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清明四 梟の獣人

 「ふう、これで何とかなるかねえ。承の助、お手柄だったね。」

 お佳さんを休ませに行った師匠は縁側に戻ってきて、鈴木に笑顔を向けた。

 「僕は、少しは役に立てたんでしょうか。」

 「もちろんさ。お佳ちゃんは万吉にもしものことがあればって、それは心配していたからねえ。

 それにしても精霊が人探しに力を貸してくれたなんて、凄いことだよ。確かにこの世界は精霊の恩恵を受けている。でも個別のお願いを精霊が聞いてくれることは滅多にないんだよ。」

 そのとき、玄関から「御免ください」という声が聞こえた。

 「誰だろうねえ。今は取り込み中なんだけどね。」

 師匠が玄関に行くと、そこには小柄な女性がいた。

 小柄でも猛禽のような鋭さを感じさせるのは、練色地に弁柄色の手蜘蛛絞り、憲法黒茶の帯という着物のせいだろうか。帯には笹と小鳥の柄が染められている。

 「突然お邪魔して申し訳ありません。私は近所の長屋に住んでいる青葉と申します。私の友人の雀の獣人の女の子が、一昨日から行方が分からなくなって、探しています。妙に思われるでしょうが、ここに来れば、手がかりが見つかる気がしました。」   

 「確かにうちの人は市役所で護民官をしていて、攫われた獣人たちを助け出す算段をしてるよ。ここで手がかりが見つかる気がするってのは不思議な話だけど、友人が行方不明なら心配だろう。さあ上がっとくれ。」  

 師匠に一礼すると、青葉は草履を脱いで家に入ってきた。

 青葉は師匠について縁側まで来ると、鈴木を見て目を見張った。

 「ああ、貴方が鍵となる人ですね。予知したとおりです。」

 予知って何のことだろうと鈴木が固まっていると、青葉はいったん目を伏せてから、鈴木を見つめた。

 「失礼しました。私は青葉と申します。貴方と同じように、私も最近異世界からこの世界に参りました。

 私はもとの世界では梟の獣人族の巫女をしていまして、ときどき予知夢を見るんです。昨晩、この時間にここに来て貴方に会い、行方不明の友人の手がかりを得るという予知夢を見たんです。」

 鈴木は梟の獣人と聞いて驚いた。しかし、言われてみれば、青葉の目は普通の人より大きくて丸く、さらに白目の部分は薄い黄色だった。

 「ふう、不思議なことは続くもんだね。ここにいる継之助は精霊師として覚醒して、精霊の力を借りて獣人たちの居場所を見つけたばかりさ。次は予知のできる獣人さんかい。異世界人は特殊な知識やスキルを持ってることがあるって聞くけど、精霊師や予知なんて聞いたことなかったんだけどねえ。」

 師匠は肩をすくめた。

 「まあいいさ。もうじきうちの人が役所から救出部隊を連れて帰って来るだろう。青葉さんも一緒に行くかい。」

 「はい、ぜひご一緒させてください。」

 青葉の御礼に応じてから、師匠は鈴木を見て複雑そうな表情をした。

 「しかし、役に立てないと悩んでいたあんたがこんな活躍をするとはねえ。特に役に立てなくたって、この世界で楽しく生きてくれりゃあと思ってたけど。この世界に来たのは、何かの思し召しかもしれないねえ。」


 やがて護民官が部下である警備隊員を六人連れて帰ってきた。

 護民官は人々を守るのが仕事だが、法に反して悪事を為す者たちを逮捕する権限も与えられているとのことだった。

 警察の役割と重複するところもあるので、両者はライバルのような関係らしかったが、今回は護民官は警察にも頭を下げに行ったようだった。

 「取り敢えず市役所にいた隊員を連れて来た。外出しているのもいて人数は少ないが、隊長はいる。警察も後から来てくれると言っていたし、手遅れになるのは避けたい。みんな、行くぞ。」

 護民官の声に応じて隊員たちが出発する。

 隊員たちと一緒に訓練しているお佳さんは戦力として同行し、鈴木と青葉は関係者として付いていかせてもらうことになった。

 「行ってらっしゃい。」

 護民官の背中に向けて、師匠は火打石を打ち、切り火をした。

 



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