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春の嵐と恋の風【73】

私的事情と体調不良につき、予定通りに更新できず、申し訳ございません。


本日はカヤノとレイナの偶然な再会を果たし、最後の大事です。

いよいよ、完結が近付いて参りました。

 何という偶然だろう。



レイナと呼ばれる冥界神は、両親を失ってマッド・チルドレンに攫われた後、カヤノが一度だけ戦闘系現人神と間違えられて出場させられたショーで共に闘った少女の一人だったのだ!


思わず、泣き虫のカヤノの目に涙が噴き出した。

今日は一体何回泣いてしまったかわからない。

レイナの目にもカヤノ程ではないが…ウルウルきている程度には涙が滲んでいた。

そして、彼女は口を開く。



「まさか、あなたがマッド・チルドレンに攫われてた子だったなんて…。あの時はお互い名前を聞く余裕もなかったよね。私、レイナって言うの。」


「レイナ…ちゃん?あの、私はカヤノ、三十木カヤノって言います。せっかく助け出してもらったのに、また、つかまっちゃうなんて私って本当にダメよね。レイナちゃんにも迷惑を掛けちゃったね…。」


「迷惑なんて思ってないよ。とにかく、カヤノちゃんが無事で良かった。」


「ありがとう。レイナちゃんて冥界神系列の現人神の子だったんだ。完全・冥界神への選択肢があるって事は血が濃いのね。あの…レイナちゃん、こんな事を聞いて今更かもしれないけど…私の事、恨んでない?」


「え?何で?何を恨むの?」


「だって…私、あのショーの後、一試合出ただけで消えたでしょう?皆はその…ずっと戦いに参加させられていたんだと思うと、私だけ逃げたみたいで…保護された時もショーの事を怖くて、なかなかしゃべれなかったし…。私がもっと早く、口を開いていれば…。」


「カヤノちゃん…。」


「私が臆病者じゃなかったら、皆がもっと早く助かったかもしれないの…。」



そこまで言うとカヤノは口を(つぐ)んだ。

それ以上、しゃべると大泣きしてしまいそうだった。

シルヴァスは、カヤノを地面には降ろさず、抱き上げたままだ。

降ろされた所で、すぐには自力で立てないかもしれないのだから仕方ないが、こんな格好のまま会話するのも、本来は相手に失礼だ。

それでもカヤノは、少しでも早くレイナにその事を問いただしたかった…そして謝りたかった。

許されても許されなくても…自分がどんな風に映っているのかを聞かなければならないと思ったのだ。

でも、レイナは、カヤノの話を聞いて不思議そうに首を傾げた。



「カヤノちゃん…私は恨むどころか感謝しているんだけど。あなたが魔獣の前に飛び出してくれた時を覚えている?私、だから助かったのよ?その後も私を庇ってバリアーを張ってくれたり…あの一戦で勝利できたのは、あなたが魔獣の動きを封じてくれたのが大きいわ。」



カヤノは、レイナの言葉に自信のなさそうな顔を向けて、まだ相手を信用してないような表情をしている…レイナは堪りかねて、呆れたように言い足した。



「あなたが私達とは違い戦闘能力のない現人神だって事は、試合の途中から皆、わかったよ。だから、その後、違う所に連れて行かれたんだと察しがついた。戦闘系でもないのに頑張ってくれたあなたの勇気は、尊敬に値すると思うわ。」


「で、でも、でも…私、皆に悪くて…。」


「色々、気に病んでくれてたんだね。でも、本当にあなたに感謝はしても恨んだ事なんてないよ?皆もそうだと思う。正直、自分達が一杯一杯で、あの後、人の事なんて考える余裕もなかったしね。カヤノちゃんが私の前に出て庇ってくれてた時、怖いのを我慢してたのもわかったわ…。」



レイナはそう言うと優し気に笑った。



「自分も魔獣に傷つけられて背中から血を流して倒れてたのに、私の為に全力で走って守ろうとしてくれた。皆、カヤノちゃんの覇気に触発されて最後まで頑張れた。あなたが罪悪感を抱えているなんて、こっちこそ申し訳なくなるわよ。」


