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第十六話 暗闇



 黒…?ここは…暗闇…?


 これは…夢…?


 リアム?…エレーヌ?…どこ?


 どこを向いても続くのは闇。立っているのか寝ているのか分からなくなるほどの浮遊感。手を伸ばしても何も掴めない。



 走っても、走っても、暗闇が続く…



 暗闇のはずなのに、何かに追われているように振り返る。


 手足が暗闇に飲み込まれる…


 闇に引き摺り込むように、冷たく、這い上がって…


 っいや!いやぁ!!…来ないで!!…助けて!!



 リアム!!!!!




 『ぃやぁああああ!!!!』


 ぐっしょりと不快な汗をかいて起きた。


 顔に張り付く髪や胸元に広がる黒髪を払い除けるように自分の体を引っ掻いた。


 『っいや!いやあ!!』


 「リナ!!大丈夫だ!!落ち着け…落ち着くんだ」


 大きな手が腕を掴んで止める。見上げた先には焦燥した様子で覗き込むリアムの顔があった。


 肩で息をして、ここが彼の部屋だと気付く。


 「ハッ、ハァッ、ハァッ、ハァ…リアム?…私、ここ…部屋?」


 目が彷徨い、声が震える。


 「ああ、そうだ。何もない。大丈夫だ」


 彼は私の額の汗や、張り付いた髪を撫で付けた。


 「あ…夜?…暗闇…追いかけてくる。私、走って、走って…捕まった」


 自分の手や腕を見る。何も付いていない。


 「違う、夢だ。怖い夢を見たんだ。大丈夫だ、お前は寝ていた。うなされていたんだ」

 

 彼が顔を両手で包み込んで上をむかせた。


 「ゆめ…?リアム、ここにいた?」

 

 彼のランプに照らされた濃い青の瞳を見つめる。暗闇に浮かぶ月のように静かにリナを見つめ返す。


 「ああ、ずっといた。そばにいた」


 彼女の背中に手を差し入れて上半身を起き上がらせた。


 そうだ。あの後、黒の力が発動した原因の解明とまではいかず、みんな散り散りに解散した。

 私は体力の消耗が激しかったのか、貧血のようにふらふらして、帰りは馬車で帰ることになった。

 鍛錬の途中だったリアムは一度戻ってから一緒に帰った。

 食欲もなく、先に部屋で休ませてもらって泥のように眠った。



 「湯と着替えを持って来た。体を拭くか?それとも風呂に入れるか?」


 リアムが覗き込んで、気遣わしげに聞いて来た。


 サイドテーブルに小さな桶と着替えが置いてあった。服が張り付き不快で気持ち悪いが、まだ意識は朦朧としていて風呂には入れそうにない。


 「ん…ありがとう。お風呂、無理そう…あの、、」


 チラリと彼を見上げる。


 「どうした…?…ああ、わかった。入り口の側にいるから、何かあったら言えよ」


 そう言って立ち上がろうとした彼の裾を引っ張って引き止める。


 「っ待って!行かないで!!…あ…ごめんなさい」


 彼が居なくなると思うと、またあの暗闇に引き摺り込まれる気がして慌てて引き止めた。


 「…大丈夫だ、あっちを向いている。何かあったら言え」


 何かに怯えるように息を潜める彼女を見下ろし、何も聞かずに背中を向けた。


 ゴソゴソと服を脱ぐが汗で張り付いて中々脱げない。すごい汗だ…

 布切れを手に取って、ぬるま湯に浸す。引きあげて絞って、体を拭いていく。

 

 チラリと彼の背中を盗み見る。


 なんだか、すごく…不思議というか、恥ずかしさで居心地が悪い…はずなのに、彼がそばにいる事に酷く安心する。


 「あ…」声が漏れて、彼の背中がピクリと動く。


 「…リナ?…どうした?」


 彼が声を潜めて聞いて来た。


 「あ…背中が…拭けなくて…それだけ」

 「…そっちを、向いても?」


 そう言って少し身じろぐ彼。


 「あ…お願い、します…」


 申し訳ないが、背中が1番気持ち悪かったのと、もう腕が重かったので、拭いてもらうことにした。シーツを胸の前まで引き上げて背中を向けた。


 しばらくして、彼が振り向いて息を飲む気配がした。


 彼はさっきと同じように桶に布を浸して絞った。


 「…触れるぞ」

 

 そう言って、私の背中に張り付いた髪を前に流そうと(うなじ)に触れようとした。


 「っ…」

 「っい」


 (うなじ)に静電気のようなものが走って、ピクリと背中が跳ねた。声が出るとは思わなかった…彼も痛かったのだろうか、少しの間、動きを止めた。


 「…すまない。痛かったか?」

 「っ大丈夫、です…」


 意識が朦朧としていたにしても、この状況にすごく緊張して来た。違う意味で変な汗をかきそうだ。

 

 彼が背中を拭いていく。背中に彼の大きな掌の熱さが移る気がした。


 「もう大丈夫だ。気持ち悪いところはないか?」

 「はい。大丈夫…ありがとう」


 そう言ってまた彼は背中を向けてくれたので、持って来てくれた寝巻きに着替える。


 「シーツも替えよう、少しそこの椅子に移すが、構わないか?」


 移す?移動するのか。


 頷いてシーツをめくって足を下ろそうとしたら、彼が背中と膝裏に手を差し入れて抱き上げた。


 驚いて息を止め、彼の首に腕を回してしがみつく。


 そっと椅子に下ろされて唖然としている間に彼は手際良くシーツを張り替えた。


 そしてまたすぐに、今度は確認もなく抱き上げられた。


 サラリとしたシーツの上に下ろされた。


 「腹は減ってないか?」


 また覗き込んでくる彼に首を振った。


 「寝れそうか?」


 そう聞かれて、ハッとする。


 「リアム、ごめんなさい。ベッド使ってる。リアムもう寝る?」


 起き上がろうとして、手で制された。


 「いや、俺は床でいい。けど、この部屋にいていいか?」


 「でも…」と首を横に振るリナにリアムも首を振る。


 「お前は熱がある、病人を床で寝かせる訳にはいかない。それに家の床なんて男だらけで仮眠する酷さに比べたら雲泥の差だ」


 そう言って戯けてみせる彼。これは折れてくれなさそうだ。


 「それに、今日の黒の疾風は俺の魔力によるものだ。怖い夢を見るのは、俺のせいだ。せめて、お前が怖い思いをしないように、そばにいたい」


 青の瞳が懇願するように細められて何も言えなくなる。


 「手を…繋いでも、いい?」


 おずおずと言うと、優しく微笑まれた。


 「わかった」


 そっと指先を握られる。


 握った彼の手の方が熱い気がした。




焦らしプレイ。。

R15設定途中で変えられないんですね(^^;;

設定し直してupしなきゃ。。

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