ⅩⅦ サマー・サンタクロースからのおくりもの
りんたは眼を開けるのが大変なほどまぶしい太陽の下にいた。
砂浜はいつもの星くずのような砂だった。
海は太陽と調和した時にだけしか見ることのできない美しい黄金色をしていた。
りんたは、ぷくぷくとわたがしのようなピンク色の煙をはく、赤い屋根の貝がらの家へ走った。
「ただいま! ハッピーサマー・クリスマス!」
キッチンには、優しくほほえむなみか。
玄関では幸せそうにりんたの帰りを待っている写真の中のりく。
「おかえりなさい、ハッピーサマー・クリスマス、りんた」
――となりにいる大切な人をどうか、幸せにしてあげてください。
どうかいましかない時間を大切にしてください――
りんたは桃草シチューを運ぶなみかを見つめる。
「さあ、サマー・クリスマスパーティーを始めましょうか」
なみかが嬉しそうに笑う。
毎年のサマー・クリスマスは桃草シチューからはじまる。
でもりんたはその前に、なみかに言った。
「お母さん、後ろを向いて」
「あら、なにかしら」
なみかはほほえみながら後ろを向く。
りんたはテーブルの上に金色の糸で飾られた純白の巻き貝をおいた。
「こっちをむいて!」
りんたのサマー・クリスマスが始まった。
さあ、手を出して 光は逃げる
おいで、海の街へ
泡は夢とともに 波は静かに歌う
ここにはいつもきみたちだけ
さあ、眼をとじて 時間はないわ
おいで、太陽とともに
光は海とともに 友は静かに奏でる
だれも知らないきみたちだけ
その日から、海色家の玄関には、美しい歌声を奏でる純白の貝がらと、金色の瞳の白くじらの刺繍が飾られた。