「ゆ、勇敢なんかじゃ…ないよ。考えなしにいつも…飛び出しちゃうだけだもん。レイナちゃんは、きっと優しいから…。」



カヤノの言葉にレイナは首を振る。



「勇敢だよ。躊躇(ちゅうちょ)なく人の為に行動したって事でしょ?まあ、私としては自分の事をもっと大切にして欲しいと思うけど…あなたに救われた命もたくさんある筈よ。私達は助けられた後、マッド・チルドレンの所業が一人の少女の告白で発覚して、自分達の救出に至ったのだと聞いて…。」



そこで一端、話を切ったレイナは、シルヴァスに抱かれたカヤノの両方の手を取って、優しく握ってから続けて言った。



「もしかしたら、あの時、私達と一緒に戦っていたあなたじゃないかって思ったんだよ?実際、今あなたの話を聞いて、やっぱりそうだったと思ったけどね。すぐに口が開けなかったのは仕方がないよ。誰だって事件はトラウマだもの…それでも結局、あなたは勇気を出して話してくれた。」


「レイナちゃん…ありがとう。そんな風に言ってくれもらえるなんて思ってなかったのに…。」


「ううん。それって、大事だから…。それに私達、一試合出た後は傷が治るまで次のショーには出されなかったの。だがら、カヤノちゃんが思っているほど、多くの試合には出ていないからね?」



レイナは『例え気休めにでもなれば…』と考えて、カヤノにそう言ってくれたのだと思う。

カヤノはレイナの優しさに胸が熱くなった。

実際はショーに参加した数が少ないと言っても、一試合多く出ているだけだって命がけなのだから、カヤノよりもずっと精神的にも肉体的にも辛い思いをした筈なのだ。

それなのにレイナは、自分達もさほどカヤノと変わりない経験しかしてないように見せかけようとしてくれている…。



二人は、お互いに相手を思い合う事で、短い時間で心を通せた。

それから二、三の質問や話をして、カヤノはレイナが冥界を選んだわけも聞いた。

あのショーで魔獣に片方の腕を食いちぎられていたレイナは、助け出された後、統括センターの高度技術により新しく腕を再生してもらえる許可が出たのだが、当時、同事件の犠牲者で欠損部分を持った少女が多数いた為、レイナは己の腕を作ってもらう順番待ちをするのをやめて、彼女達を優先するようにと身を引いたのだ。


とはいえ、現人神として地上で生活するには片腕は不便だ。

運の良い事にレイナの父親は上級冥界神であり貴族だった。

冥界神での生活となれば、魂のみでの生活となる。

そもそも人間界以外の異界では肉体が不要な方が多いのだ。

所詮、魔獣風情では、レイナの魂ごと腕を噛み切る事はできなかったので、冥界神の状態に戻ればレイナの手は元通り存在していた。



「色々と都合が良かったの…兄も私を探してくれていたし。だから、私は正式に現人神を辞退して、完全な冥界神になる事を選択したの。」


「そうだったんだ…。」



話を聞きながら、カヤノは改めて、レイナが自分の腕を再生するのを辞退するほど、あのショーで体の一部を破損してしまった少女達の多さに胸を痛めた。

が、同時に恨まれていなかったという事に、やっと罪から解放されたような気持ちになる事もできた。



「今日は本当にありがとう。」



シルヴァスに抱かれたままとは言え、最後にペコリとカヤノが頭を下げると、レイナは片方の目を瞑って言った。



「どういたしまして。化け物をとらえられて良かったわ!私にとっての敵はコイツらよ。ねえ、カヤノちゃん、良ければお友達にならない?地上と冥界じゃ、頻繁に会う事はできないけど…こっちに来る事があれば是非、私の所にも遊びに来て欲しい。界が違っても手紙くらいは出し合えるし。」



