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第四話 異世界

名前もフランス語を参考にしています。



 彼の名前がわかった。

 

 そして、私の名前も彼に伝わった。


 それだけの事がこんなにも嬉しいとは思わなかった。

 

 もらった水を嬉々として一気に飲み干し喉を潤す。


 彼は空になったコップを取り上げて、また水を注いで手渡してくれた。


 コップに口をつけながら、チラリと彼を盗み見る。


 改めて見る彼は、アジア人と同じ黒髪で、襟足が少し長く、光の当たり具合で青みがかっているように見えた。

 顔立ちは西洋人に近く、シャープな顔立ちだった。

 ランプで少し揺らめく瞳の色は深い青のようで、その瞳の色に既視感を覚えたが、彼が立ち上がったので目で追った。


 部屋はログハウスのような木の温もりを感じる10畳ほどの広さがあった。今寝かされている少し広めのベッドと、デスクと本棚、イスと小さいサイドテーブルくらいしかないシンプルな内装だった。


 彼は棚から大きい本を取り出し、A3くらいの大きさの用紙を引き抜いて持ってきた。

 

 それは絵のような地図だった。

 

 彼は地図の真ん中くらいをトントンと指差して言った。


 『Nous sommes là』


 そして、地図を私に向けて聞いてきた。


 『リナ、Tu viens d'où?』


 少し考えて、彼の質問が正確にわからなくて自信がないのもあるが、もしどこから来たのかと聞かれていたとしたら、この地図には日本どころか知っている大陸すら無い。


 彼の目を見て首を横に振った。


 彼も自分の質問が伝わっていない可能性と、私の国が無いという可能性に難しい顔をして黙り込んだ。


 『リナ、Tu viens d'un autre monde ?』


 そう言って彼は深刻な目をして地図を裏返した。


 彼が言った言葉は理解出来なかったけれど、絶対に意味は合っている確信があった。


 私は彼の目を見てゆっくりと頷いた。




 私、本当に異世界に来たんだ…



 おばあちゃん、お母さんは大丈夫なのかな?これからどうなるのかな…


 そんな不安が顔に出ていたのか、彼はまた私の頭を大丈夫だというようにクシャっと撫でた。


 そんな沈黙を破ったのは、グーとなる自分のお腹の虫だった。


 どんな時でもお腹は空くのだと、未だ空腹を訴える自分の腹をかかえた。顔を真っ赤にさせて恥ずかしさで死にそうになっていると、ふっと彼が笑った気配がして、彼を見上げた。


 『Tu veux manger quelque chose ?』


 そう言って、差し出された手に恐る恐る自分の手を重ねると、私を引っ張り上げて立ち上がらせた。


 部屋の扉に向かった彼は一度振り向いて手招きをした。


異世界に本当に来たら、こんなに落ち着いていられるのかな?笑

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