第十五話 共鳴
「で?その嬢ちゃんと、さっきの黒の疾風、説明してもらおうか」
ルーセルはギィと背もたれに上半身を預け腕を組んだ。取り調べの刑事のようだ。
みんなで移動した先は、マルクの祖父のジャゾンさんがやっている薬屋さんの裏(住居スペースのダイニング)だった。
「彼女は見ての通り人族なのは合っている。ただ…異世界から来た異世界人だ。というか、ここに落とされたようだ」
リアムはその時のことを思い出すように隣に座るリナを見つめた。
「俺が彼女を見つけたのは、あの《眠れる森》だ。彼女はこの世界の物とは違う服装をしていて、酷く怯えて泣いていた」
「《眠れる森》ってあの、樹海か?」
ルーセルはガバッと前のめりに身を乗り出す。
「そうだ。今はこちらの言葉を話せるが、来た時は違う言語だった。彼女が必死に習得して話せるようになった。彼女の世界には魔法や魔力は存在しない。ゆえに、魔元素もないから彼女の黒髪はただの色素によるものだ。彼女の世界で黒髪は普通のようだ…」
「魔法がない?魔元素も持たない?じゃぁやっぱり魔素供給し合ったんじゃねぇのかよ」
ルーセルはテーブルに片腕で頬杖をついてリアムを下から覗き込んだ。
「…それはない」
「はっ!じゃぁ、あの黒の疾風はどう説明するんだよ」
「…それは、わからない」
「あの…魔そ、きょうきゅうって?」
片手を上げておずおずと口を挟むと、みんなの視線が一斉に集まるものだから、手を下げて肩を窄めた。
「嬢ちゃんにはまだ早えよ」とルーセルはハッハッハッと笑った。
「彼女は18だ」一息で言うリアム。
「マジで?!」
「マジっすか?!」
ルーセルとマルクが同時に驚愕の目を向ける。
「てっきりエレーヌ嬢と同い年かと。…まぁ、なんだ、魔素供給ってのはだな…」
赤毛をポリポリ掻きながらルーセルが咳払いをする。
「説明しなくていい」リアムがまた話を遮る。
代わりに、こちらに向き直って覗き込むように聞いて来た。
「リナ、あの黒い風が出る直前、何か変わったことはあったか?」
急に話を振られて、あの時の状況を思い出す。
「あの…その、エレーヌと離れて、座ってたら、赤い髪の男の人、話した。でも、よくわからない言葉、あって、そしたら…」
途中で話を切って、チラッとルーセルを伺う。
「あー、僕も一部始終見てたので、彼女の言いたいことは大体わかります。補足しますね。ルーセルさんが身分証をと聞いたら、リアムさんの匂いが付いてたので、顔を見せてもらおうと帽子を取ろうとしたんです。彼女も異世界でこんな図体のデカイ、目つきの悪い人に絡まれてビックリしたんでしょうね。その時ですよ、黒の疾風が発動したのは」
マルクが言いにくいルーセルとのやり取りを代弁してくれた。恐縮してチラリとマルクを見ると、小さくウインクされた。
「悪かったよ、嬢ちゃん。怖がらせて。目つきは生まれつきだ」
申し訳なさそうに口を窄めてルーセルは大きい体を縮こませた。
「では、恐怖が引き金か…?」思案するリアム。
「でも、今の彼女からは魔力は感じませんよね」
そう言ってマルクはリナを見る。
「一つあるとすると…共鳴…したかも知れない。俺があそこに現れたのは、彼女に呼ばれた気がした…というか、引っ張られた。彼女の影に気付いたら移動していた」
リアムがリナを見つめる。リナもリアムを見上げた。
「影移動したのか?」
ルーセルは眉間にシワを寄せてリアムを見た。
「ああ。その時に、俺の魔力が引っ張られている気がした」
「お前の魔力を、引っ張った。か…」
ルーセルは腕を組んで天井を見つめる。
「あ、皆さん、良かったらお茶いかがですか?」
エレーヌがお茶を入れてくれたので、みんなで一息つくことにした。
まだ色々、伏せておきます。。