カヤノは感無量で頷いた。

すると、カヤノの耳元にそっと顔を近付けたレイナは小さな声でボソリと言った。



「ウフフ…カヤノちゃん、それにしてもあなたのナイトはすごく素敵ね。二人とも可愛い感じがして、お似合いよ。羨ましいなぁ…私も素敵なお相手が欲しい。」



明らかにシルヴァスに視線をやって、カヤノに冷やかしの目を向けるレイナ。

カヤノは、『ボボン!』と顔を赤くさせて何も言えずに俯いた。

二人の様子を見守っていた周囲も和やかに、ようやく落ち着きを取り戻していた。


オグマは密かに小さく口角を上げ、ハルリンドはカヤノが無事にシルヴァスの胸に抱かれた事でホッとして気が抜けたようにアスターに寄りかかっている。

伯爵・アスターと言えば、そんな妻にメロメロで寄りかかられた事に身を固くして抱きしめたい衝動に耐えていた。


さすがに部下の兵士達や他領主の妹・レイナがいる前で、いつもの犬っぷりを発揮するわけにはいかないのだ…マッド・チルドレンの束縛&退治は仕事でもあるし。



『これが家なら、部下の前だろうと平気でイチャイチャしたのに!』


とアスターは震える腕を握りしめ、悔しさに唇を噛みしめている…。


そんな上司であり伯爵様に仕える兵士達は、いつもの事でアスターの暑苦しい心中を察し、乾いた視線を主人に送っている。


 こうして、何はともあれ一件落着した一同は、拘束したマッドチルドレンを小型化して閉じ込める事のできる小瓶に入れて、ズボラ山を降りようとした。


マッド・チルドレンを閉じ込めた小瓶は、アスターが一瞬にして開いた異空間の物置へと一時収納して、カヤノを抱き上げるシルヴァスにこっそりと耳打ちした。



「やあやあ、()()のシルヴァス君…コレの処分はオグマ()()殿()の働きかけで天上の神々により、こちらに一任されている。良ければ、君に後でお渡しするからね…。」

(煮て喰うなり焼いて喰うなり好きにしてくれ。)



そう言って、少々媚びいるような笑みを無理矢理浮かべた友をシルヴァスは鋭い視線で一瞥した。



『おーい、シルヴァスぅ~、お前、心なしか瞳孔が開いてるぞー?

閉じろー。』

(アスター・心の声)



「あ、そう?じゃ、その時にどうしてこういう状況になってるのか、じっくりとアスターから説明してもらおうかな?()()()()()()()()()()()と一緒に…。」



シルヴァスはそう言うと、カヤノに見せる顔とは全く違う顔をオグマの方にも向けた。

カヤノとレイナの感動的な交流に、和んでいた男達は一瞬にして凍り付く…。

なぜか兵士達もシルヴァスから『この役立たずども!』と言う声が聞こえたような気がして、目を泳がせた。



 その時だ。

(男連中には、運が良かったというべきか、悪かったというべきか…。)


先程揺れた大地が、一瞬、静まっていたと思ったら、再び大きく揺れ動いた。

今度はさっきの比ではない。



「グゴゴゴゴゴゴ!」



音と共に伝わる振動に一同は目を丸めた。



「こ、これは⁉マズいわ…噴火が始まる兆候よ!」



この場所に詳しい地元のレイナが放った言葉に一同は慌てだす。



「元・火山学者の死者の為に作られたズボラ山は、滅多に噴火しなズボラな火山設定だけど…。」



そう言い添えるレイナにハルリンドが堪らず口を出した。



「それが今、何かの衝撃で噴火しようとしているのね?ど、どうしましょう。とにかく、ここから逃げなくては!早く…山を!急いで下りましょう。」



山を下りる事を促すハルリンドに、この地を治める兄の片腕として働くレイナは、落ち着きを保ったまま言った。



「ええ。ハルリンドさん、皆様はカヤノちゃんを連れて早く避難して下さい。それで、どなたか兄にこの事を知らせに行って下さい。私はここに残って火山の噴火を少しでも食い止めるようにします。」


