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今日から

「誕生日おめでとう!」


俺は、16歳の誕生日を家族全員から祝福された。

この年になると、特有の魔法が発現するようになるのである。


俺の家庭は、先祖代々から続く、国を守るための魔導士一家であった。

そのため、俺は魔導士の後継ぎとして、父親から大変期待されており、長年大切に育てられていた。


「さあ、鑑定士に能力を調べてもらおう。」


父、アゲイスター=クロウリーは、興奮しながら、俺の肩をポンと叩いた。


「分かりました、父様。では、鑑定所へ行ってまいります。」


俺もまた、自分の能力を鑑定することに、胸が高鳴っていた。




俺の家から、数分歩いた場所に鑑定所は存在していた。


ここでは毎日、数百人の魔法鑑定が行われている。

今日も多くの人が、魔法鑑定のために、この場所を訪れていた。


俺は、鑑定を今か今かとはやる気持ちを何とか抑えて、長蛇の列に並んでいた。

数時間の時が過ぎたころ、ようやく俺の順番となった。


いよいよ、魔法鑑定がはじまったのであった。


「こんにちは、ミラ君、さあ早速鑑定してやろう。」


鑑定師は、俺に手を出すよう、促してきた。

それは鑑定に大事なことであると感じ、俺はそれに応じ、手を鑑定師のもとへ伸ばした。


「チュッ」


「えっ?」


突然のことで、いまいち理解することができなかったが、一呼吸を置いた後に、その状況を観察すると、やはり想像通りのことが現実に起こっていた。


鑑定師にキスされた?


しかし、こんなことを気にしている暇ではない。


気持ちを切り替え、鑑定師を見つめた。


「終わりじゃ、お前の能力、判明したぞ。」


「ホントですか?どんな能力ですか?火を出す系?時間を止める系?」


先ほどの出来事を忘れ、食い気味に鑑定士を問い詰める。


「まあ、落ち着きなさい。お主の能力チカラはモノマネ魔法じゃ。」


「こっ、モノマネ、、、」


俺は、この現状をたやすく受け入れることが困難な状況であった。

モノマネ魔法は、理論上すべての魔法を使う事ができる万能なチカラである。

しかし、どれだけその魔法を極めたとしても、オリジナルの魔法には到底敵わない。

これに例外はなく、この魔法は、誰にも勝てない最弱の魔法として世間に認知されている。


「あっ、雨か。」


鑑定所を出ると、今年度一番の大雨が降り注いでいた。

ミラはそんな雨など気にすることなく、ずぶ濡れで、自宅へと戻った。



「お帰り。ずぶ濡れではないか。ほれタオル。ところで能力は何だったんだ?」

朗らかな表情で、父親が玄関先で出迎えてくれた。


「あのー、そうですね…」


俺は、タオルで髪を拭きながら、能力について父に話すことをためらった。


「どうしたんだ?」


父は心配そうな表情で、俺に問いかけてきた。


「父様、僕の魔法は、モノマネです。ですが、この魔法でも、国を守っていきたいと考えております。」


虚偽の情報を開示するという選択肢も可能であったが、昔からの正義感で、真実を話すこととした。

心優しい父なら、俺の能力の活用法を見出してくれるはずだと思った。


「お前は何を言っているんだ。本当にモノマネ魔法なのか?冗談はよしておくれ。」


「父様、これは事実なのです。鑑定書もあり、ここにしっかりと記載されてあります。」


そうして、鑑定書を、父に差し出した。


「なんという事だ。クロウリー家はじまって以来の想定外の事態だ。お前を魔導士とすることはできない。」


父が、これほど怪訝な顔をしているのは、はじめてのことであった。

それに、魔導士になることができない?


「父様、俺は幼少の頃から日々努力を続けてきました。魔法の鍛錬は、一度も欠かさず行っています。ですので、この能力でも、魔導士としてやっていけると思っています。なので、俺を魔導士にして下さい。」


