第十二話 匂い
「本当にあなた達一緒に寝たのね」
朝食を作っている時にエレーヌが急に言い出したので、危うくお皿を落としそうになった。
朝、目が覚めたときにはリアムは隣にいなかったが、確かに昨日は狼の姿ではあったが、彼と同じベッドで寝た。
彼女の言葉で妙に現実味を帯びて顔が熱くなるのがわかった。きっと赤くなっている。
彼女の顔を見たら、昨日のようにニヤニヤしていた。
「今朝はリアムからあなたの匂いがしたけど、あなたからもリアムの匂いがするからわかるわよ。思ったより積極的なんだね〜リナって」
え?!と彼女の発する内容に驚愕の目を向けた。
匂いという単語を聞き間違えたかと思ったが、狼の姿になる獣人の彼等なら納得がいく。
自分の腕を上げて嗅いでみたが特にわからない。
「匂い、わかる? 私くさい?」
昨日、彼と一緒に寝た事を彼女がわかることよりも、彼も臭いと思ったのかが気になった。
エレーヌはぷっと吹き出して言った。
「私達、獣人の狼族は特に匂いに敏感よ。でも大丈夫、リナは臭くないから。」
「じゅう人は びんかん?」
「そう。私達は遠くの匂いがわかったり、匂いを覚えていたりできるの」
獣人には魔法以外にもそんな特技があるのかと愕然とするが、何よりもすごく気になることを聞いた。
「私、どんな匂い?」
「うーん、リナの匂いって、人族って事もあるけど、すごく甘い匂いがする」
そう言って、エレーヌはリナに近づいてクンクンと嗅ぎ出した。
「狼の時の方が匂いに敏感よ、特に好意がある人や番と認めた相手の匂いは大好きなの」
「狼になると匂いよくわかる?、好き、つがい?」
「番。とても好きな人のこと。お父様とお母様みたいな」
恋人や夫婦のような感じかな?
「つがい、エレーヌはいる?」
「私はまだいないわよ」
「…リアムは?」
「うーん、聞いた事ないけど」
エレーヌは少し間を開けて、口の端をニッと持ち上げてリナを見やった。
「リナが自分で聞いてみれば?」
そう言って彼女は出来た朝食をテーブルに並べて行った。
今朝からリアムは出かけているようで、今日はまだ一度も会っていない。
彼はちゃんと寝れただろうか。
昨日の大胆発言をした自分を思い出して、穴があったら入りたい気持ちになった。
朝食を食べている時にエレーヌは唐突に言い出した。
「そうそう、今日は街に買い物に行きましょう」
「買いもの?何を?」
食材だろうか?荷物持ちくらいにならなれるかな。
「リナの新しい服とか色々よ」
「え?エレーヌくれたのあるよ?」
「それは一時しのぎ!私も街に行きたいし」
「エレーヌの買いもの、一緒に行くはできるけど、私のはいい」
眉をしかめて首を横に振った。
「ダメよ!もうリアムからお金も貰ってるし」
そう言ってカチャカチャとお金が入っているであろう巾着袋を目の前でプラプラさせた。
「それ、リアムのおかね?ダメ!いらない。これ以上、迷惑はいや」
首をブンブン横に振る。
「ダメよ!私がリアムに怒られちゃう!それに、ほら、街を見たり、お金の使い方、知っておいた方がいいと思うなぁ〜」
確かに、これから一人でこの世界で生きていくなら、街にも行くし、仕事をしてお金を扱うことになる。
ぐうの音も出ず「わかった」と頷くしかなかった。
今までお世話になった分は働いて返そうと心に誓った。
「うわっ!ぷっ!ちょっと、エレーヌ…何?!」
朝食後、エレーヌは香水を吹きかけてきた。
「水?ハーブ?」
ケホケホと咽せながら言うと、エレーヌも鼻をつまみながら言った。
「さっきも言ったけど、人族の匂いは凄く魅力的なの!」
パタパタと私の服をはたきながら彼女は続けた。
「リアムの匂いもついてるし、私の服だから大丈夫だと思うけど、悪い虫が付かないようにしなきゃ!」
「わるい、むし?」
「そう!良くない、男!ガォー!」
匂いをつけようとしているのか、抱きついて背中や腕を撫で回してくるエレーヌを押し除けた。
「ねぇ、エレーヌ。本当にまちに行く大丈夫?」
「大丈夫!リアムの匂いが付いてるから」
さっきも同じことを言っていたけど、リアムの匂いは臭いのか?しかも、なんだか大胆発言に聞こえる。でも、エレーヌがそう言うなら大丈夫なのだろう。
「リアムに何か、お礼したい」
「うん!何かないか探してみよう!」
意気揚々と出かけるエレーヌに手を引かれて家を出た。
ついに、家を出ます!
勉強もそこそこにイベントがやっと書けます!