「えっ⁉でも、それじゃあレイナちゃんが危険なんじゃ…。」



今度はカヤノが驚いて声を出した。

レイナはニッコリとそれに応える。



「大丈夫よ。私はこの地域の冥界神だもの。神力で領地の物は動かす事ができるの。でも兄ほどではないから、早く山を下りて兄を連れて来て欲しい。それまで、私だけで持ち堪(もちこた)えられればいいんだけど。」


「もし、持ち堪えられなかったら、どうなっちゃうの⁈」


「もう、力の出し方もわからなかった昔の私とは違うのよ?私もあれから、冥界神として色々な事を学んだわ。そう簡単にどうにかなったりしない。」



レイナはそう言ったが、それでもカヤノは動じてしまう。

それはそうだ。

マグマが噴き出して来たら、レイナだって完全に食い止められるかわからないのだ。


現にレイナは『少しでも食い止めるようにします』と言った。

『食い止めます』ではないのだ。

それは、完全には食い止められない事を暗に示した言い回しである。


彼女は自己犠牲を(いと)っていないのだから、最悪の場合は冥界神としての生が終了してしまう可能性だってある。



そんなのはダメだ!



カヤノはレイナの手を無言で引っ張って、その顔を覗き見る。

レイナは、カヤノを(なだ)めるように言った。



「冥界は死者の国。火山の噴火があるとしても、計画されたものでなければならないわ。今回の噴火は予定にないもの…それでは市民に影響を及ぼす。冥界での出来事は死者の為に全てコントロールされていなければならないの。巨大なコンピューターのようにね。」



そして、レイナは『それを乱す事象は冥界神として何としても阻止しなければならないのだ』とカヤノに説明をした。

カヤノが悲し気に顔を歪ませた刹那、シルヴァスが口を開く。



「ねえ、カヤノ…君が本気でお願いしてくれたらさ、僕、頑張っちゃうけど?火山の噴火をさ…抑えてあげてもいいよ?」



カヤノはまじまじと目を開き、シルヴァスの方を振り返る。



「シ、シルヴァス?」


「フフフ、カヤノってさ…僕が高級精霊だって自覚ある?お気に入りの人間(カヤノ)が必死で祈ってくれたら、冥界にだって、張り切って風を起こしちゃうよ?それが僕のお嫁さんのお願いだったら、なお頑張るんだけど。」


「え…?」



カヤノが呆けていると、シルヴァスは言った。



「こんな所でロマンチックも何もないんだけど…もう、僕も相当、頭にキテる所があってね…君、何回も僕の事、翻弄してくれてるよね?僕は翻弄(ほんろう)するのは好きだけど、翻弄されるのには慣れていない。」



『はあっ。』とシルヴァスは溜息をついてから、レイナの目前でカヤノのオデコに小さなキスを落として、また口を開く。



「僕をここまで翻弄するなんて…君くらいだよ。」



カヤノは、すぐに(ゆだ)ったように真っ赤になって、されるがままの状態で固まった。



「でもね、困った事に…一生、君に翻弄されても悪くないと思えるんだ。今すぐ、僕のお嫁さんになってくれる?そしたら、君のお願いも叶えてあげる。もっと先に言うつもりの言葉だったけど…やっぱり、もう待つのはやめた。今日の状況を見て決めたよ…。」



カヤノに負けず劣らず顔を赤らめて『キャアァァァッ!』と叫ぶハルリンドとレイナをよそに、カヤノが一時停止ボタンを押したように止まっていると、シルヴァスは綺麗な顔をカヤノに寄せて、更に迫る。



「自主性を待っていたら、君の人間寿命が終わってしまう気がしてきてね。ねえ、今すぐ僕のモノになるって言って?じゃないと、僕はしょげてレイナちゃんに力を貸してあげたくても…力が出ないな。」