深々と頭を下げ、父に懇願し許しを求めた。


「お前はこの家には必要ない。さっさと荷物をまとめて、出て行ってくれ。」


父は、手で追い払うような身振りをした。


「父様、俺の話を聞いてください。」


父は、後ろを振り返り、歩き出した。

もう、俺には、興味が無いようであった。

魔導士になることができず、家での居場所を失った。


その夜、俺は家を出ることにした。

今後どうするかはまだ決まっていない。

もう家を出る以外選択肢が無かったのだ。


別れの挨拶をせず、ここを去るのは少々息苦しかった。

行こうと考え、隣国を目指しあゆみを進めた。


ここから俺の冒険は幕を明けるのであった。



グデリア共和国

「ねえ、兄さん、買い物へ行ってこようと思うんだけど、何か欲しい物とかある?」


少女の甲高い声が、家の中で鳴り響く。


「そうだな、コーヒーのミルクが切れたから、それを頼む。後は卵かな。今のところはこれぐらいかな。アカリよろしく頼む。」


「はい!では行ってきます。」


少女は元気に扉を開き、走りながらその家を後にした。

その明るさに兄はにっこりとした表情を見せた。



数日間、飲まず食わずで、歩き続けていた俺は身も心もボロボロであった。

もう限界だと思ったその時、俺の目の前に、国らしき物が見えた。

俺は最後の力をふり絞り、その国を目指すことにした。


数十分歩き、ようやくそこにたどり着くことができた。


「さあ、何を食べようか、ハンバーグ?グラタン?」


ようやく食事にありつくことができる喜びを隠せず声が盛れてしまう。

早速、国の中を、散策することにした。

国を見渡してみると、田畑や飼育場などが多数あり、緑豊かな町である。


「この町にいると心地よい気分になるな。」


胸いっぱいに空気を吸い込み、吐き出す動作を繰り返す。

これまでの苦難を少しだけ忘れることができたような気がした。


「キャー」


突然、少女の叫び声が俺の耳に流れこんできた。

俺は、何が起こったのか気になり、その声の元へ行ってみることにした。


「誰か。誰か、助けて下さい。」


その場に行くと、少女が倒れこんでいた。


「うぅぅぅぅ。」


猛獣のような野太い声が辺り一面に響き渡る。


「大丈夫ですか?今助けます。」


少女を抱き上げ、その場から離れようと足を踏み出した。


「誰だ、お前?」


「あっ、あれは鬼か?」


この世界には、多くの鬼が生息している。

人と似た見た目をしており、頭に鋭い角が生えている。

長らく、人間と鬼は対立しており、鬼は人間を滅ぼそうと策略を立てている。



「少女をいじめるとは、いい趣味してるな、鬼さんよ。相手になってやるよ。さあかかってこい。」


「ふん、良かろう、相手になってやる。一発で終わらせてやる。」


鬼は、技を出す構えに入った。

その様子はまがまがしく、すぐにこの場を離れたいと思うほどの殺気を感じた。


「泥魔法、黒のマッドショット


泥が弾丸のように、俺のもとへ飛んできた。

長年鍛えた成果があり、何とかかわすことができた。

しかし、直撃していれば、即死していたほどの威力であった。


「かろうじて避けれたか。だが今度はそうはいかないぞ。」


「ははっ」


勝てねえかもな。またあきらめねえと、いけねえのか。やってもないのに。やってみなくちゃ分かんねえだろ。あきらめてたまるものか。

俺は魔法を発動する体勢に入った。


「今、モノマネできるのは泥の弾丸みたいなものだけだ。どれだけ頑張ってもさっきのような威力は出ないだろう。でも、使い方次第で何とかなるはずだ。考えろ。」


「行くぞ、人間。」


鬼が、次の魔法を打つ体勢に入った。


「そうだ。あったぞ、勝機。見てろよ、鬼野郎。」



この作戦ができるのは、恐らく一回のみだ。


失敗すれば、打つ手がなくなり、敗北を喫してしまうだろう。

アイツは、魔法を繰り出した後、次の体勢に入るまで少し時間がかかる。

それは先程の一撃で理解することができた。

そこを狙う。


「あなたは、後ろで隠れてて。そこから動かないで。」


俺は少女を指さし、戦いに巻き込まれないよう促した。


「では、行かしてもらおう。泥魔法、泥破裂マッドバースト!」


弾丸のような魔法だ。

さっきの魔法と同じような感じがする。


「こんなの簡単に避けられるぜ。」


俺は、余裕の表情で作戦を実行しようとする。


「それはどうかな?」


弾丸が、いきなり複数に分裂した。

まるで流星群のような技だ。


「これは、避けれまい。」


長年、身体を鍛えていたおかげで、すべての弾丸をかわすことができた。

しかし、一つの弾丸が、少女のもとに飛んでいくのが見えた。


「あっ、危ない。」


ここで、助けることもできるが、相手にその隙をつかれて、二人とも死んでしまうかもしれない。

どうすれば…考えても仕方がない。

自分が今の力でできる最大限を引き出すんだ。

どんな最弱の魔法でも、使い方次第で最強になれるはず。


「泥魔法、黒のマッドショット。」


俺は、2つの事を同時に終わらせたいその一心で出した答えは、2つの手から別方向に魔法を打つことであった。


1つは少女に迫る弾丸へ、もう一つは、鬼の目を目掛けて、それぞれ魔法を打ち放った。


最後までご覧いただきありがとうございます。

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