第七話 少女
「」を日本語、日本語発音。『』はこちらの世界の言葉。と前に書きましたが、『』の中に日本語で書いている場合は、こちらの言葉を理解しているか、発音してみてる?みたいな感じです。
意識が浮上する。
目を開けると、昨日の部屋のベッドの上だった。
リアムが運んでくれたのかな?と部屋を見渡すが、リアムもあの狼の姿もなかった。
彼を起きて待っていようと思ったのに、しっかりちゃっかり熟睡してしまった自分はなんて恩知らずな奴なんだと項垂れた。
そのまま少しぼーっとしたが、リアムを探そうと部屋を出て、昨日説明してもらったお風呂場で顔を洗いうがいをした。
パンパンと両頬を掌で叩いて脳に喝を入れた。リビングに行くとリアムと女の子が玄関から入ってきた。
私より少し背が低く、背中の中ほどまである白銀の髪をした女の子は私に抱きついてきた。
『Bonjour!』
女の子はヘーゼルの瞳をキラキラさせて笑顔で言った。
おはようって言ってるのかな?
リアムに似た鼻筋の通った顔立ちなので兄妹だと思うのだが、2人の持つ色彩が全く違うので、2人を交互に見ながら困惑の表情で説明を求めるようにリアムを見上げた。
『Élene、Éloigne-toi』
彼が女の子を私から引き剥がした。
そして、彼は私を見ながら彼女に指をさして言った。
『リナ、Elle s'appelle、Élene』
彼女は私の両手を取ったかと思うと、上下にブンブンと振った。
『リナ、Je m'appelle Élene!Enchantée!』
「エレーヌ?、リナ、です」『よ、よろしく?』
彼女が言った「よろしく」だろう言葉を発音して、これで合っているのかとチラリと彼を見ると、彼は頷いてくれた。
エレーヌは私の髪を両手で持ち上げて、彼を見上げて何か言った。
髪、、?もしかして髪の色のことを言ってる?
『Ta couleur de cheveux est la même、noir』
彼女は片方の手を離して、今度はリアムの前髪を引っ張った。
やっぱりそうだ!兄妹の自分より彼と同じ髪色なのが気になるのかもしれない。
エレーヌの言った言葉の中で、「髪」か「色」か「黒」の単語があるはずだと、自分の髪を一房持ち上げて、『いろ?』と言うと、彼女は単語と単語を切って発音しながら、私を指差したあと、私の髪を一房持ち、スルッと掌に滑らせた。
『リナ、Tes cheveux sont noirs.』
『あなた、かみは、くろ?』
辿々しくエレーヌを真似て言うと、彼女はニコリと笑って頷いた。
『くろ?』
消去法で何となく色の部分を指しているであろう単語を発音してみた。
『Oui』と頷くエレーヌ。
そして彼女は自分の白銀の髪を持ち上げて言った。
『Mes cheveux sont blancs』
『わたしのかみは、しろ?』
彼女の髪を一房持ち上げて復唱し。
『エレーヌ、かみ、しろ?』
コクコクと頷く彼女。
次に、私はリアムを指差して言った。
『リナ、リアム、かみ、くろ。エレーヌ、かみ、しろ?』
エレーヌは頷きながら手を叩いて喜んだ。
エレーヌは私を指差した右手と、彼を指差した左手の親指の付け根同士をスッと隣り合わせながら言う。
『Ta couleur de cheveux est la même』
少し長かったが、ジェスチャー付きで彼女が何を言いたいかわかった。
さっきから同じ単語も出てくるので、聞き取れた単語を発音してみた。
『リアム、リナ、髪、おなじ?』
私も彼女がしたように、彼を指差した右手と、自分を指差した左手の親指の付け根同士をスッと隣り合わせながら言った。
『おなじ』
彼女は一度頷いて、今度は自分自身を指差した右手と、彼を指差した左手を交差させた。
『Notre couleur de cheveux est différente』
大分耳が慣れてきた。
『リアム、エレーヌ、髪いろ、ちがう』
先程と同じく、彼を指差した右手と、エレーヌを指差した左手を自分の目の前で交差させてバッテンを作りながら復唱した。
『ちがう』
胸の前で、両手の人差し指同士をバッテンにする。
エレーヌとリアムが同時に頷いた。
初めてリアムと名前を交わした時以上に、わっと自分の中から力が湧いてくるような感覚がした。
言葉を覚えることがこんなにも自分の自信になるとは思わなかった。
安心からか、グゥ、キュルルっと昨日も聞いたような音が自分のお腹を小さく震わせて鳴った。
ふっとリアムが笑った。
恥ずかしさのあまり顔を上げれないでいると、エレーヌも笑って私の手を引っ張った。
『Prenons le petit déjeuner!』
ニコニコと手を引いて彼女はダイニングテーブルに私を座らせた。
彼女が持ってきた籠には卵やパンや野菜、果物などの食材が沢山入っていた。
エレーヌはキッチンで鼻歌を歌いながら朝食を作ってくれた。
今日の朝食はベーコンエッグとパンのようだ。
すごく馴染みのある食事だなと思いなが、エレーヌも入れて、3人で朝食を食べた。
明るい彼女と一緒に食事をするのは、沈黙がなくて気まずくなかった。
昨日、彼も少し気にしていた「いただきます」に彼女も興味津々に聞いてきた。
「いただきます」「ごちそうさま」は、こちらの言葉ではないようだった。
「いたきます」「ごちそ、さま」
エレーヌが発するぎこちない日本語に、私もこんな感じなのかと笑った。
そして、「おはよう」、「おやすみ」、「ありがとう」の挨拶を日本語とこちらの言葉で教え合った。
『おいしい』『好き』『嫌い』『甘い』『苦い』も食事の最中に覚えた。
できる子、エレーヌちゃんの登場




