3話 「日常はもうお終い」
三人称て難しいですね
01
4月7日
「ここは……」
目を覚めるとそこは見知らぬ天井ではなく、明日香の部屋だった。
「どうやら意識無くしてたみたいだけど……兵藤くんは私を家に運んだ後は帰ったのかな? 」
辺りを見直すと誰もいない。が、なにやら布団に誰かが潜伏している気配がした。
「いや、まさかね……」
恐る恐る布団を捲るとそこには金髪碧眼の誰もが羨む美少年が明日香の隣で裸になって寝ていた。
「――ちょっ!? 」
「ん……起きたんだね、お姉さん。おはよう」
思わず声を上げてしまい金髪碧眼の美少年を起こしてしまった。
明日香は警察を呼んで保護してもらうか私とこの子は別の意味で寝てしまったのだろうかと考えてしまい、頭がエラーを起こしていた。
「えっと……君はいったい誰なの? 」
「誰って僕はアルヴァトスだよ? 」
「いやいや!! 昨日の時点ではめちゃくちゃ渋いおじさんだったでしょ!? 」
昨日とは姿が違っており目の前には金髪碧眼の美少年。明日香の好みだがいかんせん状況が理解できなかった。
「アルヴァトス、明日香は起きたのかい? 」
明日香とアルヴァトスが話をしていると部屋の扉から見覚えのある少年の姿が現れた。
だが昨晩とは違い、雰囲気が柔和な少年のものになっていた。
「聞いてよ、春馬。明日香が状況理解してくれない」
「無理はないよ、アルヴァトス。彼女は昨日莫大な魔力を消費したんだ、記憶が混乱しても無理はないよ」
「あの、状況が全然掴めない」
「説明はするけどその前に少しいいかな? 」
「?」
「ボタンを閉めてもらうと有難いんだけど……」
気がつくと寝間着のボタンが少し外れており、胸元がはだけてしまっていた。
恥ずかしさのあまり明日香は純粋な春馬少年に魔力弾を撃ち込んでしまい、春馬は急な事で避けれず被弾した。
―――――
「まさか春馬君が戦闘以外だと純朴な大人しい少年になるとはね……」
「笑っちゃうよね!」
「恥ずかしいから笑わないでくれ」
気を取り直して春馬はアルヴァトスの事を話した。
まず、アルヴァトスの事を話すと明日香と契約をした事で元の実力よりだいぶ下がり少年の姿になってしまった事。
本当だったら激怒ではすまないが竜宮寺家は他の魔法使いと違い、その使い魔の由来となった動物の能力が使える為アルヴァトスは明日香と契約したのだ。悪魔でこちら側の予想だが
「そういえばあのネクロマンサーの人は倒せたの? 」
「いや、倒せたと思うけど……これを観て」
なにやら申し訳なさそうに春馬は明日香にタブレットを渡した。画面には件の「オルタナティブ」の最新話が更新されており、タイトルが「謎の魔法使い現る!!」と書かれていた。
最新話を再生すると女子高生がネクロマンサーを蹂躙しているところが映し出されていた、これはまるで昨日と光景が一緒だ。
「なにこれ!? 私映っちゃってるじゃん!」
「そこは異能者が未成年の場合は友人とかにバレないように少し仕掛けしているから大丈夫」
「なら、いいけど……でもなんで私が参加者に」
「どうやら昨晩の戦いは君がオルタナティブに参加させる為の罠みたいだ」
「これって不参加はできないの?」
「1度戦ってしまった以上は参加者として登録されてしまうんだ」
「そんなぁ~……私はただ平穏な日々を過ごしたかったのに」
明日香は自分があの時動画を観ていなかったら参加していなかったのにと思っているが観ていなくても運命は変わらない可能性が高い
「ねぇ、そのオルタナティブってなんなの? 前の主はそんな事教えてくれなかったけど」
「あ、それ私も気になってたんだ」
「少し複雑なんだけど掻い摘んで説明するからよく聞いててよ、二人とも」
「異能者達は長年争い続けていたんだけどSNSが登場してからその機会は減っていってしまったんだ。
SNSが出てきてから、アホな異能者が一般人が見えるところで戦ってしまって沢山の人に異能を知られてしまったが、それを逆手にとったある企業の代表が異能者達にある提案をしてオルタナティブは大人気になったんだよ」
「ある提案って?」
「数々のミッションをクリアし、最後の一人になった者の願いを叶えさせるというなんとも胡散臭い話だけど異能者達はその話に乗るしかなかったんだ」
「――戦いたいという欲を抑えられないからでしょ」
異能者は胡散臭い話だとわかっていても彼らは野生の獣と同じように強い者と戦いたくなる為、その話を承諾した。
「大体はわかったけど生放送ドラマ?にする意味あるの?」
「それは僕も思ったよ、人払いの結界を張れば戦えるのにって。でも今の現代技術を使える一般人が結界を通り抜ける可能性があるから、生放送のドラマって事にして一般人を洗脳すれば問題ないってさ」
大企業「BATCH」は1977年にオルタナティブを開催した。当時は電子機械などが発達していなかった為、異能者しか観れない特別な魔法でオルタナティブを観戦した。二回目の1987年も同じようにしたが利益は出なかったので次の三回目で成果が出ない場合は打ち切ろうとした。
だが、三回目のオルタナティブに参加した異能者によって多くの人にオルタナティブが広がったお陰で四回目ができるようになった。
運営は四回目でかなりの大規模な作品のシナリオを作るといい、23年の休息をとった。
「まあ、大体わかったけど私最後まで生き残れるかな。自分の能力もまだ把握してないのに」
「明日香お姉さんなら大丈夫。僕がいるからね!」
「可愛いなぁアルヴァトス〜!! 」
先程まで裸だった事は忘れ、明日香はアルヴァトスに抱きついた。自分の不安を押し消すように力強く
その光景を見ながら春馬は少し疑問が生じていた、明日香が先程言っていた自分の能力を把握していない事。何らかの秘密が彼女にはあるように思えたが春馬は詮索するのはやめた。
02
「この失態はなんだ」
「申し訳ございません、村正様。想像以上に明日香様が……」
日本のとある街に佇んでいる日本屋敷にてある話が行われていた。
それは娘の明日香を生け捕りにする事についてだ。
屋敷内では傷を負ったコルテスが自らの失態が映し出されているオルタナティブを村正は視聴し、彼女は怒りを買ってしまった。
「まあ、良い。これは悪魔で娘のデビュー戦だから負けにカウントされてはいないだろう。だが、本戦が始まって負けてしまえば……」
「視聴者裁判にかけられますね……」
「自分の命を大事にしたいのなら成功しろ、いいな」
「承知いたしました、竜宮寺村正様」
自分の父親からあまりにもキツイ試練が始まる事に明日香はまだ気づいていたなかった。