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ヒロイン

「くらいやがれー!」


渾身の叫びは、町中に響き渡るぐらいの勢いであった。

どちらもターゲットに命中させることができた。


「まっ、前が見えない。」


作戦は、相手の目もとに泥を打ち込むことであった。

視界を奪うことができれば、少ない時間ではあるが、動きを封じることができる。

そこを狙えば、圧倒的な力の差のある相手ではあるが、抗うことができる。


俺は、即座に鬼の元に接近し、魔法を打ち込む準備をする。


「鬼、お前の敗因は俺たち人間をなめすぎたことだ。この至近距離なら、俺の魔法でも大ダメージを与えられる。くらえー泥魔法、泥破裂マッドバースト!」


「ガㇵッ」


鬼はその場に悶え、そして倒れこんだ。

どうやら意識を失っているようだ。


「よしっ止めだ。泥魔法…」


魔法を打ち込もうとした瞬間、鬼の地面から空間が出現した。

これはなんだ。アイツはこんな魔法を使えないはずだ。

どうやら、もう一人鬼がいるようだ。


しかし、攻撃性の高い魔法ではなさそうだ。

俺たちに危害を加えることはまずできないだろう。


「勝ったんだ。この魔法でも、使い方次第では、どんなに強い相手にでも勝機を見出せる。コピー魔法は最強の魔法だ。」


世間が認めないなら、認めさせればいい。

俺はコピー魔法のことが好きになり、もっと練度を磨いていこうと決意した。



「旅人さん、助けていただきありがとうございます。」


黒髪にポニーテールのかわいらしい少女が、俺に話しかけてきた。


「いえいえ、お怪我はありませんでした?」


「この通り全然元気です!私の名前はアカリです。旅人さんのお名前を教えていただけないでしょうか?」


「俺は、ミラです。」


「ミラさん、是非うちにいらしてお礼をさせてください。私の家はパスタ専門の飲食店です。うちのパスタは絶品なんですよ。」


無邪気な様子で話してくる。

そんな姿がとても愛らしくて、好感が持てる。


「ホントですか?是非食べさせてください。あとミラでいいですよ。」


「分かりました。では私もアカリでお願いします。」


こうして、俺は、アカリと出会った。



町を歩くと閑静なたたずまいの家が、見えて来るのが分かった。

“シルヴァニョールパスタ”


「ここが、私の家、兄と2人で切り盛りしているお店なの。パスタ専門のお店なんだ。」


アカリは、前の建造物を指さし、高らかに答えた。その様子は、この店のことを誇りに思っているかのようだった。


「ただいま、お兄ちゃん!」


アカリが声を上げると、カウンター越しから、金髪でキリッとした顔立ちの好青年が顔を出してきた。


「お帰りアカリ、ちゃんと頼んだものは買ってきたか?」


兄が、アカリを疑っているかのような表情で質問してきた。

彼女の持つ袋から、そんなことはないことはわかっており、彼女をからかっているかのようであった。


「もう、お兄ちゃんは私を何だと思っているの?当たり前でしょ。」


アカリは、飽きれたような感じで、兄に対し声を上げた。しかし、彼女はすぐに普段の表情に戻り、話し出した。


「あのね、お兄ちゃん。今日ね、買い物に行った帰りに、鬼に出会ったんだよ。」


「えっ、鬼?お前、大丈夫だったのか?けがはなかったのか?」


兄は、先ほどとは感情が一変したようだった。

「うん…なんともなかったよ。私ね、助けてもらったの。ここにいるミラが、鬼を退治してくれたの。すごかったんだよ。魔法をドーンとかビューンとかもう、圧倒したんだよ。」


アカリの説明がなんだか抽象的すぎて、まったくというほど理解できない。兄も俺と同じような感じであったが、大体のことは理解できているような雰囲気だった。


「旅人さん、いえミラ、私の妹を助けてくれて本当にありがとう。俺は、アカリの兄のアルジャーノだ。お礼に、是非ごちそうさせてほしい。」


「いえいえ、当然のことをしたまでなんだ。しかし、空腹で仕方ないのも事実だ。だから、この店のおすすめ商品をたべさせてくれないか。」


「いいよ。早速準備するから、あっちの席に座って待っててくれ。」


俺は、深くお辞儀をして、席へと向かった。

着席した瞬間、アカリは、俺の正面の席に腰を掛けた。


「もう少し私と話してくれないかな?この辺りには、私と同年代の友達がいなくてとても寂しい思いをしていたんだ。だから…ミラと仲良くなりたくて…」


少し気恥ずかしそうな表情を浮かべこちらを見つめていた。

その感じがなんとも愛らしかった。



「お待たせ。これが、当店自慢のパスタだ。どうだ、うまそうでよだれが止まらないだろう?」


数分後に料理が、テーブルに届いた。


「うっ…」


俺は、その料理の見た目に少しうろたえ、それから少し視線をずらした。

かかっているソースの色が水色で、その上に魔物の目玉らしきものが添えられていた。


「これ本当に食べられるもんなんです?あっっ!」


思っていることをつい口を滑らせてしまうほど、見た目がこの世の料理ではないように感じた。

だが、その質問をしたかったのは事実であった。


「あっ、これね。この店が代々受け継いできた、レシピを基に作られたものなんだ。鯖缶、にエリンギ、しめじをフライパンに乗せてそこで、、、」


作り方がアヒージョと瓜二つであった。

しかし、そのレシピでこんな異界の物が生成されるのか。

その疑問で、頭があふれ意識がショートしかけた。


「そして最後にブルーハワイをかけて…」


「えっ?」


とんでもない材料に思わず取り乱してしまった。

料理にブルーハワイなんて、聞いたことがない。

アヒージョの作り方の時点で、驚きではあるが、それに加え、欠いた氷にかける時ぐらいにしか使用されない材料を使うという、さらなる驚きで気が滅入りそうになった。


「まあまあ深い言葉は考えないで一口食べてみろって。」


俺はその言葉で、フォークでパスタをとり、口に入れた。


「うまい。」


噛めば噛むほど、味に深みが増しとても美味であった。

魔物の目玉がアクセントになりおいしさの幅が広がっていくのを感じた。

見た目以上のうまさに、フォークが止まらなかった。

数秒後には皿の中が洗った後のようにきれいになっていた。


「いやあ、うまかった。料理がこんなにうまいんだし、やっぱこの店って繁盛してるんでしょ?」


「いや…やはりこの見た目があり、お客は常連の人ばかりで、それも数人ほどで、もう毎日赤字続きなんだ。」


うまい料理が世間に理解されていないのはなんて、残念なことだ。

俺はこの味を広めもっと多くの人に食べてほしいと思った。


最後までご覧いただきありがとうございます。

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