第二十一話 雛
第5話 リアム目線
彼女を階下に連れて行った。
彼女は生まれたての雛のように俺の後をトコトコついて来る。キッチンに行くと、隣に立って小首を傾げて見上げて来るので、ダイニングテーブルの椅子を指差し座っているよう言う。
彼女は言われた通り黙って椅子に腰掛け、キョロキョロと辺りを見渡した。
彼女のいた世界と見比べているのだろう。目に付くものをその瞳に映していく。
2人分の食事をテーブルに並べた。食事にあまり頓着しないが、妹が口煩く何かを言っては食材を持って来るのをこれほど感謝したことはないだろう。
彼女の口に合うかわからないが、向かい合わせに座って親鳥のように先に食べてみせた。
彼女はそれを見て真似をするようにフォークを手に取った。
『いただきます』
何を言ったんだろう?聞き返すように真似てみた。
彼女は小さく笑って手を合わせてもう一度同じ言葉を言った。
何か食べる前の祈りだろうか。彼女の世界の文化なのだろうとすぐに納得した。
これ以上は彼女の邪魔になると思って黙って食事を進める。
彼女もそれを見て食事を再開した。彼女の立てる咀嚼音が草食動物の様で何故かむず痒い気分になる。なるべく無心で食事を終えるよう努めた。
彼女より先に食べ終わり自分の食器は片したが、先に部屋に戻った方がいいだろうか、彼女を待った方がいいだろうか少し思案する。
彼女の方をチラリとみると不安げにこちらを見る目とかち合った。
彼女が食べ終わるのを待ってみることにした。少しほっとしたように彼女の表情が緩んだのを見て、これで合っていたと胸を撫で下ろした。
その後すぐに食べ終わり、彼女は『ごちそうさまでした』と言った。食後の祈りもあるのか。と彼女をふと見るとまた目が合った。
見過ぎたかと気まずさを隠すように彼女の食器を片付けて誤魔化した。
彼女に魔力を感じないが、魔石は使えるのだろうか?風呂などの使い方を教えておこうと風呂場に向かい彼女の名を呼んだ。
「リナ」
風呂の蛇口に近づき、赤い魔石を取り出して彼女が使えるように魔力を込めた。赤く光り出す石に彼女の目が釘付けになる。黒い瞳が鏡のようにチカチカと赤い光を映した。
口をあんぐり開けて凝視している様子はまるで、見たことのない新しい玩具を与えられた子供の様だった。
しばらく眺めていたが、手を胸の前で握って不安げに見上げてきた。
彼女でも使えるようにしたから大丈夫と伝わるように彼女の頭に数回手を置いた。
彼女を少し下がらせて、蛇口を捻り暖かい湯を出して見せた。
わぁ。と彼女の口が息を吐いた。
トイレも同じように浄化の魔石に魔力を込めて、実際に使って見せた。
今度はふむ。と言うように納得していた。
風呂を使いたいかと思い、俺の着替えとタオルを彼女に手渡して、出しっ放しにしておいた湯を指差して風呂場から出た。




