第十三話 獣人の街
エレーヌに手を引かれて、獣人の街の中心を目指した。
リアムの家は街の外れの深い森の入り口付近にあったようで、街の中心に向かうにつれて住宅が増えてきた。
学校もあったし、噴水の広場もあった。
そして街の中心はショーウィンドウが軒を連ね、カフェや雑貨やお菓子、帽子や洋服などのお店があった。
エレーヌのお気に入りの洋服屋さんに入ると、白いふわふわクルクルの髪の女性が眼鏡をクイっとずらして言った。
「あら、エレーヌちゃん、こんにちは。お友達?これまた綺麗な黒髪ね。リアムの彼女さんかしら?」
「こんにちは、ブランシュさん。この子はリナ。まだ彼女ではないかな〜」
ブランシュと呼ばれた洋服屋のデザイナー兼お針子さんは羊の獣人のようだ。エレーヌに紹介されてペコリと頭を下げた。
「あなた人族なのね?綺麗な白い肌…黒髪とのコントラストが素敵だわ…あぁ…採寸させて頂戴?ドレスのイメージが浮かんできそうだわ!」
「はいはい!ブランシュさん、また今度!」
鬼気迫る勢いで肩を掴まれ、服を脱がされそうになったが、エレーヌが止めた。
「ああなると一日中採寸させられたり、試作品を着せらるの」
眉を寄せて呆れたように言うエレーヌはそのマネキンの経験者なのだろう。
「エレーヌ、かのじょって?」
「リナ、これなんてどう?可愛い〜」
私の質問を総無視して、ふりっふりのワンピースを押し当ててきた。聞こえなかったのか、教える気はないらしい。
あれよあれよと10着ほど試着させられた。
「たくさん、いらない」
「ダメ、私がリアムに怒られちゃうから」
「大丈夫、おかね、リアムに、かえす」
「何言ってるの?それこそ怒られるよ」
そんな事を言いながら、服をまた選んで押し付けてきた。
理由をつけて3着に絞ったが、黒やネイビー白の無地を選んだので、地味すぎるとずっと文句を言っていた。
次に下着屋さんに入った。
そこの女店主は白に茶色と黒が所々混ざっている髪をして、猫目の華奢で妖艶な雰囲気の女性だった。
「エレーヌちゃんじゃない、久しぶり。え!お友達、綺麗な黒髪さんね。しかも人族?あ、リアムの彼女さんだ」
「久しぶり、アナベルさん。この子はリナ。彼女とはまだ違うかな〜」
「彼女」とまた聞こえたが、違うとも言っているので気にしないでいた。こちらで言う、親戚とかだろう。
「それにしてもリナちゃん小柄で可愛いわね〜。この黒髪も艶があって素敵ね。今度の新作の参考にするわ。出来たら是非、着て頂戴」
そう言ってアナベルはウインクして奥の作業部屋へと消えていった。
本当に人族の黒髪って珍しいんだなと褒められた黒髪を気恥ずかしく撫でつけた。
エレーヌは下着を白、ピンク、青、黒を選んできた。
下着は日本ではあまり派手なものはつけなかったので、白だけにしようとしたら怒られた。
「下着はいくつあってもいいでしょ!それに、また買う時にリアムに頼みにくくない?」
それはそうだが、と考えて。
「私、働く。おかね作る、大丈夫」
「え。本当に働く気なの?ま、リアムに相談しなきゃね。でも、とりあえず5つは買っておこう?」
そう言われたので、サイズを図ってもらって、在庫を確認してもらい、白3セット、ピンク1セット、青1セットを買う事にした。
もう青の下着に関してはエレーヌとアナベルさんの強制だった。青の下着は綺麗だと思うが、普段使いしにくそうだった。
お昼の鐘が鳴る頃には買い物袋で一杯だった。
「お昼にしましょう」と手を引かれて、カフェに入った。
レディース セット2つ頼んで、2人でお茶をした。
「エレーヌ、おかねの出しかた、教えて?」
「払い方ね?いいわよ。お金と言ってもこの街では魔石がお金の代わりなの。先ず、魔石の価値は大きさと色なんだけど…」
この世界に通貨はあるが、この獣人の街では魔石で取引する。
魔力の強さやレア度のように、(透明)白、黄、茶、緑、青、紫、赤、黒の順で価値が上がる。
そこに、大きさ、色の濃さで価値つく。
「このランチセット一つが大体、この透明の魔石1つ分。この緑の石は透明のと同じ大きさでも5倍くらい違うの。そしてこの赤い石も同じ大きさだけど透明のものより10倍の価値がある。この魔石鑑定っていう測定器を使って価値を測ることができるから覚えなくても大丈夫よ」
透明なのが大体1,000円前後、この緑で5,000円、こっちの赤が10,000円くらいかな。
並べられた小指の爪くらいの大きさの石達を眺めながら日本円で換算した。
通貨(コインや紙幣)も考えましたが、魔石に置き換えました。




