2話「焔の魔女」
色々と試行錯誤して長く文章書いてしまいました。ご都合主義なのでご勘弁を
01
「貴方もしかして……魔法使いの癖に殺しをした事がないの」
激昴をしたと思ったら、突如冷静になって見た目には合わない正論を放った。
まあ、魔法などを含めた異能使いは基本的になにかを殺して普通の「人」を卒業しなければならないのだが明日香は未だ殺しをしていない
「なんでそれを……!」
「雰囲気でわかるのよ、経験があるんだったら面構えが違う。殺しや戦闘経験がないガキに侮辱されるのはね、私のプライドが許さないのよ」
コメカミが激しく動いてるのがわかるぐらい彼女は相当根に持っていた。
ただ、彼女が言っていた事は的を得ていた。いくら家族から優秀な血や魔法を継いでたとしても戦闘経験がなければゴミに変わる。例外はあるが
「――だからもう終わりにしましょう。来世があればちゃんと経験を積む事ね」
彼女は自分の懐から鍵を取り出した。自身の契約した使い魔の中で1番最悪で醜悪な物を呼ぶ為の物だ。目の前にいる少女を心も体も全て凌辱して殺す。
何故かって?そりゃあ自分より美しい物が憎いからだ。
「さぁ、餌の時間よ。メルヴェイユ」
メルヴェイユと呼ばれた物は蛸と同じ様な姿をしているが微妙に足の本数や顔の醜悪さが違い、大きさが異なっていた。
「これは……まずいわね」
全長10mという大きさにびっくりするが、更に驚いたのはメルヴェイユの体の中から身長120~130位の人型のカカシみたいな使い魔が30体以上湧き出てきた事だ。
ひとまず明日香はまず戦況を確認する、自分は今瀕死でなおかつ魔力切れの使い魔を1体背負いながら多数いる使い魔と戦う。冷静に考えて30分が限界のようだ。
「ひとまず場所を移動しなきゃ被害が大きくなるわね……!」
「あら、逃げる気? まあいいわ、追いなさいメルヴェイユ。あの小娘を好きにして構わないわ」
承諾をしたのかメルヴェイユと呼ばれた怪物は移動を開始した。だがあまりにも遅い為、カカシは痺れを切らし明日香を追う。
「小賢しいわね、燃えなさい!!」
住宅地を駆け抜けながら数体ずつ燃やしているが消し炭から同じようなカカシ細胞分裂みたいにどんどん増えていく。
幾ら燃やしても炎なので直ぐに消えてしまう、色々と試行錯誤していたせいか明日香は気が付かない内に角に追い詰められていた
「これはまずい状況ね……都合良く王子様が来るわけないし」
ジリジリと明日香の方に近づいて来る使い魔達、右脇に抱えていた鳥の使い魔と再契約をすればなんとかなりそうだが使い魔本人から前のマスターの契約を破棄しない限り不可能だった
「――竜宮寺明日香! しゃがめ!!」
「え!?」
突如、木の上から現れた少年は明日香の頭上すれすれで大量の銃弾が人型の使い魔達の首元に撃ち込まれた
首元に撃ち込まれたカカシ達は分裂はするものの、スピードはかなり遅くなっていた。
「今なら逃げられそうだから行くぞ」
「貴方いったい誰なの!?」
「それは後ほど説明する」
尻餅をついてしまった明日香の手を引っ張り、彼は自分が発見した一時的な隠れ家へと招待した。
02
「俺の名前は兵藤春馬だ、理由あってあんたを護衛する事になった。色々と聞きたいだろうが我慢してくれ」
「むぅ……とりあえず助けてくれてありがとう」
兵藤春馬という少年に明日香は連れられてとある空き家に潜伏していた。
「少し聞きたいんだけといいかな? この使い魔の事なんだけど」
瀕死だった使い魔は先程より状態が悪くなっており、体が消えかかっていた。
「コイツのマスターはどうした?」
「わからない……多分置いて逃げたんじゃないかと思う」
「マスターがいれば回復はできるんだが……アンタ、竜宮寺家の娘なら強制再契約はできるんじゃないか?」
「お恥ずかしながら呪文が……」
春馬は絶句した、竜宮寺家の跡継ぎと聞いて多少の知識はあるかと思っていたら自分の予想を遥かに超えていた事に
「……俺は人払いの結界の調子を見に行かなきゃいけないからアンタはこの空き家にいろ」
溜息をつきながら春馬は空き家を出た、最悪自分があの使い魔達を処分すればいいと考えたが上手くいくとは限らない……
明日香が自分の才能に気がついてくれるまで待つしかなかった。
「――竜宮寺家じゃなくても私はやれるところを見せないと」
肌身離さず着けていた母の形見のペンダントが突如発光をし、瀕死の使い魔のほうを指していた。
「凄い魔力反応がこのペンダントから……今だったら呪文がわかりそう!!」
明日香は自身の血統に記されている竜宮寺家の魔法を解析し始めた。1000年以上続いてるせいか情報はかなりの量だったがペンダントのおかげで自然と再契約の呪文は発見できた。 発見した呪文を頭に投入し、魔力を込める
「――告げる、汝その身は他者の契約の枷から逃れずされど我が血潮を欲すればその枷は解き放たれず。声をあげよ、アルヴァトス!!」
呪文が間違ってないか焦ったがスラスラと自分の知識にはない呪文が流れてくる為、その心配はなかった。
瀕死の使い魔に自分が持つ最大限の魔力を注ぎ込む、途中苦しくなるが死ぬよりはマシだ
「外からデカい音が近づいてくる……間に合って!」
カカシには見つかってはないがメルヴェイユにはどうやら魔力感知があるようで空き家から溢れ出てる膨大な魔力に吸いよられているようだった。
『――御身の声は聞き届けた。今この瞬間に我は従僕となる、精々我を飽きさせるなよ人間の子供よ』
瀕死だった使い魔は見る影もなく、そこには伝説上の神獣「不死鳥アルヴァトス」が目の前にいた。
が、その姿を見る前に明日香は意識を無くしてしまった。
03
「あら、メルヴェイユ。空き家の前に止まってどうしたの?……」
女は絶句した。先程自分を侮辱した明日香が自分の召喚獣であるメルヴェイユを見た事もない炎で燃やし続けている事に
「まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいッ!!ゲームが開始する前に退場って聞いた事ないわよ!!」
明日香は髪や瞳を焔色に変化しており、その姿はまるで不死鳥が人になったようだった
『さらばだ、女よ。自分が犯した罪の数を数えるがいい』
そう言い放ち、明日香は女に向けて手をかざす。女は自分へと向かう炎を止めずに浴びた。
獲物を得たような動物みたいに炎は女を焼き尽くす、悲鳴をあげさせずに跡形もなく。
「やっぱりな……」
後ろから気配もなく現れた春馬は永遠と燃え続けている炎を見て、ある疑問を抱いた。
「エルヴィス・コステロ 生粋の凌辱好きのド変態で自分の趣味に合う異能者がいたら骨の髄までしゃぶりつくし、魂を穢す悪魔の門を司る者がこんな簡単に……お前はどう思う? 」
春馬は気がつかなかった。明日香がまさか使い魔を憑依させて敵を焼き尽くしていたとは知らず、別の力で相手を燃やし続けているのではないかと思い込んでいた。
「聞いてんのか?竜宮寺……おい!」
明日香は相手を燃やし尽くすと気が抜けたのかその場に倒れ込んでしまった。
今回の事に関しては自分の平和な生活を守る為にした事が裏目になり、自分からその「ゲーム」に参加するハメになるとはこの場では考えつかなかった。