する?」
「食料が一瞬であの世に旅立ちます」
「じゃあ、まず俺達が町に入れたら最初にすべき事は....」
「「「料理スキルを磨く!」」」