表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/30

第六話 青い瞳


 お風呂とトイレの使い方が分かり、お風呂では石鹸が一つ置いてあったので、それを泡だてて顔や体、髪も洗った。

 土でドロドロだと思ったが、思いのほか綺麗だった。それでもお風呂に入れたのは嬉しい。


 石鹸も爽やかな優しい香りで好みだった。



 彼の服であろう少し大きめの服は裾を何度かまくって着た。

 タオルを肩にかけて出ていくと、どこにも彼の姿がなかく、彼の名前を呼んでみるが、リビングには居ないようで、2階の寝室も覗いたが誰も居なかった。


 シンと静まり返った部屋にひとり取り残され、急に心細くなる。


 自分が寝かされていたベッドの前に座り、頭を縁に預けた。


 この家には他に部屋がないので、ここで彼を待っていようと思ったが、そもそもここは彼の部屋なのだろうか?この家自体、彼の家ですらないかも知れない。

 私はここに居ていいのか、今日はどこで寝るのだろうか、彼は戻ってくるのだろうか。

 

 随分と彼の存在に頼り切ってしまっているなと反省した時だった。

 

 部屋のドアがキィと音を立てて開いた。


 リアムだと思ってパッと顔を上げたが、そこにはあの暗い森で出会った漆黒の毛並みの青い瞳の狼がいた。


 部屋に入ってきたかと思うと、ドア付近で伏せた。


 「あの森に居た子だよね?もしかして、あの時、君がリアムさんを呼びに行ってくれたの?」


 リアムと言う言葉に耳をピクッと動かしたのを見逃さなかった。


 「やっぱり、そうなんだね。ありがとう、君のおかげで助かったみたい。」


 飼い犬みたいなものかなと、おいでおいでと手招きしてみたけれど、こちらには近づかなかった。


 ただ、その青い目が静かに璃奈を見つめていた。


 部屋で見るこの狼の目もリアムと同じ深い青だった。


 彼の顔が思い浮かぶ。


 彼が帰ってくるのを待っていよう。伝わらなくてもいつかちゃんとお礼を言いたい。


 自分から狼に近づいていって、少し離れたところでしゃがみ、手の甲を鼻先に近づけた。


 狼は少し鼻をぴくぴくさせたが、それ以降は動かなかった。

 そのまま手の甲を鼻先に少し当てて、首筋に滑らせて背中を撫でたが抵抗も威嚇もなく、されるがままだった。

 綺麗な艶やかな毛並みを何度も撫でていると、狼は気持ちよさそうに目を細めた。

 それを見ていると、こちらも眠くなってきて、そのまま狼の横に寝転がった。


 ギョッと狼は首をもたげたが、どこかに行くでもなくジッとしてくれた。


 狼の背中を撫でながら、今日の出来事を思い返した。

 雨の中、土砂崩れが起きて気づいたらあの暗い森の中で、この狼が現れた。そしてこの部屋で目が覚めたでも、ここは私のいた世界ではなくて…


 改めて全部夢のようだ。とため息をついた。


 この世界に来た以上、ここで生きていかないといけない。リアムにはしばらく面倒をかけるかも知れないけど、言葉を覚えたらこの世界で仕事を見つけよう。


 その間に日本に帰れる方法も見つかるかもしれない。


 狼を撫でる手が止まる。


 日本に帰れる?自分のいた世界に?本当にいつか帰れるの?


 母や祖母の顔が浮かぶ。


 もう会えないのだろうか…元の世界に帰りたい…


 涙が頬を伝って、いつの間にか泣いていると気がついた。

 側でジッと動かないでいてくれる狼に目をやると心配そうに揺れる青い瞳と目が合った。

 

 そのまま目を瞑って狼に身を寄せた。


 少し身じろぐその狼からは、同じ石鹸の匂いがした。


大きいワンコ、好きです。

黒ラブちゃんと一緒に添い寝した時のことを思い出します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