シルヴァスがそう言い始めると、止まっていたカヤノは急に動きだし、焦ったように彼の腕に乗り出して声を大にした。



「そ、そんな⁈シルヴァス…できるのなら、レイナちゃんを助けて。お願い!!」


「じゃあ…何て言えば、僕が動くのかわかるよね?言って?僕だって、可愛らしい冥界レディを犠牲になんてしたくはないんだ。君次第だよ?」



まるで、とーっても心を痛めているような表情を演出する精霊様に、カヤノは(すが)るように言葉を紡ぐ。



「私、シルヴァスのモノになるわ!だって元々、私の心はずっと…あなたのモノだったもの。大好き、シルヴァス!私の精霊様!だから…お願い、聞いて。皆を助けて!」



途端に心を痛めていたようなシルヴァスの眉間のシワがピンと伸び、彼の表情は満面の笑みに変わった。

先程よりもシルヴァスの体が金色に強く輝いている。



「本当だね⁉うわっ!ヤバ…()()()()()()()()だったとか…超、嬉しいんだけど。」



そう口の中で呟くシルヴァスは、カヤノを強く抱きしめた後、すぐにオグマに彼女を託した。

傍観する女性二人は、再び黄色い声を上げて歓喜に沸いており、兵士達は『ヒューヒュー』と冷やかしを入れるが、シルヴァスは全く気にせずに行動に移す。


カヤノだけが兵士達の冷やかしのせいで、先程から茹で上がりきった顔に、更なる涙を浮かべた。


恥ずかしすぎて、もはやかを顔から火が出る寸前である。


そんなカヤノを自分の腕からオグマの背に移し替えて、シルヴァスは言った。



「そろそろ噴火が始まるから、()()()()()()はカヤノを連れて下へ逃げて。兵士諸君も一緒にね。」



シルヴァスはオグマがカヤノをしっかり負ぶさったのを確認すると、次にレイナとアスターとハルリンドに協力を仰ぐ。



「レイナちゃんは一応、噴火した時の時間稼ぎに地殻変動の力で火口の部分を高くして伸ばしておいてくれるかな?あとは、噴き上げたマグマがすぐに下に流れないように堰き止めるように何か所か岩盤を作り変えて欲しいんだ。ハルとアスターも彼女の援護に神力を供給してあげて欲しい。」



シルヴァスの求めに三人の上級冥界神は頷いた。



「「「了解。」」」



三人の揃った返事を聞いてシルヴァスも自ら頷く。



「さて、僕は今から雨雲を猛スピードで運んで嵐を起こすよ。激しい雨でマグマを冷やせば、噴火しても溶岩は途中で進行を止めるからね。とりあえず、市民が住む町までは流れ込まないようにできる。」



シルヴァスが話す間にも大地の揺れは激しさを増してきた。

グラグラと揺れる大地にオグマが口を開く。



「おっと、もう限界だ。立っているだけでも危険が伴うくらい、地震が激しくなって来たようだ。悪いが君らに甘えて、俺達は三十木と共に避難をするぞ?あとは冥界神達に任せた。」


「うん。()()()()カヤノを頼んだよ?オグマセンセ。」



シルヴァスの念を押すような物言いに、オグマはやや視線を宙に浮かせて答えた。



「任せとけ…二度はない。行くぞ、三十木。」


「ハイ…オグマ先生。重いのに、オンブしてもらってごめんなさい。宜しくお願いします。」



カヤノはオグマにそう言い返すと、皆に(きびす)を返して速足で先を行き始めるオグマの背から残った三人の冥界神とシルヴァスに向かって、振り向き様に声を掛けた。



「ハルさん、レイナちゃん、アスター様、シルヴァス!!皆、皆、無事でいて!無事に戻って来て!!絶対よ⁉」



シルヴァスはカヤノの言葉にヘラリと笑い、三人の冥界神はオグマに背負われた少女に向かって、くすぐったそうな目を向け、微かに微笑んだ。


 その微笑みは、確かに『神様』らしいものだった。

まだ、忙しい日々が続いており、次回も順調に更新予定日に投稿できないかもしれません。

日にちがズレ込むかもしれませんが、ラストは続けて投稿できるよう頑張るので、もう少しお付き合いして頂きたく存じます。

本日も読んで頂き、ありがとうございました。

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