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3. 男の正体

 光がおさまったのを感じ、恐る恐る目を開けると景色は一変していた。

 夢で見た世界観にピッタリの部屋の中。


「ここは……?」


 一瞬、体が強張りはしたものの、牢屋でも断頭台でもなく、綺麗な寝室。

 いや、作りは綺麗だが掃除が行き届いていないのか埃っぽい。


 私は床に座ったままで辺りを見回す。


 さっきまで、体も態度も大きかった王子似のイケメン男は、いつの間にかベッドの中に居るではないか。


「は? ちょっと、なんで寝てるんですか!」


 文句を言いながら近付くと、寝ている男の姿にギョッとする。


 確かに、イケメン男の面影はあるが完全に病人だ。

 透けていた状態だったから、よく分からなかった……とは思い難い。

 明らかに顔色は悪く、うっすら開いてる目は虚ろで、体は老人のように痩せてハリがない。


 まじまじと見ていると、乾燥している口元が動いた。迷いつつも耳を近付けた。

 

「……浄化を……」


 やっと聞き取れるくらいの小さな声。


「浄化? よく聖女とかがやるやつですか?」


 しらばっくれて言った私に、男は力なくコクリと頷いた。同情はするが、無理なものは無理。


「いやいやいや。私、普通の日本人だし。聖女なわけがな……」

 

 言い終わる前に、手にしていた指輪がまたも光り、勝手にスポリと指に嵌った。


 まさか……。


 嫌な予感は的中し、その光が私の中に入っていく。

 全身に何かが(みなぎ)る感覚がした。少しすると光は収まり、違和感もなくなる。


 それをベッドから眺めていた男は、弱々しく私に手を伸ばしてくる。


 さすがに、病院勤めの私が病人の手を払うことなど出来ない。仕方ないと思いつつ、自然にその手を取ってしまう。


 すると――。


 またも指輪が反応したのか、触れていた部分がポワンと温かくなった。

 柔らかな温もりは、私から男の手へと流れて行き、今度は男の体が発光するかのように淡く輝く。


 信じられないことに、落ち窪んだ男の瞳に生気が宿り、弱々しく握っていた手に力が込められた。


「……やはり、お前が聖女で間違いない」


 顔色は良くなったが外見は痩せ細ったまま。

 なのに、起き上がるや否や、男は出会った時の口調で言った。とはいえ、弱々しさは残っている。

 

「聖女だなんて、そんなバカな」

「これが、証拠だ。……お前の名は?」


 指輪をした私の手を握ったまま、とんでもないことを言う。

 薄々感じてはいたが……私が誰だか知らないくせに、ここへ連れてきたのだ。自分勝手すぎて呆れてしまう。


「人に名前を聞くなら、先に名乗るべきじゃないですか?」


 キッと睨む。これが職場なら、愛想笑いで内心のイラつきは隠すが、ここは違うのだから。


「……ああ。聖女に失礼だったな」


 少し考えるように男は言う。


「いや、だから聖女じゃ……」

「俺はこの国の第一王子、ベルトラン・ボナハルトだ」

「第一王子?」

「そうだ。それでお前は?」

「花巻……琴音です」

「いや、それじゃない」

「それじゃないって?」

「この国に縁のある名が有るはずだ」

 

 ……まさか、あの浮かんだ横文字の名を言えと?


 適当に誤魔化せる雰囲気ではない。

 相手が本当に王子なら、どんな罰をうけるのか分からないのだから。

 しぶしぶと、私には似合わない名を口にする。


「クリスティナ。クリスティナ・シャテルローです」

「……やはりか。シャテルロー公爵令嬢……弟を知っていて、似た俺に驚いたんだな」


 微妙な笑みをこぼした男に、ムッとなった。私にもちゃんと説明してほしい。


「何を勝手に納得しているのですか? 私を無理矢理連れてきたのだから、説明する義務があると思うのですがっ」


 怖いが強気に言ってみた。


「クリスティナ、そなたの言い分はわかった。説明はするが、必ず俺の力になってもらう。異論は受け付けない」


 揺るがない男の視線。

 お前がそなたにランクアップしたが、そんなのはどうでもいい。


「な……なんて横暴なっ」 

「その代わり、そなたの身は俺が守ると誓おう」


 断頭台の光景が脳裏をよぎる。

 確か、あの場にこの男の姿は無かった。私に向けられた真剣な眼差しを信じてもいいのだろうか。


「……誓うって。じゃあ、私を殺しませんか?」


 一方的に利用されるなんてごめんだ。安心できる言葉が欲しい。


「ああ、約束しよう。なんなら神に誓ってもいい」

「神にだなんて……」

「そもそも、そなたの元へ俺を行かせたのは神だからな」


 チラリと私の指先に視線を落とす。


 ()()()()()()のだと、第一王子ベルトランは話し始めた。




 

 


 

お読みいただき、ありがとうございました!


そして誤字脱字が多くて本当に申し訳ありません!

ご報告ありがとうございましたm(__)m

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